契約における「権利と義務の関係」と「義務と責任の違い」とは?
契約における権利と義務とは、「表裏一体の関係」にあるといえます。
言い換えると、「自社の義務」=「相手の権利」です。
以下では、「権利とは?」「義務とは?」、「義務と責任の違いとは?」、
そしてこれらの具体例を示しつつ、「権利と義務が表裏一体の関係」にあることを示し、
また、そのことから言える「契約書をチェックする際に持つべき意識」についても解説します。
1.権利と義務
「契約書」というと、びっしりと難しいことが羅列されている文書というイメージが強いです。
しかし、契約書に記載されていることは、大きくは次の3つです。
① 各当事者の義務
② 各当事者の権利
③ 義務に違反した場合の責任
まず、①各当事者の義務とは、「その当事者がしなければならないこと」です。
売買契約でいえば、「売主が買主に製品を引き渡すこと」や「買主が売主に対価を支払うこと」などです。
次に②権利とは、「その当事者が相手方当事者に求めることができること」です。
売買契約でいえば、「売主が買主に対価を支払うように請求できること」や「買主が売主に製品を引き渡すように求めること」です。
2.権利と義務の関係
義務と権利は、表裏一体の関係にあります。これは、次のような意味です。
まず、「製品を引き渡す」という行為を見てみましょう。
売主からしてみると、これは義務です。
売主が買主に製品を引き渡さなければいけないからです。
一方、買主からしてみると、これは権利です。
買主は売主に製品を引き渡すように求めることができるからです。
また、「対価の支払い」を見てみましょう。
買主からしてみると、これは義務です。
買主が売主に支払わなければならないからです。
一方、売主からしてみると、これは権利です。
売主は買主に対価を支払うように求めることができるからです。
いかがでしょうか?権利と義務が表裏一体の関係にある、ということの意味がわかりましたでしょうか?
3.契約書への権利と義務の定め方
そして、契約書では、ある行為について、義務の形で書いても、権利の形で書いても、どちらでも大丈夫です。
ただ、通常は、次のように「義務」の形で書くことが多いです。
・「売主は、製品を買主に引き渡さなければならない」
・「買主は、対価を売主に支払わなければならない」
そして、ある行為について義務で定めたならば、加えて権利の形で書く必要はありません。
逆に1つの行為について義務と権利の両方で定めたら、とても冗長に感じられ、どちらか削除するように求められるくらいです。
こうしてみると、自社の義務=相手の権利ともいえます。
4.義務と責任の違い
最後に、➂責任とは、「義務を果たさない場合に、その当事者が相手方にしなければならなくなること」です。
つまり、義務違反によって、違反した者は相手に対して責任を負うのです。
たとえば、売買契約で売主が買主に製品を引き渡すという義務を負っているのに、それを果たさない場合には、売主は買主が被った損害を賠償する責任を負う旨が定められるのが通常です。
いくら明確に義務を定めても、それに違反した者が何も責任を取らなくて済むのなら、「違反し放題」になってしまいます。
よって、義務を定めたら、その義務に違反した場合の責任を定めることが重要となります。
責任の主なものは、損害賠償責任です。
5.契約書を読む際に持つべき視点
契約書に定められているのは①義務、②権利、そして➂義務違反の責任と初めに述べましたが、①自社の義務=②相手方の権利と考えると、実質的には義務と義務違反の責任という2つのことが主に定められていると考えてもよいでしょう。
以上から、契約書を読む際に持つべき視点は次のように整理できます。
①自社の義務と記載されている事項について、自社はそれを果たす能力があるか?
→ないなら、修正または削除
②相手にしてほしいと思う事項について、相手の義務または自社の権利として定められているか?
→ないなら、追記
➂自社の義務違反の責任は重すぎないか?
→重すぎるなら、修正
④相手の義務違反の責任は軽すぎないか?
→軽すぎるなら、修正
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