英文契約書における一般条項~譲渡制限条項 (Assignment)~

      2020/01/28

1. 譲渡制限条項とは?

 

譲渡制限条項とは、次のような条文を指します。

 

「いずれの当事者も、相手方当事者の事前の書面による同意なくして、本契約に基づく自己の権利または義務の全部または一部を、移転・譲渡・委任してはならない。当該同意なく移転・譲渡・委任がなされた場合、それらは無効とする。」

 

この条文は、「契約書そのもの」を第三者に引き渡すことが問題にされているわけではありません。

 

あくまで、契約書に定められている権利や義務を第三者に移転・譲渡・委任する場合を問題にしています

 

具体例として、売買契約で考えてみます。

 

売買契約には、買主の対価支払い義務が、売主の製品引渡義務が定められていますよね。

 

これら義務を、第三者に与えてはならない、と定めているのです。

 

また、売買契約には、売主が買主に対して対価の支払いを要求する権利が定められているとも言えますが、この権利を、第三者に与えてはならない、と定めています。

 

イメージ、掴んでいただけましたでしょうか?

 

 

2. どうしてこんな条項が必要なのか?

 

では、どうしてこのような条文があるのでしょうか?

 

権利や義務を第三者に与えても、別にいいじゃないか」と思いませんか?

 

例えば、売買契約上の売主の買主への製品引渡義務を、第三者に与えたとします。

 

すると、その第三者は、売主に代わってその製品を買主に引き渡す義務を負うわけです。

 

買主としては、製品が手に入ればよいのだから、別に義務を第三者に譲渡されても困らないはず・・・と、なんとなく言えそうな気がしませんか?

 

しかし、よく考えてみると、そうではないのです。

 

そもそも、どうして、買主は、売主と売買契約を締結したのでしょうか?

 

それは、買主は、その売主なら、ちゃんとした製品、つまり、欠陥のない製品を期限までに自分に引き渡してくれると信頼したから、ではないでしょうか?

 

契約は、当事者間の信頼に基づいて締結されるものです。

 

それにも関わらず、勝手に売主が自分の義務を第三者に引き渡したら、買主としては、「ふざけんな!」と言いたくなることでしょう。買主としては、ちゃんとした製品が期日までに引き渡されるのか、非常に不安な状態になってしまいます。

 

一方、売主としても、その買主が、ちゃんと対価を支払ってくれるだろう、と信じたからこそ、契約を締結したわけです。

 

いかにもお金を支払えそうにない人には、製品を売りたくないですよね?

 

よって、売主も、買主がその対価支払い義務を勝手に第三者に与えるようなことがあっては困るわけです。

 

以上のように、勝手に契約上の権利義務を第三者に譲渡されると、お互いに困った事態になり得るので、「相手方の書面による同意」を条件とするようになったのです。

 

 

3. 検討のポイント

 

この譲渡制限条項のポイントは、「相手方当事者の書面による同意」が契約上の権利義務の譲渡の条件にされていることです。

 

この点、一方当事者にのみこの譲渡制限がかかっている契約書も時々見かけます。

 

例えば、売買契約では、売主は権利義務を譲渡できないけれど、買主は譲渡が制限されていない、というような場合です。

 

一般的には、これは正当な理由はないはずで、不公平です。

 

なので、もしもそのような条文になっていたら、両当事者に譲渡制限が付けられるように修正をするべきです。

 

しかし、個別の事情によっては、そのような一方当事者のみが譲渡制限をつけられることを正当化できる場面もあるかもしれません。

 

例えば、その契約を締結時点で、近い将来、その事業を丸ごと第三者に譲渡することが予定されているような場合です(事業譲渡の場合)。

 

よって、もしも相手方から送付された契約書中に、そのような一方当事者だけが譲渡制限を付けられている場合には、その理由を相手方に確認し、その回答次第で、修正の要否を判断するとよいでしょう。

 

 

4. 英文の譲渡制限条項(Assignment)

 

ちなみに、この譲渡制限条項は、英語では次のような条文になります。

 

Either party shall not transfer, assign, or delegate all or any of its rights or obligations hereunder without the other party’s prior written consent. Any transfer, assignment, or delegation without such consent shall be null and void.

 

  • shall not

これは「禁止」を意味します。

 

  • assign

財産・権利を譲渡する」という意味です。

 

  • delegate

権限、任務、責任を委任する」という意味です。

 

  • without the other party’s written consent

相手方当事者の書面による同意なしに」という意味です。

 

  • null and void

無効」という意味です。

 

5. 穴埋め式練習

 

この穴埋め式練習をすることで、チェックや修正をする力が増しますので、繰り返し練習してみてください。

 

穴埋め練習:

下の訳を参考に、英文の[ ]内に適切な用語を入れてください。

Either party [shall] not transfer, [assign], or [delegate] all or any of its [rights] or obligations hereunder without the other party’s [prior] written [consent]. Any transfer, assignment, or delegation without such consent shall be [null] and void.

 

訳:

いずれの当事者も、相手方当事者の事前の書面による同意なくして、本契約に基づく自己の権利または義務の全部または一部を、移転・譲渡・委任してはならない。当該同意なく移転・譲渡・委任がなされた場合、それらは無効とする。

 

回答:

Either party [shall] not transfer, [assign], or [delegate] all or any of its [rights] or obligations hereunder without the other party’s [prior] written [consent]. Any transfer, assignment, or delegation without such consent shall be [null] and void.

その理由はこちらに詳しく記載しました。

(といっても、お近くの書店にない場合もありますので、こちらで在庫をご確認いただけます。丸善・ジュンク堂・文教堂さん / 紀伊国屋さん お近くになければ通販で・・・(ちなみに、ウェブストアは通販に入ります)

【一般条項の解説の目次】

一般条項の解説

総論

 

完全合意条項・修正条項

契約に関する事項については、契約書にすべて定められている旨を定める条項

(正確には、口頭証拠排除の準則が適用されやすくするための条文)

および

契約書を修正・変更するための条件を定める条項

定義条項その① 定義条項の必要性

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

無効な部分の分離条項

契約書中のある部分が無効と判断された場合、残りの部分は有効である旨を定める条項

定義条項その② 定義条項の注意点

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

権利放棄条項

ある事項について権利を保持する当事者がその権利を行使しなかった場合でも、その権利自体を放棄したものと解釈されないことを定める条項

準拠法

契約条文を解釈する際に適用する法律を特定するための条項

見出し条項

契約書中の条文のタイトルには法廷拘束力はなく、条文の解釈に何ら影響を及ぼすものではない旨を定める条文

紛争解決条項

契約に関する紛争を解決するための方法を定める条項

一般条項がわかるようになると得られるメリット

通知条項

契約に関して必要となる通知の宛先を定める条項

全ての一般条項を必ず定めないといけないのか?

契約期間

契約の有効期間を定める条項

権利義務の譲渡制限

契約上の権利義務を第三者に譲渡することを制限する条文

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

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 - 英文契約における一般条項についての解説