Force Majeureの効果
Force Majeureに当たる出来事が生じました。
それにより、コントラクターの義務の履行が妨げられました。
この場合、コントラクターは何を得ることができるでしょうか?
つまり、「Force Majeureの効果は何か?」という問題です。
まず、Force Majeureが原因でコントラクターによる履行が妨げられ、工程に遅れが生じた場合、その工程が遅れた分だけ、納期を延長してもらうことができます。
では、Force Majeureによってコントラクターに生じた追加費用については、オーナーに負担してもらえるのでしょうか?
通常、工程にズレが生じると、当初の予定よりも長い期間作業に従事する人間をその仕事に確保しなければならなくなりますので、その分費用が余計に発生します。
これは、Force Majeureがなければ生じなかった費用なので、コントラクターとしては、オーナーに負担してもらいたいところでしょう。
しかし、このForce Majeureは、オーナーのせいで生じた出来事ではないのです。
つまり、オーナーが悪いわけではないのです。
それにも関わらず、オーナーにこの追加費用を全額負担してもらう、というのも、オーナーにとっては納得のいかないものであるでしょう。
この点、私の経験では、ほとんどのEPC契約では、Force Majeureの効果は、単に納期延長をしてもらえるだけでした。
つまり、追加費用分はコントラクターが負担することになっていました。
追加費用についての公平な考え方
しかし、次のような考え方もあると思います。
プラントを建設してもらいたい、と考えているのはオーナーの方です。
そのプラントの建設場所を指定したのもオーナーです。
コントラクターは、プラント建設の場所を決める判断については何ら介入しません。
とすれば、プラント建設地に影響を及ぼすようなForce Majeureであれば、そのForce Majeureから生じた悪影響のリスクはオーナーが負うというのが公平なのではないでしょうか。
つまり、Force Majeureの効果を次のようにするのです。
プラント建設サイトに影響を及ぼすForce Majeureの場合:納期延長+追加費用
プラント建設サイトに影響を及ぼさないForce Majeureの場合:納期延長のみ
上記のような方針でオーナーと協議をしてみるのもありだと思います。
危険負担との区別
ところで、上記で問題になっている「追加費用」とは、あくまで、工程が遅れたことが原因で生じるコントラクターの費用です。
Force Majeureに当たるような出来事、例えば、地震が原因で、建設中のプラントが毀損してしまった場合、それを修理するのにかかる費用は、上記の「追加費用」には当たりません。
これは、「工程が遅れたことが原因で生じる費用」ではないからです。
これは、危険負担の問題になります。
よって、この場合に誰が費用を負担するかは、EPC契約の危険負担の条文に従うことになります。
地震→コントラクターの義務の履行が妨げられる→工程がのびる→費用発生 (この費用は不可抗力の問題)
地震→プラント毀損→毀損を修理するための費用が発生 (この費用は危険負担の問題) |
通常、プラントの危険は、検収日まではコントラクターが負うとしているEPC契約が多いので、検収前に生じた地震が原因でプラントが毀損した場合のその修理費用は、コントラクターが負うことになるのが一般的です。
EPC契約のポイントの目次
【私が勉強した原書(英語)の解説書】
残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。
原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。
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EPC/建設契約の解説書 | EPC/建設契約の解説書 | 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方 |
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 | 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 | 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。 |
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 | 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 | 英国におけるDelay Analysisに関する指針 |
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 | 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 | 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。 |
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |