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本郷塾で学ぶ英文契約

はじめて契約書の修正をする際に知っておきたいこと

2024/01/11
 

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今回は、契約書を修正する際に相手方に示すべき修正の理由の書き方をご紹介したいと思います。

 

1. 修正する理由を適切にコメントすることの重要性

 

契約書を修正する場合には、単に条文を修正するだけではなく、修正する理由を相手方に説明しますよね。

 

通常は、その修正の理由を契約書の修正部分の近くに、「コメント」として記載することが多いのではないでしょうか。

 

そして、この修正の理由を書くことは、結構面倒だったりします。

 

契約書を修正したはいいが、その理由は・・・「とにかく修正したいから!」なんて思ってしまうこともあるのではないでしょうか。そして、大して理由を書かずに相手に出してしまうこともあるのではないでしょうか。

 

しかし、これだと、契約当事者間の力関係で自分の方がよほど強い場合でない限り、相手方はすんなりとは折れないと思います。

 

そのため、契約書の文言についての協議が長引いてしまうという事態も起こりえます。

 

相手も納得できるようなコメントを適切に付けることが、契約書の文言そのものの修正と同じくらい重要だと言えます。

 

2. 修正の理由としてのコメントの4つのパターン

 

私が毎日のように契約書を検討する中で、あることに気が付きました。

 

それは、「契約書は、概ね以下の4つの理由で修正される」という事実です。

 

(1)   契約書の条文が、「不明確」であるから

 

契約書の条文が不明確だと一体どうなるでしょうか?

 

おそらく、契約締結後に、両当事者間でその条文の解釈を巡って争いが起きる可能性があるでしょう。

 

特に、その契約のメインとなる条文中に、そのような不明確な文言があれば、後でその文言の解釈について争いが起きたときにインパクトは大きいと思います。

 

そこで、文言が不明確な場合には、その不明確さによって生じる問題を相手方に指摘して、より明確な文言に修正を申し出る必要があるでしょう。

 

したがって、この場合、コメントには次のように書くことができます。

 

「この条文のこの文言は意味が不明確です。このままでは、この不明確さが原因で、~という不都合が契約締結後に起こりえます。よって、・・・のように明確に定めるべきです」

 

 

(2)   契約書の条文が、「普通の条文」と違うから

 

契約書には、「普通はこの種の条文はこう書いてある」というものがあります。例えば、「秘密保持契約における情報の管理についてはこう」、「売買契約の責任についてはこう」、「技術ライセンス契約の技術情報の保証についてはこう」・・・という感じです。

 

ここで、「普通と異なる条文が定められている」ことは何を意味するのでしょうか?

 

それは、「一方当事者にとって、不公平な内容になっているかもしれない」ということでしょう。

 

契約書において、「普通はこう定められている」というものがなぜあるのかと言いますと、それが両当事者にとって公平な内容であるために、結局そこに落ち着く場合が多いからでしょう。よって、相手方からのドラフトに普通と異なる条文が定められている場合には、それは相手にとって有利に、自社にとって不利に定められているかもしれないと疑うべきです。

 

よって、「あれ?これって普通と違うな」と思ったら、その条文の場合に生じ得る問題についてよく考え、それが受けられるリスクなのかどうかを考えた上で、もしも受けられないリスクであれば、通常の条文に直す、または受け入れられるレベルに修正するようにしましょう。

 

そして、この場合に相手方に示す修正理由としてのコメントは次のように書くことができます。

 

「この条文は、この種の契約に通常定められているものと違います。通常は~と定められています。この条文のままでは、当社にとって~というリスクがあります。よって、・・・のように修正してください」

 

 

(3)   契約書の条文が、「不公平」な定めであるから

 

これは、上記(2)の「普通と異なる場合」と似ていますが、上記(2)は、「普通の条文」という比較の対象がある場合であるのに対し、こちらは、普通の条文に定められていない条文が契約書に入っていた場合、つまり、比較する条文がない場合です。

 

契約書は、同じ種類のものであれば、どれも似たようなものです。

 

秘密保持契約であれば、定められる項目も、内容も似たり寄ったりのものになります。

 

しかし、厳密に言えば、何かが微妙に違っています。

 

というのは、案件ごとに、背景となる事情が異なるはずだからです。

 

背景となる事情が違えば、契約書の条文もそれに伴い変わるはずです。

 

そのため、滅多に見たことがないような条文が、相手方から送られてきた契約書中に入っていることがあってもおかしくありません。

 

そんなときは、その条文そのものが、公平な条文か、それとも不公平な条文なのかを考えましょう。

 

その結果、受け入れられるものなのか、それとも受け入れられないのか、つまり、背景事情から考えて、定めるのが公平な条文なのか、それとも不公平な条文なのかを検討して、その上で削除するか、修正するか、そのまま受け入れるかを決めます。

 

そして、この場合に相手方に示す修正理由としてのコメントは次のように書くことができます。

 

「この条文は、当社にとって~というリスクがあり、不公平です。よって、~のように修正してください、または、削除してください」

 

 

