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本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約における一般条項 完全合意条項と修正条項 

2024/01/05
 

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1. 完全合意条項とは何か?

 

完全合意条項

 

この漢字から連想するに、「完全な合意」であることを示す条項、といった意味であると思えますよね。

 

そうです。

 

完全合意条項は、その契約書が、「完全な合意」であることを明確にする条文なのです。

 

日本語では、次のようなものです。

 

「本契約は、両当事者の完全な合意であり、本契約の主題に関する両当事者の従前の書面または口頭の合意にとって代わるものとする。」

 

正に、「本契約は、完全な合意だ」と書かれていますよね。

 

でも、「完全な合意」とは、一体何なのでしょう?

 

実はこの「完全な合意」とは、英米法の重要な原則である「口頭証拠排除の準則」に関係する言葉なのです。

 

口頭証拠排除の準則とは、「当事者が書面によって契約をし、その中に定められたことが、当事者間の契約上の権利義務について完全かつ最終的な合意を示すものとすることを意図した場合には、その契約書の内容と異なる当事者間の交渉、了解、合意などが、口頭か書面かを問わず、契約書作成以前に存在していたとしても、それらを証拠として持ち出すことは許されない」とする原則です。

 

ちょっと長くて難しい説明ですので、上記を簡単に言うと、

 

書面による完全な合意は、それ以前のあらゆる合意にとって代わる

 

というものです(簡単にまとめすぎかもしれませんが・・・)。

 

そして、ここでいう「完全な合意」とは、「まだ協議中の段階での仮の合意」という合意ではなく、「もうこれで案件を進めましょう!」という完全なもの、という意味です。

 

中途半端な不完全な合意」ではなく、「これで進めよう!」という完全な合意が書面でなされたのなら、そこで扱われている主題については、その契約書で全て言い表されているはずだ。よって、その前の段階での何らかの合意があっても、それらは無視、無視!ということになります。

 

これが、口頭証拠排除の準則です。

 

そして、「この契約書は、完全な合意ですよ!」と契約書に明記することで、この口頭証拠排除の準則がその契約書に適用されやすくするようにしよう、という目的で定められるようになったのが、「完全合意条項」です。

 

もう一度整理すると、以下のようになります。

 

完全合意条項で、「これは完全な合意です!」と明記する。

 

すると、その条文を見た裁判官は、「おっ!これは完全な書面による合意なのか!とすると、この契約書には口頭証拠排除の準則が適用されるな。となると、この契約書締結のあらゆる合意は無視してよいな」となるわけです。

 

もっとも、契約当事者間で、「これは完全な合意です!」と契約書に明記しただけで、それが必ず「完全な合意」と裁判官から判断されるわけではありません。

 

いかにも中途半端な合意内容しか契約書に定められていなければ、「これは完全な合意ではないだろう!」と裁判所は判断するでしょう。

 

そうなると、口頭証拠排除の準則は適用されなくなります。

 

その結果、契約書締結前の口頭・書面での合意等も裁判官が考慮するようになります。

 

なので、完全合意条項を定めたからと言って、必ずその契約書に口頭証拠排除の準則が適用されるわけではありませんが、完全合意条項が定められている方が、裁判所は、「そっか~、契約当事者がそう言っているなら、これは完全な合意なんだろうな~」と考えやすくなるだろう、ということから、完全合意条項が定められるようになったわけです。

 

長い説明になってしまいましたが、結論としては、契約書の解釈で争いになったら裁判官には契約書そのものだけを見て判断してもらいたいので、完全合意条項をしっかりと定めることにしましょう!ということになります。

 

2. 完全合意条項は、法律の適用を排除するのか?

 

時々、この完全合意条項を次のように理解している人がいます。

 

「完全合意条項を定めることで、契約が扱う問題に関しては、この契約だけで完結するのだから、準拠法の適用もなくなる

 

これは正しい理解でしょうか?

 

誤りです。

 

上記に記載した完全合意条項は、法律の適用までも排除していません

 

あくまで、契約書が、契約締結前の合意にとって代わるだけです。

 

なので、「完全合意条項を定めれば、準拠法は定めなくてよい」とか、「法律の適用がなくなる」ということにはなりません。だって

 

 

3.完全合意条項を定めると、契約書を修正できなくなるのか?

 

また、完全合意条項も口頭証拠排除の準則も、契約締結後に、当事者間でその契約書を修正することを禁止しているわけではありません

 

契約当事者は、契約締結後に契約書を修正することができます。

 

ただ、簡単に契約書を修正できるとなると問題です。

 

だって、一担当者同士で勝手に契約書を変更されたら困りますよね?

