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損害賠償案件を担当する人が知っておくべきこと

2024/01/05
 

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企業法務の方に限らず、営業部門や技術部門の方も、他社から損害賠償請求を受けたり、逆に自社から損害賠償を請求したり、という案件を担当することがあると思います。

 

私も、何度もあります。

 

何度か経験すれば進め方にはなんとなく慣れてきますが、初めてだと、勝手がよくわからなかったりしますよね。私もそうでした。

 

そこで今回は、はじめて損害賠償等の紛争案件を担当することになった人に、ぜひ知っておいていただきたいことをまとめてみました。

 

企業が実際に裁判や仲裁といった紛争解決手続きに入ることは滅多にない!

 

実は、企業が他の企業と裁判や仲裁といった紛争解決手続きに入ることは、滅多にないと言ってよいと思います。

 

私は、10年間企業法務として働いている中で、紛争案件を担当した経験はたくさんありますが、裁判・仲裁・調停という紛争解決方法を使うまでに至ったのは、合計4回だけです。

 

また、私の周りには、入社後に一度も裁判・仲裁・調停に関わったことがない、という法務担当もいます。

 

私の感覚では、契約について生じた争いの90%以上は、当事者間の話し合いで解決されます。

 

では、どうして企業は、当事者間の協議で解決させようとするのでしょうか?

 

それは、まず、裁判や仲裁は、解決までに年単位の時間がかかることが考えられます。その間、外部の法律事務所に相談することで生じる費用や、社内の法務部門・その他関係するプロジェクトの営業・技術担当者は、証拠集め等に膨大な時間・労力を取られます。通常は、「そのような時間・費用等をかけたくない」と企業は考えるのです。

 

さらに、相手の会社が同じく日本の会社である場合に特に当てはまりますが、将来のその会社との関係を考えて、穏便にすませようとします。「裁判等に持ち込んだら今後の取引はなくなってしまうのではないか?」と考え、お互いに、あるいはどちらかが一方的に譲歩して、なんとなく解決させる、ということが多いのです。

 

 

裁判や仲裁の手続きに入りたくないと考えているのは、あなたの会社だけではなく、相手方も同じ!

 

ここで重要なのは、相手の企業も、裁判や仲裁に余計な時間と労力をかけたくないのです。事業を前向きに発展させることに力を注ぎたいのです。損害賠償案件なんて後ろ向きな話は、営業担当も技術担当も、さらには法務担当だって、できれば関わりたくないというのが本音です(もちろん、中には、「そういうのが大好き!」という人もいますが、間違いなく少数派です)。

 

そして、特に相手方が日本の会社であれば、やはり、あなたの会社との関係を壊したくない、と強く思っているはずです。

 

紛争案件では、「裁判や仲裁にはもっていきたくない」という気持ちを相手に悟られたら負け!逆に相手に強くそう思わせるように活動するべき!

 

相手からあなたの会社に対して損害賠償を請求する場合でも、あなたの会社から相手の会社に請求する場合でも、あなたの会社が相手に対して、「うちは、裁判や仲裁にはしたくないんです」と言ったら、どうなるでしょうか?

 

相手は強気でくるはずです。

 

「うちは絶対に払わない!」とか「絶対○円払え!」などと言ってきます。

 

そしてこう付け加えるでしょう。

 

「裁判になったっていいんだよ。うちは負ける気がしないんだから」

 

その結果、「裁判に行きたくない」と考えているあなたの会社の方が譲歩していくことになります。「これだけ払うので、裁判に行くことだけはやめてください」とか、「せめてこの金額だけ払っていただければうちはいいんです」といった感じで、相手に哀願する形となります。

 

こうなったら、もうあなたの会社の負けです。

 

上記2で述べましたが、相手も、ほぼ100%の確率で、「できれば裁判や仲裁に行きたくない」と考えています。あるいは、そう考えさせる余地があるのです。

 

それなのに、あなたの会社が先に弱気になり、それを悟られると、相手に付け込まれるだけです。

 

なので、あなたの会社が正しいと考えている場合はもちろん、やや不利だと考えている場合でも、決して「裁判や仲裁にはいきたくないんです。それだけはやめてください」なんて哀願は絶対にしないようにするべきです。これはその案件に関わるメンバー全員で共有したほうがよいと思います。

 

言ってみれば、紛争案件は、「チキンレース」のようなものです。

 

「裁判や仲裁に行きたくない」と強く思っている方が負けです。裁判や仲裁を避けるために譲歩させられることになります。

 

あなたの会社がその紛争を有利に進められるかどうかは、如何に相手に「裁判や仲裁にはいきたくない」と思わせることができるかにかかっています。

 

では、どうすれば、相手にそのように強く思わせることができるでしょう?

 

それは、相手に、「裁判や仲裁に行けば、自分たちの主張そのものは認められないかもしれない」と思わせることです。

 

あなたの会社が損害賠償を請求されている方であれ、請求している方であれ、要はこれです。相手に何かしらの不安を与えることです。

 

あなたの会社の主張が100%正しいと思わせることができれば、それはそれに越したことはありません。しかし、それができないまでも、相手に、「もしかしたら、自分たちの主張は間違っている可能性があるかも」と少しでも思わせることは、結構有効なはずです。

 

なぜなら、上述のように、裁判や仲裁に行くと、相手も膨大な労力を費やさないといけなくなるからです。絶対に自分たちが勝てると思えていれば、そのような労力もいとわないかもしれません。しかし、「絶対に勝てるわけではないかもしれない」と思わせることができれば、相手方は何らかの譲歩をして、裁判や仲裁に行かずに済む道を探ろうとしてくる可能性があります。

 

そのための方法として私が心がけていたのは、以下の5つです。

 

(1)   相手が納得できる、あるいは、相手が「自分の主張は100%正しいとはいえないかもしれない」と思うような「証拠」を整理して出す!

 

自社が相手の会社に何らかの理由で損害賠償を請求する場合によくあるのが、単に相手方に、「当社は○円の損害を被りました。よって、そのお支払いをお願いします」という通知をすることです。

 

しかし、このような通知を出しただけですんなりと支払ってくれる会社を、私は今まで見たことがありません。

 

その理由の多くは、「本当にその損害の原因が相手方にあるのか、または、それだけの損害を被ったのかという証拠が示されていないから」です。

 

これは、立場を逆にして、自社が損害賠償の支払いを請求された場合を考えてみればわかると思います。

 

単に「○円支払え」という通知が来ただけで、「あー、そうか!支払わないといけないな!」と思う人がいるでしょうか?

 

まずいません。

 

おそらく、社内では、「本当にうちが悪いのか?」または、「本当にこんなに損害がでたのか?」という疑問の声が上がり、「証拠を出してもらおう」という話になるはずです。

 

そして、もしもその証拠が示されなければ、決して支払わないでしょう。

 

よって、あなたの会社が相手に損害賠償を請求する際も、その詳細な証拠を示す必要があります。

 

その証拠のレベルは、「確かに自分がこれを見たら、この金額を支払わないといけないな、と思うようなもの」である必要があります。

 

この理由も、結局は、「相手方が納得できないと支払うことができないこと」にあります。

 

相手方は、本当に自分たちが原因であなたの会社に損害が発生しており、請求されている金額が本当に根拠のあるものであれば、裁判等にかけられ、最後は支払わなければならなくなることを十分知っています。

 

よって、理由もなく支払いを拒むことは、通常はありません。

 

支払いを拒むほとんどの理由は、「本当に自分たちが悪いのか、悪いとして、本当に請求されているだけの金額の損害を被っているのか?」がわからないことにあります。

 

まず、「証拠しかも客観的に理解できるような証拠がないと、相手は1円だって支払ってくれない」という事実を理解していただきたいと思います。

 

 

(2)   自社に有利な判例を示す!

 

企業間の争いにおいて、まだ当事者間の話し合いの段階にある場合、私の経験では、あまり判例を示してくる企業は少ないように思います。

 

おそらくその理由は、判例を調べるのが面倒くさいとか、まだ法務担当に相談していない等が考えられます。

 

そのようなとき、あなたの会社から、判例に基づいた主張をしてきたら、相手は相当驚くと思います。

 

あなたの会社の、この紛争への本気度を感じるはずです。

 

「もしかして、裁判もいとわない覚悟を持っているのか?」とも思うかもしれません。

 

もちろん、判例など必要ない案件もあると思いますので、ここで言っているのは、判例があるようなら判例を示すことに躊躇するべきではない、ということです。

 

そして、世の中には、最高裁の判例はまだ出ていないが、地裁や高裁レベルの判例はある、という事案もたくさんあります。

 

その場合には、その地裁や高裁レベルのものでも示すべきです。それにより、相手はよりこちらの準備が大分進んでいると感じさせることができるかもしれません。

 

 

(3)   相手が自社に不利な判例を示してきたら、どんなに小さな点であっても、判例の事案と今回の事案の差を見つけて指摘する!

