英文契約書における一般条項~契約期間~
1. 契約期間の条項とは何か?
始めのあるものには、いつか終わりが必ずやってくる・・・。
これは世の中のあらゆる事象に当てはまるものでしょう。
終わりのないものはありません。
それは契約書も同じです。
契約書もその効力が生じる日があり、そしてその効力が消滅する日があるのです。
その効力の始めから終わりまでの期間を、「契約期間」といいます。より正確には、「契約有効期間」といいます。
この契約有効期間を定める条文も、一般条項です。
日本語では、以下のような条文です。
「本契約は、本契約に基づき早期に解除されない限り、頭書記載の日より発効し、1年間有効に存続する。」
契約がいつから発効し、どのくらいその効力を持つかが定められていますよね。
ちなみに、「発行」ではなく、「発効」という漢字を使います。「効力を発する」から、「発効」と書きます。
2. 契約期間の条文に付随して定められることが多い条文
上記で紹介した契約期間を定める条文は、次のような条文とセットで定められることが多いので、ご紹介します。
(1) 契約期間の自動更新の条文
契約期間を過ぎると、契約は消滅します。
このとき、契約当事者としては、さらに1年、契約を更新したいと考える場合もあるでしょう。
もちろん、その場合には、契約の両当事者が、「契約を更新します」という追加の契約書を締結することで契約を更新することができます。
この他には、最初から契約書の中に、契約期間を自動更新させる条項を定めておく方法もあります。
具体的には、次のような条文です。
「本契約は、その後、発効日の各応当日の30日前までに相手方が書面による通知により早期に解除しない限り、それ以降の各年における契約発効日の応当日において、1年間ごとに自動更新されるものとする。」
つまり、原則として、契約は毎年更新されることにし、例外として、解除したければ、相手方に書面で通知する、という定めです。
これは、予め、契約書の更新が予定されている契約書に定めておくと便利です。
(2) 契約終了前に生じた義務の存続
契約が終了した場合、契約書は効力を失います。
では、契約期間満了前に生じた義務は、それが果たされる前に契約期間が過ぎた場合、どのような扱いになるのでしょう?
それはもちろん、「義務を果たせ!」と思いますよね?
「そんなこと、いちいち定めなくても当たり前だろう!」とも思えます。
しかし、この点を明確に定める条文があります。
具体的には以下のようなものです。
「本契約の終了は、当該終了の前までに本契約に基づいて生じた各当事者の義務には、何ら影響を及ぼさない。」
この条文が定められていないと、契約終了前の義務は果たされていなくても、契約終了時に消滅してしまうのでしょうか?
そんなこともないと思いますが、契約金額の規模が大きい契約書の場合、この種の条文が定められていることが多いです。
おそらく、「念のため」という定めなのだろうと思います。
(3) 残存条項
上記(2)に似ていますが、残存条項というものもあります。
これは、例えば準拠法とか、紛争解決条項等、契約が消滅した後でも効力がなくなっては困る条文については、契約終了後も効力を持つことを明記する条文です。
例えば、締結した契約に関して契約当事者間で争いになると、その争いを解決するために当事者同士で協議したり、さらには裁判や仲裁で争ったりすることになります。
それは結構時間がかかるものです。
おそらく、契約期間を過ぎてもまだ解決できない場合もあるでしょう。
そんなときに、「はい、契約期間が過ぎたので、この契約に定められている準拠法や紛争解決条項も効力がなくなります」という扱いになったら困りますよね。
そういうことがないように、契約期間を過ぎても効力を持ち続ける条文を明記するのが、この残存条項です。
具体的には、次のような条文です。
「第○条(秘密保持)、第△条(準拠法)、第□条(仲裁)の定めは、本契約の期間満了および終了後においてもなお有効に存続する」
3. 契約期間の英文
契約期間
Unless otherwise terminated earlier pursuant to Article X, this Agreement becomes effective on the first above written and continues for a period of one (1) year.
訳:
本契約は、本契約のX条に基づき早期に解除されない限り、頭書記載の日より発効し、1年間有効に存続する。
- effective
有効な
- continue
継続する
自動更新
This Agreement automatically is renewed thereafter for an additional one (1) year period on each anniversary of the effective date hereof, unless earlier terminated by either party upon written notice at least thirty (30) days prior to each consecutive anniversary hereof.
訳:
本契約は、その後、発効日の各応当日の30日前までに相手方が書面による通知により早期に解除しない限り、それ以降の各年における契約発効日の応当日において、1年間ごとに自動更新されるものとする。
- renew
更新する
- anniversary
契約応当日
- consecutive
その後に続く
契約終了前に生じた義務
The termination of this Agreement shall not affect any obligations of either party incurred hereunder prior to such termination.
