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英文契約書の一般条項~準拠法~

2024/01/05
 

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1. 準拠法とは?

 

準拠法とは何でしょうか?

 

これは、契約書を解釈する際に拠るべき法律を意味します。

 

つまり、日本法を準拠法と契約書に定めた場合、その契約書を解釈する際には、日本の法律を適用することになるのです。

 

準拠法の条文は、具体的には、次のようなものす。

 

「本契約は、日本法に準拠し、同法によって解釈される。」

 

では、もしも準拠法を契約書に定めておかないとどうなるのでしょうか?

 

その場合は、法律を適用すべき問題について管轄権を有する裁判所が存在する国の国際私法によって準拠法が決まることになります。

 

難しい説明をしてしまいましたが、要は、「どこの法律が適用されることになるかすぐにはわからなくて面倒なことになる!」ということです。

 

ここで、契約書の中には、全ての一般条項が常に定められているわけではありませんが、この準拠法は、ほぼ常に定められる一般条項といってよいと思います。

 

どこの国の法律が適用されるのかが予測できなくなるという事態をなるべく避けたいと当事者が考えるのが通常だからでしょう。

 

 

2. 準拠法はどこの国に定めるべき?

 

では、準拠法は、どこの国の法律と定めておくべきなのでしょうか?

 

この点、自分で契約書をドラフトする際は、まずは自分の国、つまり日本法にしておき、それを相手が拒否した場合には、日本でも、相手国でもない第三国にする、という対応をしている会社が多いのではないでしょうか。

 

では、なぜこのような対応をする会社が多いのでしょう?

 

日本法の方が、日本の会社には有利だから?

 

果たしてそうなのでしょうか。

 

日本の法律の中で、日本の企業を外国の企業よりも有利に扱うことにしている法律なんて、ないと思います。

 

法律は公平なものです。

 

争っている会社が日本の会社か、外国の会社なのかによって、解釈が異なったりすることはないはずです。

 

つまり、法律の内容そのものが、日本法の場合、日本の企業にとって最も有利に働く、ということはないはずです。

 

では、どうして日本の法律に従う、と最初は提案するのでしょう?

 

これは、もしも争いになった際に、日本の法律が適用されることにしておいた方が、日本人である自分達がよく知っている法律なので戦いやすいからだと思います。

 

外国の法律を準拠法とすると、争いになった際に、その外国の法律に詳しい専門家、つまり、外国の法律事務所の弁護士に相談する必要が生じる可能性が高いですよね?

 

それよりは、日本法にしておいた方が楽、という程度の理由だと思います。

 

そう考えると、準拠法を必ずしも日本法にしなければならないわけではない、と思えますよね。

 

ただ、なんとなく、発展途上国の法律を準拠法にするのには抵抗があります。

 

おそらくそれは、「公平な法律じゃない場合があるんじゃないか?」という不安が少しあるのではないかと思います。

 

または、「発展途上国には、良い法律事務所が先進国ほどはないのではないか?」という懸念もあるのかもしれません。

 

おそらく、法律の内容が、自国の企業に有利になり、他国の企業に不利になるようなものというのは、まずないのだろうと思います。しかし、なんとなく、上記のような不安や懸念があることから、日本の企業が契約当事者になる契約では、準拠法は、日本法、英国法、米国のどこかの州法、またはシンガポール法などが選ばれやすく、例えば、あえて中国法、インド法、ベトナム法等を積極的に選ぶことは少ないと思います。

 

3. 準拠法を相手国の法律にしては絶対にダメなのか?

 

では、相手方当事者の国の法律を準拠法とすることは、絶対に避けるべきなのでしょうか?

 

結論としては、必ずしもそうではないと思います。相手方当事者の国の法律を準拠法にしただけで、日本の企業に直ちに不利益になるわけではありません。

 

ただ、あえて、準拠法を相手方当事者の国の法律にする積極的な理由もありませんよね?

 

第三国の法律にすることで、もしも万が一契約に関して争いが生じたら、どちらも、第三国の法律の専門家にアドバイスを求めるという手間をかけることになる、という扱いにするのが公平でしょう。

 

もっとも、外国の政府が契約当事者である場合や、外国の入札案件で日本の企業が応札するような案件では、ほぼ強制的に、準拠法は相手方当事者の国の法律とされることが多いと思います。

 

それこそ、インドの案件であればインドの法律でしょうし、中国の入札案件であれば中国法とさせられると思います。

 

その場合には、それに従わないと案件を受注できないこともあるでしょうから、相手国の法律を準拠法とすることでやむをえません。

 

 

4. 英文の準拠法条項

 

準拠法の条文は、英語では次のように書かれるのが一般的です。

 

This Agreement is governed by and construed in accordance with the laws of [].

