EPC契約におけるプラントの試験①

      2019/11/18

 

設計→調達→建設ときたら、いよいよ試験の段階に入ります。

 

試験に合格すれば、プラントは検収されます。

 

検収になれば、EPC契約のコントラクターの義務の大部分は終了したことになります。

 

この試験に関する条文についてのチェックポイントは以下の通りです。

 

・試験の種類と内容

 

・試験の流れ

 

・試験を再度行う場合

 

・追加試験の扱い

 

・試験が予定よりも遅れた場合

 

・minor itemの扱い

 

以下、上記の各項目について説明します。

 

1. 試験の種類と内容について

 

EPC契約において行う試験は、一つではありません。

 

複数あります。

 

主に、次のようなものです。

 

・プレ・コミッショニング試験

 

・コミッショニング試験

 

・性能試験

 

必ずしもこのように分けられていないこともあるかもしれませんが、概ねこのような試験があります。

 

それぞれの試験は、具体的には次のような内容の試験です。

 

・プレ・コミッショニング試験

 

これは、プラントを構成するいくつかの機器が、それぞれ単体で見たときに、契約書・仕様書通りに製造・組み立て・据付がなされていることを確認する試験です。

 

この段階では、まだプラントを運転させていません。

 

・コミッショニング試験

 

これは、複数の機器からなるシステムが計画通りに作動するかどうかを確認する試験です。

 

所定の燃料を投入して運転し、機器類の機能の確認、計器類の調整、制御機器機能の確認など、仕様に合致しているかどうかを確認します。

 

・性能試験

 

コントラクターが保証している保証値を満たしているか否かを確認するための試験

 

 

厳密には、試験の名称とその内容は、EPC契約書に明記されており、上記に示したものとは異なることもありますので、EPC契約書をよく読んで、いつの段階で、いかなる内容の試験をしなければならないのかを理解する必要があります。

 

特に気を付けたいのが、コントラクターは、各試験において、何をすることが求められているのか、を十分に把握することです。

 

試験のために必要となる燃料や水等は誰が誰の費用で準備するのかも契約金額の見積もりに影響してくるところなので、忘れずに理解しましょう。

 

2. 試験の流れ

 

試験は、一般的には、次のような流れを取ります。

 

①   コントラクターが、試験を行う準備ができたと考えたら、その旨をオーナーに書面で通知する。

 

②   オーナーはその書面の通知を受領したら、試験への立ち合いを望むか否かを一定期間内にコントラクターに対して回答する。

 

③   オーナーの回答を受けて、コントラクターは決められた期日に試験を実施する。

 

④   コントラクターは試験の結果をオーナーに報告する(オーナーが試験に立ち会っていても)。

 

⑤   オーナーは、コントラクターからの報告を受けて、試験に合格したと考えた場合には、合格証明書をコントラクターに発行する。もしも合格していないと考えた場合には、理由を付けてコントラクターにその旨を知らせる。

 

⑥   コントラクターは、合格証明書を受領したら、次の段階の試験に移る。一方、不合格だった場合には、必要な部分を自己の費用負担で修正し、再度上記①の手続きに戻って試験を行う。

 

3. 試験を再度行う場合の注意点

 

試験に合格できなかった場合には、上記の通り、不備をコントラクターが直した上で再度試験を行わなければなりません。

 

この時、試験に合格していたならば、オーナーに生じなかったであろう費用が発生することもあるでしょう。

 

その場合には、その追加で生じた費用は、コントラクターの原因で生じたオーナーの損害という位置づけになりますので、コントラクターはそれをオーナーに対して賠償しなければなりません。

 

もっとも、この時、コントラクターとしては、オーナーが提示する損害賠償額について、「本当に試験に合格しなかったことによってオーナーに追加で生じた費用と言えるのか?」を精査するようにしてください。

 

例えば、オーナーは、再度の試験に立ち会わなければならなくなった従業員数名の日当分を要求してくるかもしれませんが、その従業員は、立ち合いがなくても、もともと別の仕事をして給料をオーナーから得ていたはずなので、日当分の全額が再度の試験によってオーナーに追加でかかる費用であるとは言えないでしょう。

 

一方、サイトまでの交通費は、確かに、再度の試験によって生じる費用なので、それはコントラクターが負担せざるを得ないでしょう。

 

コントラクターとしては、オーナーに、証拠を提出するように要求し、実際にオーナーに追加でかかった費用のみ支払うようにしましょう。

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント