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EPC契約における瑕疵担保責任① 総論

2024/01/04
 

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今回は、瑕疵担保保証について解説いたします(※民法改正後の現在は、「契約不適合責任」と呼ばれています)。

 

いつの時点の問題?

 

「瑕疵」とは、日本の民法の下では、「当事者間で合意したものとの不一致」といった意味です。

 

そして、この瑕疵担保保証責任とは、納期までにプラントを納入し、無事に検収に至った後、保証期間内に発見された瑕疵をコントラクターが無償で修理・交換・損害を賠償する責任です。

 

ここで、検収に至る前に瑕疵がされた場合には、それがプラントの運転に影響を与えないような欠陥でない限り、そもそも検収してもらうことができません。

 

つまり、瑕疵担保保証は、あくまで、検収後の話です。

 

 

「瑕疵」の定義

 

この瑕疵担保保証に関する条文でまずチェックしたいのは、「瑕疵」とは何かが定義されているかです。

 

「瑕疵」のことを、英語では、「defect」と言います。このdefectという文言は、特に定義されずに契約書の中で使用されていることもあります。

 

しかし、単にdefectというと、具体的に何を意味するのか不明確です。

 

コントラクターとしては、コントラクターが責任を負うのは、あくまで、「仕様との不一致」に限定したいところです。

 

仕様には合致しているけど、オーナーが、「これって、普通のものと違くない?」といってきたときにまで、コントラクターとしては責任を負いたくはありませんよね。

 

このdefectの定義が曖昧だと、オーナーから、「ここもおかしい。あそこもおかしい。」と言われて、コントラクターが不当に責任を負わせられることにもなりかねません。

 

あくまで、仕様を基準にしたいです。

 

そこで、defectという文言は、「EPC契約の仕様に合致していないもの」というように定義するべきだと思います。このとき、「仕様」とは何かも明確にするようにしてください。

 

例えば、「このEPC契約書の添付資料Zに定められている仕様に合致していないもの」といった感じです。

 

その上で、添付資料Zに、コントラクターが納入するべきプラントの仕様を明確に定めるようにしていただければと思います。

 

この仕様の記載が不明確だと、defectの意味も不明確なものになってしまいます。

 

 

コントラクターが責任を負わない瑕疵の明記

 

さらに、EPC契約においては、「瑕疵」に該当したとしても、コントラクターが責任を負わない事項を明示するのが一般的です。

 

defectとは、「仕様に合致しないもの」と定義した上で、さらに、「こういったものは、瑕疵担保保証の対象ではないですよ。よって、これらについては、コントラクターは責任を負いません」ということを明記するのです。

 

それは、具体的には、以下のようなものです。

 

・通常の使用による自然摩耗(normal tear and wear)

・腐食(erosion and corrosion)

・オーナーの不適切な運転が原因となっているもの

・オーナーが使うことを指示した材料

・消耗品、または瑕疵担保保証期間内に消費されることが通常のもの

 

ちなみに、「摩耗」と「腐食」は、どちらも、物質同士の摩擦によって生じるものです。

 

しかし、摩耗は、固体同士の摩擦で起きるもので、腐食は、固体と流体間の摩擦で起きるものです。

 

これらは、コントラクターが責任を負わないものとして、EPC契約に明記するようにしましょう。

 

 

「瑕疵」が発見された場合のコントラクターの責任

 

では、瑕疵担保保証期間中に、defectが発見された場合、コントラクターはいかなる責任を負うのでしょうか?

 

これは、defectの修理・交換といった、defectをない状態にすることです。

 

また、defectが原因でプラントの他の部分に損害が生じることもあります。

 

その場合、defectと同様に、それもコントラクターが無償で修理・交換等をしなければなりません。

 

なお、EPC契約では、コントラクターが一定の期間内にdefectの修理・交換等を行わない場合には、オーナーが自分で、または第三者を使ってdefectの修理・交換等を行うことができる旨が定められていることが一般的です。

 

その場合、defectの修理・交換等のために生じる費用は、コントラクターが最終的に負担することになります。

 

こうなると、コントラクターとしては、自分が修理したほうが安く済んだ、ということにもなり得るので、当然のことですが、自分で修理・交換をするようにしましょう。

 

瑕疵担保責任に関心がある方はこちらもお勧めです。

 

瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権

瑕疵担保責任③ 保証期間の延長

瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項

EPCコントラクターの下請けとして機器供給する契約の注意点(その①)保証期間の定め方

 

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

 

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サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
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EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

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