ボンドのon demand性を緩和する方法
ボンドはon demandであるのが通常なので、オーナーがそのボンドを発行した銀行(ボンド発行銀行)に対してボンドを提示し、「支払ってくれ」と要求すれば、その銀行は、本当にコントラクターが契約に違反したのか否かを確認することなく、オーナーの要求に応じなければなりません。
このことは、オーナーにとっては非常に強力な武器であり、一方、コントラクターは人質をオーナーに取られているようなものです。
では、このon demand性を少しでも緩和する方法はないのでしょうか?
この点、on demandであることを修正することではないのですが、次のようにすることで、いきなりボンドに基づいてボンド発行銀行からオーナーに対して支払われてしまうリスクを少しは減らすことができると思います。
① オーナーは、ボンドに基づいてボンド発行銀行からお金を支払ってもらうためには、その前に一度、「ボンドを没収する旨の通知」をコントラクターに対して送付しなければならず、さらにその通知には、契約違反状態を一定の期間内に治癒すべきことを記載する。その通知をコントラクターに対して送付したことの証拠として、その通知の写しを、オーナーがボンド発行銀行に送付しなければならないことにする。
② さらに、オーナーは、コントラクターが契約上の何条に定められた義務に違反したのか、かつ、その契約違反がコントラクターによって一定期間内に治癒されなかったことを明記した書面をもって、ボンド発行銀行に対して支払いを求めなければならず、かつ、その書面には、オーナーの正当な代表者による署名を必要とする。
上記により、少しは、ボンドのon demand性を緩和できると思います。
というのも、ボンドに基づくボンド発行銀行からオーナーへの支払いは、コントラクターにとっては、本当に避けたいことだからです。
①については、事前にオーナーがボンドに基づく請求をする旨の通知をコントラクターが与えられれば、コントラクターはオーナーと少しは協議をすることができるかもしれません。その協議をすることにより、お互いに和解できるかもしれません。オーナーが当初考えていた損害賠償額を減額できるかもしれません。
また、②については、オーナーの担当者レベルの人が、ボンドに基づく請求をしようと考えただけでボンド発行銀行に対して支払いを請求できるとするのではなく、オーナー内のそれなりの地位にいる人(代表権を持っている人等)の署名が必要とすることにより、安易に没収されるのを防ぐことになります。
上記の①と②を、ボンドの文面に記載し、「以下を満たした場合に限ってボンド発行銀行はオーナーからの請求に応じなければならない」としておくとよいと思います。
ボンドのフォームは、EPC契約に添付されてくるのが通常です。上記のような記載が最初からボンドに定められている場合もありますが、そうでない場合には、ぜひ追記することを、オーナーおよび銀行と協議してみるとよいと思います。
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Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol
2nd edition February 2017 |