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フロートは誰のものか?

2024/01/06
 
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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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前回の記事フロートとは何かについて理解できたところで、このフロートは、誰に帰属するのか?という点を考えてみましょう。

 

上記の工程表の中で、S2の工程上の仕事dがオーナーのせいで1ヶ月遅れたとします。すると、以下のようになります。

つまり、まだ納期は3ヶ月目のままです。

ここで、コントラクターのせいで1日だけ仕事dが遅れたとします。すると、どうなるでしょうか?

以下のように、最初の納期よりも1日だけ完成が遅れることになりますよね。

この場合、

「コントラクターが遅れたことで納期に1日遅れた状態になるので、この1日分だけ、コントラクターは納期遅延のLD(liquidated damages)をオーナーに支払わなければならないことになる」

といったら、どう思いますか?

 

「え?どうして?もともとは1カ月間の余裕があったのに、オーナーの遅れのせいでその余裕が全て食い尽くされたんでしょ?コントラクターはその後1日しか遅れていないのに、どうしてコントラクターが納期遅延LDを支払わなければならなくなるの?」

 

こう思う人もいると思います。これが正に、フロートは誰のものか?という問題です。

 

フロートを使えるのはコントラクターだけではない」という考え方を採用した場合には、最初にオーナーのせいで生じた遅れによって全てのフロートが消費されてしまうのです。

 

そして、その後にコントラクターが1日でも遅れた場合には、「予定よりも遅れた日数」で見れば、

オーナー:コントラクター=1ヶ月:1日となり、コントラクターの罪の方が軽いのに、

結局責任を負うのはコントラクターということになるのです。

 

ここで、「フロートを使えるのはコントラクターだけ」という考え方を採用した場合には、全く別の結論が導かれます。

 

最初にオーナーのせいで1ヶ月仕事dが遅れたとします。

 

しかし、この場合にはフロートは消費されません。

 

コントラクターは、1カ月間という時間内であれば、遅れても納期遅延LDをオーナーに支払う責任を負わなくてよい、ということになります。

 

つまり、コントラクターは、「納期遅延LDの責任を負うのは、自分の原因でフロートを使い果たした場合だけ」ということになります。

 

これは、コントラクターのせいでない理由で遅れが生じた場合には、コントラクターはフロート分だけ納期延長クレーム(EOTクレーム)をすることができる、とも言えます。

 

このように、「フロートは誰のものか?誰に帰属するのか?」は、実際にコントラクターが遅れたときに納期遅延LDを支払う責任の有無と程度に大きな影響を及ぼす問題です。

 

フロートに関する契約書上の記載

この点、フロートが誰のものかが契約書に明記されていれば、その定めに従うことになります。

 

例えば、「フロートは、コントラクターのもの」と定められれば、コントラクターのみがフロートを消費することができます。

 

すると、フロートがついている仕事がオーナーのせいで遅れた場合には、フロートが維持されるように納期が延長されることになるでしょう。

 

一方、「フロートは、プロジェクトのもの」と定められれば、コントラクターもオーナーもフロートを消費することができることになります。

「プロジェクトのもの」とはそういう意味です。

 

そしてここで重要なのが、「フロートはプロジェクトのもの」とした場合には、要は、「早い者勝ち」となります。

つまり、先に遅れを生じさせたものが、フロートを使うことができるということです。

 

前の記事で使った例によれば、フロート1ヶ月分を先にオーナーのせいで生じた遅れのために使い切ったあとに、たった1日だけコントラクターが遅れを生じさせた場合には、オーナーはなんら遅れについて責任を問われず、コントラクターだけが納期遅延の責任を負います(つまり、納期遅延LDをオーナーに支払わなければならないことになります)。

 

フロートに関する記載が契約書にない場合の扱いは?

さて、それでは、契約書に、上記の様なフロートの定めがない場合には、一体どうなるのでしょう?

 

実は、通常のEPC契約や建設契約には、フロートに関する記述は一切ないことが多いのです。

 

その場合にどのような扱いになるのか、そしてフロートに関する注意点については、

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はじめに①一般的なフロー

はじめに②特殊なケース

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