訳:
本契約の終了は、当該終了の前までに本契約に基づいて生じた各当事者の義務には、何ら影響を及ぼさない。
- affect
影響する
- incur
負う
残存条項
Notwithstanding the foregoing, the provisions of the Article X, the Article Y and the Article Z shall survive any termination or expiration hereof.
訳:
上記に関わらず、第X条、第Y条、第Z条の定めは、本契約の期間満了および終了後においてもなお有効に存続する。
- survive
残存する
4. 穴埋め式で練習
では、英文について、穴埋め式で練習してみましょう。下の問題の英文の空欄部分を、訳を参考にして埋めてください。答えはさらに下の英文中の黄色部分です。
これを何度か繰り返すことで、契約期間を定める条文で使われる用語を無理なく身に着けることができるようになります。
契約期間
問題:
Unless otherwise terminated earlier pursuant to Article X, this Agreement becomes [effective] on the first above written and [continues] for a period of one (1) year.
訳:
本契約は、本契約のX条に基づき早期に解除されない限り、頭書記載の日より発効し、1年間有効に存続する。
回答:
Unless otherwise terminated earlier pursuant to Article X, this Agreement becomes [effective] on the first above written and [continues] for a period of one (1) year.
自動更新
問題:
This Agreement automatically is [renewed] thereafter for an additional one (1) year period on each [anniversary] of the effective date hereof, unless earlier [terminated] by either party upon written notice at least thirty (30) days prior to each [consecutive] anniversary hereof.
訳:
本契約は、その後、発効日の各応当日の30日前までに相手方が書面による通知により早期に解除しない限り、それ以降の各年における契約発効日の応当日において、1年間ごとに自動更新されるものとする。
回答:
This Agreement automatically is [renewed] thereafter for an additional one (1) year period on each [anniversary] of the effective date hereof, unless earlier [terminated] by either party upon written notice at least thirty (30) days prior to each [consecutive] anniversary hereof.
契約終了前に生じた義務
問題:
The termination of this Agreement shall not [affect] any obligations of either party [incurred] hereunder prior to such termination.
訳:
本契約の終了は、当該終了の前までに本契約に基づいて生じた各当事者の義務には、何ら影響を及ぼさない。
回答:
The termination of this Agreement shall not [affect] any obligations of either party [incurred] hereunder prior to such termination.
残存条項
問題:
[Notwithstanding] the foregoing, the provisions of the Article X, the Article Y and the Article Z shall [survive] any termination or expiration hereof.
訳:
上記に関わらず、第X条、第Y条、第Z条の定めは、本契約の期間満了および終了後においてもなお有効に存続する。
回答:
[Notwithstanding] the foregoing, the provisions of the Article X, the Article Y and the Article Z shall [survive] any termination or expiration hereof.
契約書における一般条項の種類にはどんなものがあるのか?
契約書の主な一般条項の種類は、概ね以下のようなものがあります。
リンクをクリックすると、詳しい解説のページに行くことができます。
【一般条項の解説の目次】
総論
|
完全合意条項・修正条項
契約に関する事項については、契約書にすべて定められている旨を定める条項 (正確には、口頭証拠排除の準則が適用されやすくするための条文) および 契約書を修正・変更するための条件を定める条項 |
契約書中で使われる文言の意味を定義する条項 |
無効な部分の分離条項
契約書中のある部分が無効と判断された場合、残りの部分は有効である旨を定める条項 |
定義条項その② 定義条項の注意点
契約書中で使われる文言の意味を定義する条項 |
権利放棄条項
ある事項について権利を保持する当事者がその権利を行使しなかった場合でも、その権利自体を放棄したものと解釈されないことを定める条項 |
準拠法
契約条文を解釈する際に適用する法律を特定するための条項 |
見出し条項
契約書中の条文のタイトルには法廷拘束力はなく、条文の解釈に何ら影響を及ぼすものではない旨を定める条文 |
紛争解決条項
契約に関する紛争を解決するための方法を定める条項 |
一般条項がわかるようになると得られるメリット |
通知条項
契約に関して必要となる通知の宛先を定める条項 |
全ての一般条項を必ず定めないといけないのか? |
契約期間
契約の有効期間を定める条項 |
|
権利義務の譲渡制限
契約上の権利義務を第三者に譲渡することを制限する条文 |
役に立つ英文契約ライティング講座
①義務を定める方法 | ④shall be required to doとshall be obliged to doの問題点 | ⑦義務違反の場合を表す方法 | |
②権利を定める方法 | ⑤英文契約の条文は能動態で書くとシンプルかつ分かりやすい英文になる! | ||
➂shall be entitled to doとshall be required to do | ⑥第三者に行為をさせるための書き方 |
上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の24~30頁部分です。
英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。
①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。
②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。
➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!
この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。
本書の詳細は、こちらでご確認できます。
英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。
ぜひ、本書で修正スキルを身につけましょう!きっと、一生モノの力になるはずです!
【私が勉強した参考書】