はじめて契約交渉をする人に知っておいて欲しいこと

今回は、はじめて契約交渉をする人に知っておいて欲しいことについてお話しします。
1.契約書を修正するだけでは契約締結には至らない
初めて契約交渉を行うことになったとき、まず思うのは、きっと次のようなことではないでしょうか?
「契約交渉って、具体的にどうするものなのだろう?」
契約書をチェックして、自社に有利な内容に修正できても、どのように交渉して、それを相手方に認めさせるのか?
これができないと、どんなに立派に契約書を自社に有利に修正したとしても、最終的にその内容で契約を締結することはできないでしょう。
では、お互いに合意に至るためには何が必要なのでしょうか?
2.結論:お互いの懸念点を理解し合う
いきなり結論ですが、それは、「相手方の懸念が何なのかを理解しようとすること」です。
契約は、複数の当事者間の合意です。
必ず相手がいます。
よって、自社にとって有利になるように、という視点が重要なのは間違いありませんが、それだけでは絶対に相手は合意しないでしょう。
つまり、相手もある程度のってこれるような契約書を作る必要があります。
このとき、自社が提示した条文案について「相手方が抱いている懸念点は何か?」を理解できていれば、あとはその懸念を払しょくするだけです。
相手の懸念を解決する代替案をこちらから提案できる可能性も出てきます。
その分、両社が合意に至る可能性が高くなります。
もちろんその際には、自社が若干譲歩する必要がでてくるかもしれませんが、出発点は、「相手がその条文について何を気にしているのか?懸念は何なのか?」という点をこちらが理解することです。
一方、こちらの懸念点を相手に理解してもらう必要もあります。
なぜなら、相手にも、こちらが譲歩するのと同様に、一定程度譲ってもらう必要があるからです。そうしないと、こちらだけが譲歩することになってしまいます。
相手がある程度譲歩する際に前提となるのが、「こちらの懸念事項を相手に伝え、相手にそれを理解してもらうこと」です。
こちらの懸念が正当なものであれば、相手方も、「確かに、向こうの懸念もある程度合理的で理解できる」と思い、相手方の社内で譲歩の余地を検討していくことになるでしょう。
このとき、こちらが相手の懸念を理解して解決しようとする姿勢を示しておくことにより、相手もこちらの誠意を感じ取り、歩み寄ろうとしてくることが期待されます。
「相手の懸念を理解しようとし、かつ、こちらの懸念も相手に示す」ということが、契約交渉で一番重要なことです。
この点、「単に当事者が一方的に自分の利益だけを主張しあう」ということになると、一向に議論がまとまらない結果となりえます。
そうなると、結果として、時間的に早く契約を締結したいと強く思っている方だけが譲歩せざるを得ないことになるか、または、契約締結に至らずに協議は終了する、ということになります。
3.具体的に協議の場でなんと発言するべきか
契約交渉の議論が紛糾したときや、なかなかまとまらないときには、次のように発言することで、議論を前進させることができることがあります。
「この問題についてのそちらの懸念は何でしょうか?こちらとしては、その懸念をできるだけ解決したいと思っています」
「私たちは、この問題について、こういう懸念を持っています。この懸念を払しょくできる何か代替案はないでしょうか?」
私の経験では、特に海外の取引先との契約交渉でこの発言は役に立ちました。つまり、英文契約の交渉のときです。
懸念をお互いに理解しあっても合意に至らない場面もありますが、お互いの懸念点を理解できれば合意にたどり着くことができる問題はたくさんあると思います。
出発点は、お互いに懸念点を理解することです。
この記事に書いてあることが、初めての契約交渉で、少しでも役立てば嬉しいです。
なお、契約修正の際のコメント作成が苦手な人にはこちらの記事がお勧めです。
はじめて契約書の修正をする際に知っておきたいこと 修正する理由としての4つのパターン