EPC契約における作業中断権② 中断権行使の効果
作業中断権行使の効果
作業中断権の行使には、以下があると説明しました。
① オーナーによる中断権の行使(オーナーの自己都合またはコントラクターの原因)
② コントラクターによる中断権の行使(オーナーのEPC契約義務違反)
上記のうち、コントラクターの原因でオーナーが中断権を行使した場合を除いて、中断権行使の効果は、次の通りです。
「コントラクターは、中断によって工程が遅れた分だけ納期を延長してもらうことができ、かつ、中断によって生じた追加費用をオーナーに負担してもらえる。」
この効果は、考えてみると当然です。
オーナーの自己都合による中断権行使の場合も、オーナーの契約違反の場合のコントラクターによる中断権行使の場合も、結局はオーナーに原因があるからです。
オーナーに原因があって作業を中断せざる負えなくなった以上、そこから生じる不利益はオーナーが負うのが公平ですよね。
もっとも、中断権が行使されたからと言って、コントラクターは自動的に納期が延長され、かつ追加費用を得られるわけではありません。
コントラクターは、EPC契約に定められている手続きに従って、具体的にどのくらいの納期延長をしてもらいたいのか、追加費用はいくらなのかを、決められた期限内にオーナーに対して書面で通知しなければならない、とEPC契約には定められているのが一般的です。
もしも、その決められた期間内に手続きをしないと、コントラクターは納期延長も追加費用も得られなくなってしまう可能性もあります。
よって、必ず、EPC契約のこの中断権行使の効果をコントラクターが得るために必要な手続きは何かをよく読んで理解し、実際に中断権を行使する場合には、それを守るようにしてください。
オーナーに原因がある作業の中断が長期間継続した場合の扱い
では、オーナーに原因がある作業の中断が半年程度続き、その後も一向に再開されそうにない、という場合には、コントラクターは何をすることができるのでしょうか?
例えば、コントラクターが一向に対価の支払いをしないとします。
いくら電話でお願いしても、直接会って話しても、適当に話をはぐらかし、対価を支払う気がないようにも思えた場合、コントラクターとしては、もうそれ以上オーナーに何かを期待してもしょうがないですよね。
通常、このように、中断状態が長期間継続した場合には、コントラクターには二通りの方法が与えられています。
① オーナーの自己都合での中断が長期間継続した場合:コントラクターは、決められた期間経過後は、作業を再開することができる。
② オーナーの義務違反に基づく作業中断が長期間継続した場合:コントラクターはEPC契約を解除できる。
どうして、中断に至った理由によって、コントラクターが取り得る方法が上記のように2つに分かれるかと言いますと、①の方は、コントラクターは作業を再開しても困らないのに対し、②の方は、コントラクターは作業を再開できない、あるいは再開したくない、という、コントラクターの置かれた譲許の違いがあるためです。
例えば、②で、オーナーが自己の義務を履行していない場合には、それがサイトの占有権サイトへのサクセス権である場合には、それがオーナーによって取得されないと、コントラクターは作業をしたくてもできない状況にあります。
また、②に含まれる対価の支払い義務違反がオーナーにある場合には、対価を適切に支払ってもらうまで、コントラクターは作業をそれ以上したくない状況にあるわけです。
上記を踏まえ、EPC契約を読んでいったときに、コントラクターに中断権が与えられていないとか、あるいは、中断権はあるが、その効果は単に作業を中断するだけで、一定期間内に作業をコントラクターの裁量で開始できる、あるいは、契約を解除することができるといった定めがなされていない場合には、ぜひ、明記するようにしてください。
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EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
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納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
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Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |