仕様については完全な理解を目指そう! 売買・製造物供給契約の検討方法②

      2017/03/06

 

「売主が仕様に合致した製品を用意する段階」の条文

 

売買契約を締結後、真っ先に生じるイベントは、売主が買主に引き渡すべき製品を出荷のために準備することでしょう。

 

この段階についての条文は、概ね以下のように定められています。

 

「本契約の条件に従って、売主は、添付に定める仕様書に合致する製品を買主に売り渡し、引き渡すことに同意し、買主は、これを売主から買い受け、引き渡しを受けることに同意する。」

 

この種の条文は、売買契約では、第1条の定義条項の次、つまり、第2条に定められていることが多いです。

 

そしてこの条文の一番のポイントは、下線部分の「添付に定める仕様書に合致する製品」という箇所です。

 

当然ですが、買主は、ある特定の製品が欲しいのです。仮にその製品をAとすると、Aに似た製品A´でもないし、Aよりも性能が優れているかもしれないBでもなく、間違いなくAそのものが欲しいのです。

 

この、「売買契約の対象となっている製品」を売主が勘違いして別のもの、つまり、A’やBと捉えてしまうと、契約に定められている買主が欲する製品ではないものを準備してしまうという事態が生じ得ます。

 

そんなことが起きれば、当然、売主は再度製品Aを作って買主に提供しなければならなくなります。しかもそれは、売主の費用負担です。

 

その結果、売主は利益を出すどころか、その案件は完全な赤字になります。

 

また、製品を取り違えるというところまではさすがに起きなくても、例えば求められている性能を間違えるとか、または製品の寸法を間違えたという場合にも、同様の問題が生じます。

 

売主は、とにかく、契約書で「売主が引き渡すべき製品」とされている製品を準備しなければならないのです。

 

そのためには、契約書に定められている仕様書を売主の方で完全に理解する必要があります。

 

おそらくそれは、営業部門や法務部門の方の仕事ではなく、主に技術部門の方の役割となるでしょう。

 

よって、契約書に添付される製品を特定する仕様書部分のチェックは、技術部門の方にしっかりと行ってもらうようにする必要があります。

 

 

この条文の重要性について

 

この点、「製品を取り違えたり、性能や寸法を勘違いしたりすることなんて、ありえない!」と思われる方もいらっしゃると思います。

 

そうです。

 

本来、そんなことはあり得ないことでなければなりません。

 

しかし、世の中では、実際に起きているのです。

 

特に、初めてその製品を作る、という場合には、仕様書の読み込み方も難しく、やや理解しにくい部分もあるでしょう。そんなときに気を付けたいのが、「いつも作っているあれと同じ要領で解釈すればよいのだろう」と思ってしまい、自分がよく理解できない仕様の部分について、勝手に推測してしまうことです。

 

その結果、仕様書に記載されている事項を解釈する際に、当事者間で食い違いが起きてしまうことがあるのです。

 

つまり、買主は、仕様書のある部分をCと理解しているのに、売主はDと理解してしまっている、という状況です。

 

それを防ぐために、売主は、仕様書の記載に不明確な点があったら、契約締結前に迷わず買主側に確認しましょう。そうすることで売主は、「自分たちが買主に納めなければならない製品の仕様については、何の疑問もない状態」にまでもっていく必要があります。それを怠ると、後で買主との間で仕様書の記載の解釈を巡る争いに発展してしまいかねません。

 

その意味で、このわずか数行の条文、特に「添付に定める仕様書に合致する製品」という部分は20文字にも満たない部分ですが、売買契約における超重要ポイントと言えると私は思います。

 

「売主が仕様に合致した製品を用意する段階」の英文契約における条文

 

なお、この条文の英文は、以下のようなものになります。

 

The Seller agrees to sell and deliver to the Purchaser and the Purchaser agrees to purchase and take delivery from the Seller the Product set forth in the Attachment hereof in accordance with the terms and conditions under this Agreement.

 

訳:「本契約の条件に従って、売主は、添付に定める仕様書に合致する製品を買主に売り渡し、引き渡すことに同意し、買主は、これを売主から買い受け、引き渡しを受けることに同意する。」

 

この英文では、下線部分のthe Product set forth in the Attachment hereofが、上記でお話しした「添付に定める仕様書に合致する製品」に該当します。

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