(4)   契約書の条文が、自分の会社のカンパニーポリシーに反するから

 

これは滅多にないケースかもしれませんが、「これだけは絶対に譲れない」というポイントを持っている会社もあるでしょう。

 

それはその会社の過去の取引の中で大きな損失を被ったことがあり、そのため、ある種の条文だけは絶対にこう定めることにしている!と言ったような拘りです。

 

その拘りは、他社から見ると奇妙に見えるかもしれませんが、その会社としては、二度と同じ失敗を繰り返さないように、との理由で、「絶対に譲歩してはいけない条文」と位置付けられていることもあるかもしれません。

 

そのような場合には、相手方にも、「「カンパニーポリシー」としてこれは絶対に譲れない」と主張することになると思います。

 

よって、この場合に相手方に示す修正理由としてのコメントは次のように書くことができます。

 

「当社には、~というカンパニーポリシーがあります。この条文は、このカンパニーポリシーに反します。よって、~と修正してください」

 

もっとも、単に「カンパニーポリシー」と言うだけでは、相手方もやすやすとは認めないと思います。その条文のままでも相手方にとって不利益はない、または受容できる程度の不利益であることや、不公平な内容でない点を説明しなければならないことにはなると思います。

 

 

3. このパターンを意識すると何が変わるか?

 

上記をパターンとして意識すると、修正の理由をコメントとして記載するのがこれまでよりも早くできるようになると思います。

 

また、文言が不明確か?普通と違うか?不公平か?カンパニーポリシーに反するか?という視点で契約書をチェックする癖もつき、条文のチェックも早く進むと思います。

 

特に、これは英文契約書を修正し、英語で相手にコメントを書くときに言えると思います。

 

具体的には、以下の通りです。

 

(1)不明確な文言の修正の場合:

This word is unclear because…. Therefore, please modify this provision like the following; “修正条文”.

 

(2)普通と異なる条文の削除・修正の場合:

This provision is not usual one in this kind of contract. Therefore, please delete this provision (または、modify this provision like the following; “修正条文”)

 

(3)不公平な条文の削除・修正の場合

This provision is unfair because…. Therefore, please delete this provision (または、modify this provision like the following; “修正条文”)

 

(4)カンパニーポリシーに反する場合

We have a company policy that (カンパニーポリシーの説明) on this matter. Therefore, please delete this provision (modify this provision like the following; “修正条文”)

 

このようにすると、読み手である契約相手にとっても、受け入れられるかどうかはともかく、こちらのコメントを容易に理解できるようになると思います。その結果、相手からの反論も的を射たものになり、「議論がかみ合っていない」ということは減ると思います。そして結果的に、契約についての協議が円滑に進む、ということに繋がっていくように思います。

 

ちなみに、私が上記のパターンに初めて気づいたのは、初めて海外の取引先と英語で契約交渉をしなければならない案件で、相手方に示すために、相手方の契約ドラフトへの修正の理由のリストを作成していたときでした。

 

このパターンに気が付くまでは、修正する度に書くべき修正の理由を考えるのがとても面倒で、「こんなに面倒くさいなら、修正する条文の数を減らすか?」と思ったほどでした。しかし、このパターンに気が付いてからは、割とサクサクとコメントを書くことができるようになりました。

 

さらに、実際の英語での交渉の際には、「とにかく、その条文が「不明確」なのか、「普通と違う」のか、「不公平」なのか、あるいは「カンパニーポリシーに反する」のかを最初に伝え、その後にbecause…とつなげて具体的な修正理由を説明しよう!」と考えられるようになりました。これにより、使う単語の数は限定的でも、こちらの意図が伝わりやすくなり、それまでよりもずっと契約交渉がしやすくなりました。

 

 

4. まとめ

 

以上をまとめると、以下の通りです。

 

契約書を修正する理由は、概ね以下の4つのどれかに当てはまる。

 

(1)   文言が不明確だから(unclear)

(2)   条文が普通と違うから(not usual)

(3)   条文が不公平だから(unfair)

(4)   条文が自社のカンパニーポリシーに反するから(company policy)

 

この視点から、契約書を検討し、そしてコメントを書く。特に英文契約に対するコメントを書く際に便利。

 

英文契約を読むなら、まずはこの英文契約の基本的な表現と型を押さえましょう!

英文契約を読む際に、まずこれだけは押さえておくべき!という英文契約の基本的な型を構成する英単語は以下のようなものです。

shall 義務

shall not 禁止

may 権利

if, when, whereなど、「~の場合」を表す表現

unlessやexceptなど、「~でない限り」、「~を除いて」を表す表現

otherwise「別途」を表す表現

notwithstanding ~にかかわらず

regarding, in connection with, in respect ofなど「~に関して」を表す表現

to the extent ~の範囲で

pursuant to, in accordance withなどの「~に従って」を表す表現

provided inやspecified inなど、「~に定められている」を表す表現

however provided that 「ただし」を表す表現

なお、はじめて契約交渉に臨む方には、次の記事がお勧めです。

はじめて契約交渉する人に知っておいて欲しいこと

 

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