 

そこで、契約書の修正方法については、契約当事者の正当な権限を持つ代表者同士が文書に署名しないといけない、と定められるのが一般的です。

 

よって、完全合意条項とセットで、以下のような修正条項を定めることが多いです。

 

「本契約は、両当事者の正当な権限を有する代表者による書面の合意なくして、修正または変更することはできない。」

 

この修正条項(Amendment)も、契約書における一般条項です。

 

4. 完全合意条項と修正条項の英文

 

This Agreement constitutes the entire agreement between the parties with respect to the subject matter hereof, and supersedes all prior agreement, discussions and understandings with respect to the subject matter hereof. This Agreement may not be amended, changed or modified unless confirmed in writing signed by the duly authorized representative of each of the parties hereto.

 

  • constitute

~を構成する

 

  • the entire agreement

完全な合意

 

  • supersede

~にとって代わる

 

  • amend

~を修正する

 

  • the duly authorized representative

正当に権限を与えられた代表者

 

 

5. 穴埋め式練習

 

では、英文について、穴埋め式で練習してみましょう。下の問題の英文の空欄部分を、訳を参考にして埋めてください。答えはさらに下の英文中の黄色部分です。

 

これを何度か繰り返すことで、完全合意条項と修正条項で使われる用語を身に着けることができるようになります。

 

問題:

This Agreement constitutes the [entire] agreement between the parties with respect to the subject matter hereof, and [supersedes] all [prior] agreement, discussions and understandings with respect to the subject matter hereof. This Agreement may not be [amended], changed or modified unless confirmed in [writing] signed by the [duly] authorized [representative] of each of the parties hereto.

 

訳:

本契約は、両当事者の完全な合意であり、本契約の主題に関する両当事者の従前の書面または口頭の合意にとって代わるものとする。本契約は、両当事者の正当な権限を有する代表者による書面の合意なくして、修正または変更することはできない。

 

回答:

This Agreement constitutes the [entire] agreement between the parties with respect to the subject matter hereof, and [supersedes] all [prior] agreement, discussions and understandings with respect to the subject matter hereof. This Agreement may not be [amended], changed or modified unless confirmed in [writing] signed by the [duly] authorized [representative] of each of the parties hereto.

 

【一般条項の解説の目次】

一般条項の解説

総論

 

完全合意条項・修正条項

契約に関する事項については、契約書にすべて定められている旨を定める条項

(正確には、口頭証拠排除の準則が適用されやすくするための条文)

および

契約書を修正・変更するための条件を定める条項

定義条項その① 定義条項の必要性

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

無効な部分の分離条項

契約書中のある部分が無効と判断された場合、残りの部分は有効である旨を定める条項

定義条項その② 定義条項の注意点

契約書中で使われる文言の意味を定義する条項

権利放棄条項

ある事項について権利を保持する当事者がその権利を行使しなかった場合でも、その権利自体を放棄したものと解釈されないことを定める条項

準拠法

契約条文を解釈する際に適用する法律を特定するための条項

見出し条項

契約書中の条文のタイトルには法廷拘束力はなく、条文の解釈に何ら影響を及ぼすものではない旨を定める条文

紛争解決条項

契約に関する紛争を解決するための方法を定める条項

一般条項がわかるようになると得られるメリット

通知条項

契約に関して必要となる通知の宛先を定める条項

全ての一般条項を必ず定めないといけないのか?

契約期間

契約の有効期間を定める条項

権利義務の譲渡制限

契約上の権利義務を第三者に譲渡することを制限する条文

役に立つ英文契約ライティング講座

義務を定める方法 ④shall be required to doとshall be obliged to doの問題点 義務違反の場合を表す方法
権利を定める方法 英文契約の条文は能動態で書くとシンプルかつ分かりやすい英文になる!
shall be entitled to doとshall be required to do 第三者に行為をさせるための書き方

上記は、本郷塾の5冊目の著書『頻出25パターンで英文契約書の修正スキルが身につく』の24~30頁部分です。

英文契約書の修正は、次の3パターンに分類されます。

①権利・義務・責任・保証を追記する→本来定められているべき事項が定められていない場合に、それらを追記する。

②義務・責任を制限する、除く、緩和する→自社に課せられている義務や責任が重くなりすぎないようにする。

➂不明確な文言を明確にする→文言の意味が曖昧だと争いになる。それを避けるには、明確にすればいい!

この3つのパータンをより詳細に分類し、頻出する25パータンについて解説したのが本書です。

 

本書の詳細は、こちらでご確認できます。

英文契約書をなんとか読めても、自信をもって修正できる人は少ないです。

ぜひ、本書で修正スキルを身につけましょう!きっと、一生モノの力になるはずです!

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基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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