英文契約書で「~に定められている」「~に記載されている」とは?

      2020/01/30

 

今回は、「~に定められている」「~に記載されている」(以下、「~に定められている系」といいます)という表現についてご紹介したいと思います。

 

この表現は契約書中で本当によく使われます。

 

どの程度使われているかと言いますと、例えば、ENAAという全部で73ページある契約フォーム中では、合計で135回この表現が出てきます。これは、mayが出てくる回数である127回を上回ります。契約書が、当事者間の権利義務を明確に定める文書だということから、義務を表すshallや権利を表すmayが使われる回数が多いことはみなさん容易に想像がつくかと思いますが、そのmayを上回るということは、如何にこの「~に定められている系」の表現が契約書中によく出てくるかを表している、と言えるのではないでしょうか。

(ちなみに、shallが使われている回数は486回です。このことからも、契約書は、当事者の義務の記述で埋め尽くされている文書であることもご理解いただけるかと思います。)

 

 

頻出する理由

 

でも、どうして契約書中では、この「~に定められている系」の表現がこんなにも多く使われるのでしょうか。

 

上記のように、契約書は、「当事者間の権利義務、特に義務を数多く定める文書」です。つまり、当事者がしなければならないことがたくさん書き連ねられていると言えます。そしてその当事者の義務は、具体的には以下のような表現で記載されます。

 

「○○は、本契約書の第3条に定められている支払条件に従って、契約金額をまでに支払わなければならない。」

 

「○○は、本契約に添付される仕様書に記載されているスケジュールに従って作業を履行しなければならない。」

 

「本契約に定められているいかなる条文にも関わらず、○○が本契約に関して負う責任は、契約金額の100%を上限とする。」

 

といった感じで、契約書では、「当事者は、ある事柄が詳細に記載されている条文または仕様書等に従ってある行為をしなければならない」という書き方をすることが多いのです。

 

これが、契約書で「~に定められている系」の表現が多く使用される理由です。

 

また、例えば、契約金額を支払わない顧客がいたとします。その場合、当社はいきなりその顧客を訴えるのではなく、何度か支払を催促するレターを顧客に出すことになります。

 

その際には、単に「契約金額を支払ってください」ということをレターに書くのではなく、「契約書の○条に定められている支払条件に従って支払いがなされていないので、直ちに支払ってください」と書くでしょう。やはりここでも、「~に定められている」という文言が使われるのです。

 

 

使用頻度と使用例の紹介

 

では、この「~に定められている系」には、具体的にいかなる表現があるのでしょうか。以下にその主な表現、その使用例およびその訳の一覧をご紹介します。

 

表現 使用例とその訳
…specified in the test(s) specified in Appendix 7

添付資料7に定められている試験

…provided in approval of design provided in Article 20

第20条に定められている図面の承認

…stated in all the conditions stated in Article 11

第11条に定められている全ての条件

…described in any test not described in this contract

この契約に定められていない試験

…listed in the documents listed in Article 1.1

第1.1条にリスト化されている図書類

…stipulated in interest stipulated in Article 12.3

第12.3条に定められている利息

…set forth in the period set forth in this contract

この契約書に定められている期間

…prescribed in the conditions prescribed in Article 6

第6条に定められている条件

…defined in payment schedule defined in Appendix 5

添付資料5に定められている支払スケジュール

 

表現は色々あるものの、どれも、「~に定められている系」だと覚えておいていただければ、英文契約を読む際に役に立つと思います。

 

ちなみに私は、できるだけspecified inかset forth inを使うと決めています。「自分はこれを使う!」と決めておくと、いざ自分でドラフトするときに、迷わずに済みます。

 

 

 

ちょっと一息 コラム集~お昼休みや休憩時間にお読みください~

大失敗する案件の特徴と取るべき対策 完璧主義の人が陥る罠 夢がなくても遠くまで行ける
たくさんの仕事に埋もれそうなときの対策 よいアイデア・企画を思いつくためにすべきこと チャンスはピンチの裏に隠れてやってくる
道を変えることは負けではない 優秀な人が成長できなくなる理由 悪を知らねば勝利は覚束ない

【英文契約の典型的な条文に用いられる表現のまとめ】

1.英文契約の条文の骨子となる表現 2.英文契約の条文の骨子に付随する頻出表現
(1)権利

(2)義務(作為義務禁止

(3)契約に違反する重大な契約違反

(1)~に定められている

(2)~に従って

(3)~に関して

(4)~に関わらず

(5)~を除く

(6)~の範囲で

(7)~の場合

(8)~を含むがそれに限られない

3.英文契に定められる重要な事項
(1)義務の履行

(i)~を履行する

(ii)~を満たす

(2)責任

①損害賠償

(i)(損害)を被る

(ii)liquidated damagesliquidated damagesとpenaltyの違い

(iii)責任上限

(iv)逸失利益

間接損害と逸失利益

Notwithstandingと責任制限の重要な関係

(iv)故意・重過失重過失と結果の重大性の関係

(v)遅延利息

②瑕疵担保(保証)

(i)保証する

(ii)瑕疵を修理・交換

第三者への損害

(i)indemnifyとbe liable for

(ii)indemnifyとdefend

契約解除

 

【英文契約の条文をドラフトする際に知っておくと便利なこと】の目次

ごあいさつ 名詞よりも動詞で書く
12個のルール 名詞よりも動詞で書く練習
良い条文とは? there is~、it is ~to doを使わない
権利ではなく、義務を中心にして書く! ofを削除する
義務を中心に書く練習 ofを削除する練習
不要なshallを削除する here-を使って書く
不要なshallを削除する練習 「~に従って」を使って書く
能動態で書く 「~に従って」を使って書く練習
受動態の条文を能動態に直す練習 原則と例外を表す表現を使う
主語・動詞・目的語を一塊に! 原則と例外を表す表現を使いこなす練習
英文契約の条文の基本類型を覚える 英文契約の条文の基本類型を使いこなす練習

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得