EPC契約における瑕疵担保責任④
Disclaim
英米法の下では、瑕疵担保保証の条文には、「ここに定められているもの以外の一切の保証を免責する」といった旨の条文が定められることがあります。
特に準拠法が米国の法律とされている場合には、その条文を全て大文字で定めているものがあります。
これは、「免責条項」、または「disclaim条項」と呼ばれています。
以下が例文です(ここでは、読みやすくするために普通に小文字で書きました。)。
There are no warranties of the Contractor to the Owner hereunder with respect to the Works, express or implied, other than as set forth in this Article X. The Contractor does not make any other warranties or implied warranties of any kind, whether arising from law, custom, statute or otherwise, including any implied warranty of merchantability or fitness for a particular purpose. The remedies set forth in this Article X shall be the sole and exclusive remedy for the Owner in connection with the defect in the Plant. |
この点、ENAAやFIDICといったEPC契約のモデルフォームにはこの手の条文が定められていないようです。
しかし、私は、念のため、この条文をEPC契約の準拠法がどこの国の法律とされていても、定めるようにしていました。
すると、ほぼ全てのオーナーが受け入れてくれていました。「免責条項」「disclaim条項」は、広く受け入れられている条文と考えてよいのかもしれません。
自社の瑕疵担保保証の範囲・内容を明確にするために、入れてみてはいかがでしょうか
オーナーに起因する履行の中断があった場合の保証期間
契約履行中、オーナーの原因で契約の履行が中断されることがあります(例えば、オーナーが対価の支払いをしない場合に、支払いがなされるまで、コントラクターが履行を中断する場合や、オーナー都合でコントラクターの履行を中断する場合)。
このような中断があった場合、保証期間について、この中断期間が考慮されるべきでしょう。
例えば、2016年6月末が納期、保証期間が2年間のEPC契約において、オーナーに起因する中断が1年半あったとします。つまり、検収は最終的には2017年12月末になりました。ふつうに考えると、保証期間は2019年12月末になります。
しかし、オーナーに起因する中断がなければ、保証期間は2018年6月末で満了となるはずだったのです。
オーナーのせいで、保証期間が実質1年半のばされているようなものです。これは不公平でしょう。
よって、オーナーに起因するコントラクターによる履行の中断があった場合には、保証期間についてこの点が考慮され、上記で言えば、2018年6月末以降に発見された瑕疵については、コントラクターは責任を負わなくてよい、という扱いにするのが良いと思います。
瑕疵担保責任に関心がある方はこちらもお勧めです。
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権
EPCコントラクターの下請けとして機器供給する契約の注意点(その①)保証期間の定め方
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EPC契約のポイントの目次
【私が勉強した原書(英語)の解説書】
残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。
原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。
EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 | 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 | 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。 |
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 | 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 | 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。 |
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |