英語の契約書で使われるラテン語「vice versa」と「mutatis mutandis」
英語の契約書を読んでいると、ラテン語に遭遇することがあります。
ラテン語なんて、習ったことがない私たちには意味が分かるはずがありませんよね。
この記事では、英語の契約書で登場する頻度が高く、また、使いこなせるようになると便利なこともある次の2つについて、例文を示しながら、わかりやすく解説します。
- vice versa
- mutatis mutandis
vice versa(váisi və́ːrsə)
これは、「逆もまた同様に」という意味です。
「Aである場合には、B、そして、Bである場合にはA」
ということを表したいときに、上の下線部分を書くのは面倒ですよね。
そこで、「逆もまた同様に」とシンプルに書く際に、この表現が使われます。
英語の契約書では、次の例文にあるように、「単数形で書いたものは複数形を含み、複数形で書いたものは単数形を含む」と定める場合に使われることが多いです。
- Except as otherwise expressly stated or unless the context otherwise requires, all references to the singular will include the plural and vice versa.
(別途明記されている場合を除き、または、文脈が別途求めるのでない限り、単数形で記載された全ての文言は、複数を含むものとし、そして、逆もまた同様とする(複数形で記載されている全ての文言は単数を含む)。)
mutatis mutandis(mjutáːtis mjutáːndis)
これは、「必要な変更を加えて」という意味です。
ある事項について定めた条文があり、その条文について必要な修正を加えて別の似た事項に適用させたい場合に使われる表現です。
この「ある事項について定めた条文があり、その条文について必要な修正を加えて別の似た事項に適用させること」を「準用」と呼びます。
この表現を用いることで、ほぼ同じ条文を繰り返し定める必要がなくなるので便利ですが、「何が必要な変更なのか?」という点で争いになる可能性があります。
単に契約当事者を入れ替えるだけの変更で済むというような場合以外にこの文言を使用する際は注意したほうがよいでしょう。
場合によっては、面倒でも、新しく条文を定める方がよいこともあるかもしれません。
以下は、mutatis mutandisの例文です。
- Section 5.1 through 5.4 shall apply mutatis mutandis to claims of the Seller.
(本契約の第5条1項から4項は、売主の請求に対して準用される(売主の請求に対して必要な変更を加えてで適用される)。)
- The Parties agree that the provisions of the Confidential Agreement executed between Company A and Company B as of September 10, 2023 are incorporated mutatis mutandis into this Agreement.
(両当事者は、2023年9月10日に企業Aと企業Bとの間で締結された秘密保持契約の条文は、本契約に準用される(必要な変更を加えて適用される)ことに同意する。)
英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!
英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。
・hereto/hereof/herein/hereinafterやthereof/thereby/thereafterなど
・shall 義務
・shall not 禁止
・may 権利
・if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現
・unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現
・otherwise「別途」を表す表現
・notwithstanding ~にかかわらず
・regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現
・to the extent ~の範囲で
・pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現
・provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現
・however provided that 「ただし」を表す表現