 

もしかすると、相手からあなたの会社に不利な判例を示してくることもあるかもしれません。その場合にすべきなのは、判例の事案との違いを見つけ、「判例の事案と今回の件は違う。実際に裁判になれば、この判例は今回の件には適用されないはずだ」と主張することです。

 

実際、世の中に、全く同じ事案は存在しません。

 

よって、「事案が異なる」という点を主張することは可能なはずです。

 

 

(4)   「証明責任はどちらにあるか?」をよく調べる!

 

裁判や仲裁では、証明責任というものがあります。

 

紛争において重要なのは、「真実がどちらなのか」ではなく、「真実だと思わせるだけの証明を示すことができたかどうか」です。

 

仮に相手の主張が真実であったとしても、相手が証明できない場合には、あなたの会社の勝ちです。

 

ここで注意したいのは、相手に証明責任がある事実について、あなたの会社が「その事実がないことを証明できない」という理由で、相手の主張を認めてしまったりしないことです。

 

相手に証明責任がある事実は、相手が証明できなければ、なかったことになるのです。

 

なので、損害賠償案件等の紛争が始まったら、まず、「自社は何をどれだけ証明できればよいのか?」をよく調べるようにしましょう。

 

そして、相手に証明責任がある事項については、堂々と、「証拠出してください」と言いましょう。もしもその証拠が出ないなら、「それじゃあ裁判ではその事実はなかったことになりますよ」と言いましょう。

 

そうすることで、相手に、少しずつ、「裁判行ったら負けるかも」「100%は勝てないかも」と思わせるのです。

 

 

(5)   「勝てないまでも、少しでも自社を有利にする方法はきっとある」と信じる!

 

これは精神論です。

 

企業間の紛争は、0か100かではなく、両方にある程度の原因がある、ということが多いように思います。

 

なので、仮に自社に不利に見える場面であっても、相手の主張を丸々認める、というのではなく、「少しでも自社に有利にできないか?」「少しでも負担額を減らせないか?」という目で案件に当たるべきだと思います。そういう目で見たときに初めて気が付くことができるものもあるかもしれません。

 

それを見つけることができれば、あとは「自分たちは、裁判や仲裁に行ったっていいんだよ」という雰囲気で、堂々と相手方と協議するべきです。そうすることで、相手からの何らかの譲歩を引き出すことに繋がります。

 

 

最後に

 

そうはいっても、企業では、以下のようなことが起きます。

 

「相手との今後の関係を考えて、今回は当社から折れる。裁判にされたくないから、相手の請求を全額認める」

 

社内で、しかるべき人がそう判断するのなら、それはやむをえません。

 

ただ、紛争が勃発していきなり上記のような判断が下ることはなく、その前には、それなりに相手方との協議の期間があるはずです。

 

繰り返しになりますが、その期間内に、相手に「自分達の主張が100%正しいとは言い切れないかも・・・」と少しでも思わせるようにし、何らかの譲歩を引き出すようにすることが、紛争案件の担当になった人のするべき仕事であると思います。

 

この記事が、はじめて損害賠償案件の担当になった方に少しでも役立てていただければ嬉しいです。

 

契約交渉の際に気を付けたいこと

 

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具体的には、以下のように分類しています。

第一章 絶対に押さえておきたい英単語

第二章 英文契約の条文の基本的な型を構成する英単語

第三章 秘密保持契約の英単語

第四章 売買・業務委託契約の英単語

第五章 販売店契約の英単語

第六章 共同研究契約の英単語

第七章 ライセンス契約の英単語

第八章 合弁契約の英単語

第九章 M&A契約の英単語

第十章 一般条項に関する英単語

第十一章 その他の英単語

 

なお、どの分野の契約書を読む場合でも、まずは第一章~第4章の英単語を集中的に身につけることをお勧めします。これらの章に掲載されている英単語は、第五章~第九章までのどの種類の契約書にも頻出する英単語だからです。

2.同義語・類義語・反義語の英単語を近くに配置しています。

そのため、それらをまとめて覚えることができます。

バラバラに覚えようとするよりも、記憶に定着しやすいはずです。

3.単語の単純な意味を知っているだけでは業務を行う上では十分とはいえない50を超える単語について、重要事項として解説をしています(P162以降をご参照)。

例えば、liquidated damagesは「予定された損害賠償金額」ですが、これは具体的にどのようなものなのか?という点について、業務を行う上で最低限押さえておくべき事項を記載しております。

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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