第三者に行為をさせることを定める方法~役に立つ英文契約ライティング講座⑥~

   

第三者に行為をさせたい場合

売買契約には、様々な義務が定められていますが、

これを大別すると、大きく2つに分けることができます。

 

1つは、買主が売主にして欲しいと考えていること。

 

そしてもう1つは、売主が買主にして欲しいと考えていることです。

 

買主が売主にして欲しいと思うことは、

The Seller shall+動詞の原形という形で、

一方、売主が買主にして欲しいと思うことは、

The Purchaser shall+動詞の原形という形で定められることが多いことは、

パターン1で理解して頂けたと思います。

 

契約では、これに加えて、「第三者にある行為を義務付けたい場合」がときどきあります。

 

第三者とは、契約当事者以外の者を指します。

 

売買契約でいえば、契約当事者は買主と売主ですが、

例えば、買主の取引先(最終客先)や、売主に部品を供給する、

いわゆる下請などが第三者の例です。

 

ここで、例えば、買主が売主の下請(subcontractor)に

何かをして欲しいと考えたとして、契約書にどのように定めればよいでしょうか。

 

これに対する最もシンプルな答えとして、次のような条文を定めようとする人がいるかもしれません。

 

The Seller’s subcontractor shall+動詞の原形

 

しかし、これは誤りです。

 

というのも、下請は、買主と売主間の売買契約の当事者ではないので、

その売買契約に署名をしていません。

 

よって、その売買契約書に記載されている内容に、下請は一切拘束されないのです。

 

つまり、仮に上に記載されたような「下請けは~しなければならない」と定めたとしても、

下請はその記載に従う必要は一切ないことになるので、買主の目的は果たされません。

 

そこで、買主として考えられる手段は、

「下請けにある行為をさせることを売主に義務付ける」というものです。

 

これには、次のような表現がよく用いられます。

 

The Seller shall cause the subcontractor to+動詞の原形

 

The Seller shall procure that the subcontractor+動詞

 

こうすれば、契約に定められている行為を売主の下請が行わない場合には、

買主は「なぜ下請けにそれをさせないのか?」といって売主に対して責任を追及できます。

 

その結果、買主が下請けに直接義務を負わせるのと近い効果を作り出すことができるようになるのです。

 

このように、「誰かにある行為をさせる」ということを「使役」と呼びます。

 

使役を表す動詞としては、get、have、make等がなじみ深いと思いますが、

この他に、契約書では、上に挙げたcauseやprocureがよく使われます。

 

特に、procureは、辞書を引いても、使役の意味があるとは記載されていないことがありますが、

英文契約の世界では、procure that 主語+動詞で上の例文のように使われることがあるので、

ここで覚えておきましょう。

 

練習問題

では、練習として、以下の日本語をcauseとprocureを用いて英訳してましょうう。

問題① causeを用いて

売主は、下請に、本契約の添付資料5に定められている文書を買主に提供させなければならない。

[                  ] the documents specified in Appendix 5 hereof.

問題② procureを用いて

買主は、その客先に、製品の受領証を売主に発行させなければならない。

[                  ] the certificate of acceptance of the Product.

 

答え

問題① The Seller shall cause the subcontractor to issue to the Purchaser

問題② The Purchaser shall procure that the customer issues to the Seller

 

上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の20~22頁部分です。

英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。

①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。

②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。

➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!

この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。

 

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英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。

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