契約書に添付される仕様書(スペック)の英語表記と重要な3つの役割は?

仕様書とは?
これは、売買契約や請負契約において、売主が製造する製品が満たすべき基準が記載される技術的な文書を指すのが通常です。
これは契約書に添付されるのが通常です。
よって、この仕様書は、契約締結時に売主と買主間で合意されていなければなりません。
この仕様書は、英語で「specifications」と記載されます。
最後にsが付くのが通常です。
略してスペックと呼ばれることも多いです。
仕様書も契約書!
仕様書は、契約書の本文に添付されている文書なので、一見、契約書とは別物と考える人もいるかもしれません。
しかし、それは誤りです。
仕様書は、契約書の一部です。
よって、契約書本文に記載されている条文と同様に、契約当事者を法的に拘束します。
つまり、もしも仕様書の記載に違反した場合には、契約違反として相手方に損害賠償責任を負うことになります。
仕様書の3つの役割
上記で定義された仕様書の3つの役割を押さえておきましょう。
①契約締結まで:契約金額の見積もりの基準
売主は、この仕様書に基づいて製品を製造するためにかかる費用を見積もった上で買主に契約金額を提示します。
②契約締結後~検収まで:売主が提供するべき製品の基準
契約締結後は、売主は仕様書に記載されている内容を満たす製品を買主に提供する義務を負います。
検収のための試験では、この仕様書を満たしているかどうかが合否の基準となります。
➂検収後:契約不適合の有無の基準
製品が仕様書に合致していない部分が発見されれば、売主は契約不適合責任を負います。
具体的には、不適合部分の無償での修理・交換などしなければならなくなります。
以上からわかる通り、仕様書の記載は明確でなければなりません。
不明確では、
①見積もり金額に影響が出ますし、
②売主が買主に提供する製品の基準が曖昧となり、
➂さらには契約不適合責任を売主が負うのか否かも判断がつかなくなります。
仕様書の文言は争いの原因となることが多い!
実は、仕様書の記載はよく争いの原因になります。
頻度は、契約書本文の文言の場合よりも、ずっと多いです。
特に、契約不適合に当たるかどうかの際に、仕様書の記載が不明確であったということが後で判明することがよくあります。
よって、技術部門の方は、仕様書は、できる限り明確に定めるように注意しましょう。
ちなみに、仕様書は、契約書本文とは別々に作成・交渉されることが通常です。
この理由は、契約書本文は主に営業・法務部門の役割であるのに対し、仕様書は主に技術部門の役割であるので、それぞれ分かれて並行して交渉・作成する方が効率的であるためと思われます。
仕様書(specifications)と関連する記事と動画解説
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以下の契約について解説しています!
①製造委託契約(モノを作って引き渡す契約):メーカーであれば必須の契約です。
②秘密保持契約:企業が何かの取引を行う際にはほぼ必ず結ばれる契約です。
➂共同研究契約:メーカーが他社と共同で研究する際に結ばれる契約です。
④ライセンス契約:技術を保有する企業が相手方に技術の使用(実施)を許諾する契約です。
⑤販売店契約:販売提携契約の1つです。
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