なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか?
今回から、契約解除についてご説明します。
まず、EPC契約中に定められている契約解除には、以下のようなものがあります。
- コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
- オーナーの自己都合解除
- オーナーの債務不履行に基づくコントラクターによる契約解除
- 不可抗力事由が一定期間継続した場合の契約解除
「えっ!こんなにあるの?」と思われたかたも多いかと思います。
あります。
そして、どの契約解除なのかによって、解除の効果が違います。
契約解除となった場合、コントラクターは作業を速やかに止める必要があります。
この点は、上記のどの契約解除による場合も同じです。
では、何が違うのでしょうか?
大きくは、次のような違いがあります。
- 解除までの間にした仕事の対価をコントラクターがもらうことができるのか否か
- 解除までにサイトに運んだ機器等をコントラクターが持ち帰り、サイトを契約締結前の状態に戻さなければならないか否か
- コントラクターは、仕事を最後まで完成させていれば得られたであろう利益を得られるか否か
どれも重要な要素です。
上記について、どのような扱いになっているのか、あくまで私の経験をもとにまとめましたのでご参考ください。
途中までした仕事の 行方 |
それまでにした仕事の対価 | コントラクターの
逸失利益 |
|
自己都合解除 | オーナーに引き渡される | コントラクターに支払われる | コントラクターに支払われる
|
コントラクターの責めに帰すべき事由に基づくオーナーによる債務不履行解除 | 全て撤収、または、オーナーに引き渡される | 全て撤収する場合は支払われない
オーナーに引き渡される場合はコントラクターに支払われる |
コントラクターに支払われない |
オーナーの責めに帰すべき事由に基づくコントラクターによる債務不履行解除 | オーナーに引き渡される | コントラクターに支払われる | コントラクターに支払われる |
不可抗力による債務不履行解除 | オーナーに引き渡される | コントラクターに支払われる | コントラクターに支払われない |
なぜ、上記のような違いがでるのでしょうか。
それは、解除に至る理由によって、コントラクターとオーナーの非の大きさが異なるからだと思います。
例えば、上記の4つの場合について、コントラクターとオーナーのどちらに非があるのかを見てみると、次のようになります。
オーナーの債務不履行>オーナーの自己都合>不可抗力>コントラクターの債務不履行
上記の左側がオーナーの非が最も大きく、右側がコントラクターの非が最も大きい場合です。
次回からは、解除に至る理由とその効果の関係を具体的に見ていきたいと思います。
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EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
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納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 | 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 | 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。 |
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |