契約関係で相手方と争いになった場合の注意点
裁判や仲裁に関してよくある勘違い
相手方に損害賠償や追加費用を請求する場合によくある間違いがあります。
それは、「正義は勝つ」という誤解です。
どういうことかと言いますと、損害賠償や追加費用を請求する場合には、当然、自分たちの主張が正しいと考えているわけです。
「相手方の契約違反によって自分たちが損害を被った」、「自分たちは何等落ち度がないのに費用が生じた」と考えているからこそ、相手に対して裁判や仲裁で請求しようとするわけです。
そのため、請求する当事者は、次のように考えがちです。
「きっと、裁判官・仲裁人は、うちの主張が真実で、相手がウソを言っていると見破ってくれるに違いない。正義は勝つだ!」
しかし、裁判において判断してくれる裁判官、仲裁において判断してくれる仲裁人は、次のようには考えていません。
「どっちの主張が真実なのだろう?」
こんなことをお話しすると、多くの人は驚きます。
「え?裁判官とか仲裁人って、真実を探るための人なんでしょう?」
いえいえ、違います。もしもそんなことを考えている裁判官や仲裁人がいたら、失格だと私は思います。
真実が何かなんて、誰にもわからない
この世の中に、「何が真実か?」なんて、断言できる人がいるのでしょうか?
ある人が言っていることが本当なのか嘘なのかなんて、判断できる人がいるのでしょうか?
いるとしたら、「人の心の中を読める人」か、または、「時間と空間をワープして、事件があった時点に戻って現場を確認できる人」だけでしょう。
それはつまり、「人間を超越した何か」でしかありません。
しかし、裁判官も仲裁人も、そんな超越した存在ではありません。
ただの人です。
実際、私たちが学んでいる歴史は大きく捻じ曲げられていることが多いのです。
例えば、日本が太平洋戦争に至った本当の理由なんていうものも、未だにハッキリしません。
いや、ハッキリしている人達にとっては何が真実なのかは明確ですが、それを否定する人もたくさんいて、きっとそんな状態は今後も続いていくわけです。
裁判官・仲裁人が心がけていること
「え?じゃあ、裁判官や仲裁人の役割って何?」
これに対する答えは、以下です。
「自分の目の前に出された証拠から、何が合理的に言えそうかな~」と考えること。
これだけです。
つまり、「真実がどうか?」なんてことではなく、とにかく「証拠」、しかも、自分の目の前に提出された証拠から言えることを考えるだけ、なのです。
どうでしょう?
この場合、当然、真実とは異なる判断が下ることが容易に出てきますよね。
例えば、「ある事実を根拠づける証拠がない場合」です。
証拠から判断するのだから、証拠がなければ、自分の主張なんて認めてもらえるわけがないのです。
ときどき、このような場合には、裁判官や仲裁人に文句を言う人もいます。
「あの裁判官(仲裁人)は、真実をわかっていない!」と。
当然です。
「真実が何か」なんてことを探ろうともしていないからです。
そうだとすると、何が大事になる?
今回このようなお話をしたのは、「証拠」の重要性を知っていただきたかったからです。
裁判や仲裁で争おうとする場合、「自分の言っていることが正しい!」と信じていることが多いです。
でも、問題は、あなたの会社が「正しいことを言っているかどうか」ではないのです。
問題は、「あなたの会社が認めて欲しいことは、ちゃんと証拠から合理的に論理を積み重ねていった結果、たどり着くことなのか?」ということだけなのです。
積み上げられた証拠を丁寧に見ていき、それらをたどって行ってもあなたの会社の主張に行きつかない場合には、仮にあなたの会社の主張が本当は「真実とやら」なのだとしても、裁判官も仲裁人も認めてくれないわけです。
だから、とにもかくにも、「証拠」を裁判官・仲裁人に提出することに全力を尽くす必要があります。
「自分たちは誠実だ。
これまでまじめに働いてきた。
社会にも貢献してきた。
世の中からもよい会社だと思われている。
よって、裁判官も仲裁人も、自分達の主張をきっと信じてくれるに違いない!!」
・・・などと考えてはいけません。
証拠がなければ、アウトです。
契約に関して相手方と争いになった場合には、ぜひ、「証拠」をしっかりと集める努力をしましょう。
ちなみに、一般的には、この作業はものすごく大変で、労力と時間がかかります。
会社として、「この裁判で絶対に勝つぞ!」と考えてそれなりのチームを組んで当たらないと、なかなか証拠は集まらないものだ、ということを知っておいていただきたいと思います。
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