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本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約書における一般条項~紛争解決条項 ~

2024/01/05
 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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1. 紛争解決条項とは何か?

 

契約締結後、契約当事者間で、契約に定められている条文の解釈について、意見の食い違いが生じることがあります。

 

ある当事者は、「Aだ!」と解釈し、もう一方の当事者は、「そんなわけないだろ!Bだよ」という感じで争う場合です。

 

また、条文の解釈だけでなく、締結された契約に関する事実の有無についての争いが生じる場合もあります。

 

例えば、売買契約において、売主が納期までの製品を買主に引き渡せなかった場合に、買主がそれによって被った損害を賠償するように売主に求めたときに、売主は、「確かに納期に遅れたけど、それは買主に落ち度があったからだ」というような反論をし、すんなりと損害を賠償しようとしないことが起きることもあります。

 

上記のような、契約の条文の文言の解釈や、契約に関する事項について、当事者間で意見が分かれることを、「紛争」と呼びます。

 

 

決して、お互いに武器を持って戦ったりするわけではないのですが、なぜか、「紛争」という大げさな呼び方を契約の世界では一般的にします。

 

このような紛争が生じた場合、まずは契約当事者間で話し合って解決しようとします。

 

ほとんどの紛争は、この当事者間の協議の段階で解決するといってよいでしょう。

 

しかし、当事者間で協議しても一向に解決しないような場合もあります。

 

この場合には、第三者に判断してもらうしかありません。

 

その第三者に判断してもらう方法としては、裁判、仲裁、調停の3種類があります。

 

これら紛争を第三者に解決してもらう方法のことを、「紛争解決方法」とか、「紛争解決手段」と言います。英語では、Dispute Resolutionと呼びます。

 

そして、それを定める条項を、「紛争解決条項」と呼んでいます。

 

この紛争解決条項は、以下のようなものです(仲裁で解決する場合の例)。

 

「本契約の解釈もしくは有効性、または契約当事者の権利義務に関し、契約当事者間で見解の相違や紛争が生じた場合、それらは最終的に、国際商業会議所の手続規則に従い、○○(仲裁地が入る)で仲裁によって解決するものとする。仲裁裁定は最終のものとし、かつ本契約当事者を拘束する。」

 

 

2. 裁判・仲裁・調停の違い

 

では、上記に上げた3つの紛争解決方法の違いは一体何なのでしょうか?

 

以下に、主な違いをあげてみます。

 

法的拘束力の有無

 

まず、裁判と仲裁では、判断する第三者による裁定に法的拘束力があります

 

つまり、出された裁定に契約当事者が従うことが法的に求められるのです。

 

もしも従うことを拒んだ場合には、強制執行がなされます。

 

つまり、国が、強制的に、その裁定内容を実現させるために動きます。

 

一方、調停では、下された裁定には、法的拘束力が生じないのです。

 

よって、裁定が出されても、契約当事者が、「そんな判断おかしい!俺はそんなのにしたがわねえ!」と言って拒んでも、国は何もしてくれません。

 

 

判断を下す人を自分たちで選べるか否か

 

裁判の場合、裁判官が判断を下します。

 

裁判官は、司法試験を合格して裁判官になった人です。

 

どの裁判官が自分たちの紛争を審議して判断するのかは、契約当事者では選ぶことができません。裁判所が決めます。

 

一方、仲裁では仲裁人が、調停では調停人が紛争を審議して判断します。

 

この仲裁人や調停人は、必ずしも司法試験に合格している人でなければならないわけではありません。

 

契約当事者が選ぶことができるのです。

 

よって、例えば、プラント建設案件における紛争である場合には、プラント建設の実務を経験したことのある技術者を仲裁人や調停人に選ぶこともできます。

 

その意味で、仲裁や調停は、裁判の場合よりも紛争に詳しい人、その分野の専門家に判断してもらう機会がある、と言えるでしょう。

 

審議の回数

 

裁判では、ご存知の通り、一審、控訴審、そして最高裁と3回審議してもらえる可能性があります。

 

しかし、仲裁と調停は、1度だけです。

 

公開か非公開か

 

裁判では、原則として審議も判決も公開されます。

 

しかし、仲裁と調停は、非公開です。

 

企業間の紛争は、秘密情報を含んでいるものがある、または、そもそも紛争していること自体を公に知られたくない、ということも多いかと思いますので、その観点からは、裁判は避けたいと思う企業が多いかもしれません。

 

 

3. 紛争解決方法はどれを選択するべきか?

 

では、どの紛争解決を選ぶべきなのでしょうか?

 

裁判について

この点、海外の企業との契約では、少なくとも、相手方当事者の国での裁判は避けたほうがよいと思います。

 

裁判は、裁判官が審議・判決するので、どうしても、その国にとって有利な判断が下されるのではないだろうか?という懸念があります。

 

特に、米国の企業との紛争において米国で裁判となると、陪審制が採用され、日本企業にとってはとても不利だと思います。

 

また、仮に契約相手が米国以外の企業の場合でも、米国での裁判は避けたほうがよいと思います。

 

その理由は、上述した陪審制に判断が委ねられるのは不安がある、ということもありますが、米国では、ディスカバリー制度というものがあり、非常に広い範囲で証拠を開示しなければならなくなりえます。これは、とても面倒な事態に陥ることになるでしょう。

 

さらに、仮に裁判で判決が下されても、相手方が「絶対に判決に従わない!」という態度をとった場合には、相手国の裁判所にお願いして、強制執行をしてもらう必要があります。

 

このとき、外国で下された判決に基づいて強制執行をすることは、実は難しい場合があるのです。

 

強制執行をすることが難しいということは、せっかく行った裁判が無駄になるリスクもあると言えます。

 

調停について

一方、調停は、その判断に法的拘束力がないので、紛争解決の実行力に欠けます。

 

国際紛争の解決方法は仲裁がよい

したがって、海外の企業との紛争解決方法としては、判断に法的拘束力がある仲裁を選択するのがよいと私は考えます。

 

仲裁であれば、ニューヨーク条約加盟国との争いであれば、外国で下された仲裁判断に基づく強制執行が可能です。

 

 

4. 紛争解決方法を仲裁とする場合の注意点

 

 

仲裁規則

 

仲裁規則とは、仲裁の手続きについての決まりを指します。英訳所準拠法とは異なります。準拠法は、「実体法としてどの国の法律に従うか」という問題ですが、この仲裁規則は、「手続き」を問題にしています。

 

この仲裁規則として最も代表的なのは、ICCInternational Chamber of Commerce=国際商業会議所)の仲裁規則です。他にも、AAAAmerican Arbitration Association)の仲裁規則やSIACSingapore International Arbitration Center)の仲裁規則等、様々な仲裁規則があります。

 

私は、ICC規則に基づく仲裁を行ったことがあります。

 

しかし、正直申し上げますと、ICC規則を熟読したことはありません。

 

その他の仲裁規則も読んだことがありません。

 

なので、仲裁規則を色々と読み比べた結果、「ICCが一番いい!」と思ってICCをお勧めしているわけではありません。

 

お勧めしている理由は、ICCの仲裁規則が最も有名だからです。

 

「みんなが使っているなら、そうおかしなものでもないのだろう」という程度で契約書にはICCに従うことにいつもしています。

 

そして実際、ICC仲裁規則に従って仲裁を行った際に、何も不満を感じませんでした。

 

この点、仲裁規則に強い興味がある方は、色々な仲裁規則を熟読して決める、という方法もあるかもしれませんが、そこまであえてしなくても、ICCAAA、そしてSIACといったメジャーどころのどれかにしておく、ということでよいのではないかと私は思います。

 

仲裁人

 

仲裁人は、一人でもよいし、三人でもよい、と一般的にはされています。

 

この点、私は、三人がよいと思います。

 

この場合、契約当事者がそれぞれ一人ずつ仲裁人を選び、三人目は、契約当事者が選んだ仲裁人が選ぶことになります。

 

つまり、仲裁人を三人とすれば、契約当事者はそれぞれ最低一人、自分たちが選んだ者を仲裁人とすることができます。

 

仲裁では、契約当事者が仲裁人を選ぶことができるので、その分、誰を選ぶかが重要になります。

 

争いになっている案件に通じている者で、経験豊富な人を選べば、そうおかしな判断が下されるリスクを下げることができるでしょう。

 

一方、仲裁人を一人としてしまうと、たまたまあまりその種の案件に詳しくない仲裁人が選ばれた場合、その業界ではありえないような判断を下されるリスクもあると思います。

 

