Force Majeureの効果を得るための手続き
Force Majeureに当たる出来事が生じました。
それにより、コントラクターの義務の履行が妨げられました。
Force Majeureに当たる出来事が生じた場合の効果は、納期延長です。
では、当然のように、納期は延長されるのでしょうか?
つまり、コントラクターは何もせずとも、自動的に、納期延長という効果を得ることができるのでしょうか?
そうではありません。
Force Majeureによる影響を受けたコントラクターは、ある一定の手続きを踏まなければなりません。
Force Majeureの効果を得るための手続き
EPC契約には、一般的に、次のようなような条文が定められています。
「Force Majeureに当たると思われる出来事が生じたら、その出来事を知り得た時点から○日以内に、それによって影響を受ける当事者は、もう一方の当事者に対して、書面でその旨を通知しなければならない。」
そして、次のような条文が定められていることが多いです。
「上記の期限内に通知をしない場合には、納期延長はなされない。」
つまり、Force Majeureに当たると思うような出来事が生じたら、EPC契約に定められた期限内に相手方に書面で通知しなければならないのです。
それを怠ると、本来得られるはずのForce Majeureの効果を得ることができなくなってしまいます。
そうなると、コントラクターはオリジナルの納期に遅れた場合には、オーナーから納期遅延の損害賠償を請求されてしまいます。
そのころ慌てて「いや、あのときはForce Majeureが起きたんです!」と言っても、EPC契約に従った手続きをしていないとして裁判所や仲裁でも認めてもらえないことになりかねません。
この点、「書面による通知をしないくらいで、Force Majeureの効果を得られなくなるのは厳しすぎる、不当だ」と思われるかもしれません。
それはごもっともだと思います。
なので、実際に書面による通知を忘れてしまい、後日、その期限が過ぎてから通知をしたことが無効だと、裁判や仲裁で本当に扱われてしまうのかはわかりません。そのような条文の有効性を争う余地も、場合によってはあるのかもしれません。
しかし、本当に契約書の定めの通りの扱いと判断されるリスクもあります。
EPC契約書にそう書いてある以上、書いてある通りに通知をするべきでしょう。
影響最小化義務
Force Majeureと思えるような出来事が生じたからといって、その影響を受けた当事者はもう何もせず黙って休んでいればよいか、というとそうではありません。
Force Majeureに当たる出来事が起きた場合でも、なるべくその影響を小さくするためにできることがあるかもしれません。
そのような場合には、Force Majeureの影響を最小化するように努力する義務がEPC契約書に定められているのが一般的です。
この努力を怠ると、その分だけ納期が延長されない、という結果になる可能性がありますので、ご注意ください。
EPC契約のポイントの目次
【私が勉強した原書(英語)の解説書】
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法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 | 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 | 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。 |
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Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |