英米法と日本の法律の最大の違い~契約違反とは?~

      2019/11/06

英米法とは、英国や米国の法律です。それらと日本の法律との間には、もちろん色々な違いがあるでしょう。国が違えば法律が違うのは当然です。

 

その中には、ずっと日本の法律を学んできた人にとっては、にわかには信じがたい違いもあります。

 

それは、「契約違反」に陥るのはどのような場合か?という点です。

 

日本では、契約違反と認められるためには、単に契約上の文言に従わないというだけではなく、義務を負っている当事者の故意または過失が必要となります。これを「過失責任の原則」と呼びます。

 

例えば、売買契約で売主が納期までに製品を買主に引き渡すことができない場合、そのことに売主に過失があれば、売主は契約違反として買主に損害を賠償しなければならないことになります。反対に売主に過失がなければ、納期に遅れてもその責任を問われないのです。

 

一方、英米法では、売主に過失があろうがなかろうが、とにかく納期に遅れたら契約違反です。そして売主は買主に損害を賠償しなければならなくなります。

 

つまり、英米法は、「無過失責任」です。これは「厳格責任(strict liability)」とも呼ばれます。

 

では、上記のような違いがあるために、EPC契約のコントラクター(請負者)として契約書をチェックする際には何に気を付けなければならないでしょうか。

 

それは、英米法に従う契約書においては、「コントラクターに原因がない事象によって工程が遅れた場合には、コントラクターは納期を延長してもらえる」ということを明記しておかなければならない、ということです。

 

なぜなら、英米法においては、とにかく契約書に定められている納期に遅れたという事実だけで、その理由を問わず、コントラクターが責任を問われることになるからです。しかし、コントラクターとしては、自分に原因がないのに納期に遅れた場合には責任を負いたくないでしょう。

 

そこで、例えば、Force Majeure(不可抗力)とか、法令変更の場合等、コントラクターに原因がない場合を契約書に列挙し、それらに該当する事象によってコントラクターの工程の進捗が妨げられた場合には、コントラクターはその妨げられた分について納期が延長される旨を契約書に定めることが重要となります。

 

ここで重要なのは、「納期が延長される場合は具体的に記載しないといけない」ということです。本来は無過失責任として納期に遅れればコントラクターは責任を問われる立場にあるので、その責任を免れることができる範囲については狭く解釈される傾向があると思われます。そのため、「この場合は納期が延長される」という事象は個別に列挙することをお勧めします。

 

実際、EPC契約の様々なモデルフォームには、上記の様な「納期が延長される場合」が具体的に列挙されております。それらを参考にしながら契約書をチェックするとよいでしょう。

約因(consideration)とは何か?~英米法における契約成立条件~

 

 - EPC契約関係