仲裁人の人数が増えると、その分仲裁費用が掛かりますが、納得できないような判断を下されるリスクをできるだけ避けるために、特に重要な契約においては、仲裁人は三人とするのがよいと思います。

 

 

5. 紛争解決条項の英文

 

紛争解決方法として仲裁を選んだ場合の英文の条文例をご紹介します。

 

Any difference or dispute between the parties concerning the interpretation or validity of this Agreement, or the rights and liabilities of parties shall be finally settled by arbitration in the State of New York, the U.S., in accordance with the Commercial Arbitration Rules of the International Chamber of Commerce. The award thereof shall be final and binding upon the parties hereto.

 

訳:

本契約の解釈もしくは有効性、または契約当事者の権利義務に関し、契約当事者間で見解の相違や紛争が生じた場合、それらは最終的に、国際商業会議所の手続規則に従い、米国ニューヨーク州で仲裁によって解決するものとする。仲裁裁定は最終のものとし、かつ本契約当事者を拘束する。

 

 

  • dispute

紛争

 

  • interpretation

解釈

 

  • validity

有効性

 

  • settle

解決する

 

  • arbitration

仲裁

 

  • award

裁定

 

 

6. 穴埋め式練習

 

最後に、紛争解決条項を穴埋め式で練習しましょう。

 

これを何度か繰り返すことで、紛争解決条項で頻出する用語を自然と身に着けることができるようになります。

 

問題:

Any difference or [dispute] between the parties concerning the [interpretation] or [validity] of this Agreement, or the rights and liabilities of parties shall be finally [settled] by arbitration in the State of New York, the U.S., in accordance with the Commercial Arbitration Rules of the International Chamber of Commerce. The [award] thereof shall be final and [binding] upon the parties hereto.

 

訳:

本契約の解釈もしくは有効性、または契約当事者の権利義務に関し、契約当事者間で見解の相違や紛争が生じた場合、それらは最終的に、国際商業会議所の手続規則に従い、米国ニューヨーク州で仲裁によって解決するものとする。仲裁裁定は最終のものとし、かつ本契約当事者を拘束する。

 

回答:

Any difference or [dispute] between the parties concerning the [interpretation] or [validity] of this Agreement, or the rights and liabilities of parties shall be finally [settled] by arbitration in the State of New York, the U.S., in accordance with the Commercial Arbitration Rules of the International Chamber of Commerce. The [award] thereof shall be final and [binding] upon the parties hereto.

【一般条項の解説の目次】

一般条項の解説

総論

 

完全合意条項・修正条項

契約に関する事項については、契約書にすべて定められている旨を定める条項

(正確には、口頭証拠排除の準則が適用されやすくするための条文)

および

契約書を修正・変更するための条件を定める条項

定義条項その① 定義条項の必要性

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

無効な部分の分離条項

契約書中のある部分が無効と判断された場合、残りの部分は有効である旨を定める条項

定義条項その② 定義条項の注意点

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

権利放棄条項

ある事項について権利を保持する当事者がその権利を行使しなかった場合でも、その権利自体を放棄したものと解釈されないことを定める条項

準拠法

契約条文を解釈する際に適用する法律を特定するための条項

見出し条項

契約書中の条文のタイトルには法廷拘束力はなく、条文の解釈に何ら影響を及ぼすものではない旨を定める条文

紛争解決条項

契約に関する紛争を解決するための方法を定める条項

一般条項がわかるようになると得られるメリット

通知条項

契約に関して必要となる通知の宛先を定める条項

全ての一般条項を必ず定めないといけないのか?

契約期間

契約の有効期間を定める条項

権利義務の譲渡制限

契約上の権利義務を第三者に譲渡することを制限する条文

役に立つ英文契約ライティング講座

義務を定める方法 ④shall be required to doとshall be obliged to doの問題点 義務違反の場合を表す方法
権利を定める方法 英文契約の条文は能動態で書くとシンプルかつ分かりやすい英文になる!
shall be entitled to doとshall be required to do 第三者に行為をさせるための書き方

上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の24~30頁部分です。

英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。

①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。

②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。

➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!

この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。

 

本書の詳細は、こちらでご確認できます。

英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。

ぜひ、本書で修正スキルを身につけましょう!きっと、一生モノの力になるはずです!

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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