 

上記のような受動態で定められることが多いですが、英文は原則として能動態で書かれるべきなので、次のように書くこともできます。

 

The laws of [] govern and construe this Agreement.

 

 

5. 穴埋め式練習

 

問題:

This Agreement is [governed] by and [construed] in accordance with the laws of the State of New York.

 

訳:

本契約は、米国ニューヨーク州法に準拠し、同法によって解釈される。

 

回答:

This Agreement is [governed] by and [construed] in accordance with the laws of the State of New York.

 

 

6. コラム~準拠法から考える不平等条約撤廃の苦労~

 

先ほど、「なんとなく、発展途上国の法律を準拠法にしたくないと思ってしまう」というお話をしました。

 

おそらく、発展途上国の法律も、さほどおかしなことは書いていないし、ましてや、外国の企業のみに不利になる内容が定められていることもまずないはずです。

 

しかし、それでも、なんとなく抵抗を感じますよね。

 

おそらく、明治時代初期の欧米列強も、日本に対してそのような感情を持っていたのかもしれないな、と思います。

 

特に、治外法権についてです。

 

幕末に日本と不平等条約を締結した欧米列強は、明治になり、明治政府が不平等条約の撤廃を求めても、すんなりと応じてはくれませんでした。

 

特に治外法権については、日本の法律に不安があったからだそうです。

 

江戸時代、日本は被疑者に対して、拷問をしていました。

 

被疑者とはいえ、まだ有罪になっていない者に拷問をするなんて、欧米列強は恐怖を通り越して嫌悪感を抱いていたのではないでしょうか。

 

「拷問するなんて、日本はなんて未開な国なんだ!そんな国と平等な条約なんて結んだら、我々が日本に行ったときに日本で被疑者になったら拷問されることになるし、その結果、本当は無罪なのに、有罪にされてしまうかもしれない!」

 

こんなことも思ったのではないでしょうか。

 

その結果、「俺たちと同じように、ちゃんとした国になるまで、不平等条約を撤廃しない!」

 

私たち日本人が、準拠法を発展途上国の法律にしたくないとなんとなく感じることに鑑みると、当時の欧米列強の気持ちもうなずけます。

 

やっぱり、自分たちと同等レベルに成熟しており、かつ、同等レベルの制度を持っている国でないと、その国の法律の内容に不安を感じてしまうんですよね。

 

「突拍子もないことが法律に書いてあるかもしれない・・・」

 

なんて思ってしまうわけです。

 

そう考えると、不平等条約を撤廃するために、鹿鳴館を立てたり、西洋の真似を徹底的に行った明治時代の人々の努力を馬鹿にしたり、笑う気にはなれません。むしろ、よく頑張ってくれたな~と思い、頭が下がる思いにもなりますね。

【一般条項の解説の目次】

一般条項の解説

総論

 

完全合意条項・修正条項

契約に関する事項については、契約書にすべて定められている旨を定める条項

(正確には、口頭証拠排除の準則が適用されやすくするための条文)

および

契約書を修正・変更するための条件を定める条項

定義条項その① 定義条項の必要性

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

無効な部分の分離条項

契約書中のある部分が無効と判断された場合、残りの部分は有効である旨を定める条項

定義条項その② 定義条項の注意点

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

権利放棄条項

ある事項について権利を保持する当事者がその権利を行使しなかった場合でも、その権利自体を放棄したものと解釈されないことを定める条項

準拠法

契約条文を解釈する際に適用する法律を特定するための条項

見出し条項

契約書中の条文のタイトルには法廷拘束力はなく、条文の解釈に何ら影響を及ぼすものではない旨を定める条文

紛争解決条項

契約に関する紛争を解決するための方法を定める条項

一般条項がわかるようになると得られるメリット

通知条項

契約に関して必要となる通知の宛先を定める条項

全ての一般条項を必ず定めないといけないのか?

契約期間

契約の有効期間を定める条項

権利義務の譲渡制限

契約上の権利義務を第三者に譲渡することを制限する条文

役に立つ英文契約ライティング講座

義務を定める方法 ④shall be required to doとshall be obliged to doの問題点 義務違反の場合を表す方法
権利を定める方法 英文契約の条文は能動態で書くとシンプルかつ分かりやすい英文になる!
shall be entitled to doとshall be required to do 第三者に行為をさせるための書き方

上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の24~30頁部分です。

英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。

①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。

②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。

➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!

この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。

 

本書の詳細は、こちらでご確認できます。

英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。

ぜひ、本書で修正スキルを身につけましょう!きっと、一生モノの力になるはずです!

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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