責任上限と逸失利益のどちらが重要か?(その➂~結論~)
前回と前々回の記事で、責任上限条項の意味が大分クリアになったかと思います。
そこで、改めて、「責任上限条項と逸失利益の免責のどちらが重要か」を考えてみましょう。
特に前々回の記事からわかるのは、「契約金額の100%を上限とすることは、売主にとってそこまで歯止めになっていない」ということです。
契約金額の100%までの賠償をいざしなければならないとなったら、相当な損失を被ることになるのです。
決して「トントン」などという言葉で片づけられるようなものではありません。
契約金額の100%というのは、簡単にイメージするなら、「受注した案件をはじめからもう一度全てやり直す場合に生じる金額」です。
これって、かなり大きな金額ですよね?
普通に考えたら、相手にこんな巨大な損害を被らせる場面は、そうはないように思えます。
もしもあるとすれば、それは、よほどの欠陥を含んだ製品を納入することになった結果、相手に巨大な逸失利益を生じさせることになる場合ではないでしょうか。
つまり、逸失利益を免責してもらえるなら、売主の損害賠償責任が契約金額の100%を超えるようなことになる場合は、あまり生じない、とは思えないでしょうか。
私の経験でも、「責任上限条項があったお陰で、損害賠償金額を抑えられた」という事例はなかったように思います。
逆に、「逸失利益が免責されていたよかった・・・」と感じられたことは何度かありました。
したがって、両方定めるに越したことはありませんが、もしも責任上限と逸失利益の免責どちらか片方だけ定めるのだとしたら、原則として逸失利益の免責の方を選んだ方がよい場合が多いように思われます。
もちろん、上記は1つの考え方です。
結局は、売買の対象となる製品や契約違反の内容によります。
個別の案件でどちらか一方だけ定めるとなった場合には、売買の目的となる製品の性格や自社で過去に遭遇した契約違反事例などを参考に、どちらを定めるべきかよく検討したうえで選んでいただければと思います。