製造物責任とは?よくある勘違い5点を押さえればもう大丈夫!
製造物責任とは?わかりやすく解説!
製造物責任とは、製造物にある欠陥が原因で人の生命・身体・財産に損害を与えた場合に、その製造物を製造した者(製造者)が被害者に対して、製造物責任法に基づいて負う責任を指します。
英語では、Product Liabilityとなるので、略してPL法とも呼ばれることもよくあります。
この製造物責任法は、民法の不法行為の特則(特別法)と位置付けられています。
ご存じの通り、民法の不法行為責任は、過失責任の原則を採用しています。
この点、製造物責任の最大の特徴は、「製造者が被害者に対して無過失責任を負うこと」です。
製造物責任に関するよくある勘違い5つ
製造物責任法は全部でわずか6条しかありません。
しかし、誤って理解されている部分が多い法律であると感じています。
製造物責任法は、特にメーカーにとって重要な法律なので、ここでは、製造物責任法に関して以下の「よくある勘違い」を5点、簡単にわかりやすく解説いたします。
勘違いその①:製造物責任法は、不動産にも適用される。
勘違いその②:製造物に欠陥があれば、直ちに製造物責任法が適用される。
勘違いその➂:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、自然人に限られる。
勘違いその④:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、製造物の欠陥からの直接の被害者に限る。
勘違いその⑤:製造業者は無過失責任を負うので、免責されるケースはない。
勘違いその①:製造物責任法は、不動産にも適用される。
製造物責任法は、製造物の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産を侵害した場合に適用されます。
この「製造物」は、「動産」であり、「不動産」は含みません。
つまり、不動産の欠陥が原因で他人に損害が生じたというケースは、製造物責任の対象外です。
もしも不動産の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産が侵害された場合には、下にあるように、民法第717条の「土地工作物責任」が適用されます。
この場合は、工作物の占有者および所有者が無過失責任を負います。
民法第717条第1項
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 |
勘違いその②:製造物に欠陥があれば、直ちに製造物責任法が適用される。
製造物責任法は、製造物の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産を侵害した場合に適用されるので、製造物に欠陥があるだけの段階では、製造業者は製造物責任を負いません。
この場合には、製造業者(製造委託契約の受託者)は、契約不適合責任に基づき、無償でその欠陥(不適合)を修補する責任を負います。
また、製造物にある欠陥が原因でその製造物が爆発した場合でも、その爆発によって他人の生命、身体又は財産を侵害するに至らない限り、製造業者は製造物責任を負わない点にも注意しましょう。
この点は、以下のように、製造物責任法第3条但書に明記されております。
製造物責任法第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。 |
勘違いその➂:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、自然人に限られる。
製造物の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産を侵害した場合に、製造業者が製造物責任を負いますが、ここでいう「他人」には、生身の人間である自然人のみならず、企業、つまり法人も含まれるし、また、国も含まれます。
製造物責任法第三条
製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、その損害が当該製造物についてのみ生じたときは、この限りでない。 |
よって、製造委託契約に基づいて製造業者である受託者A社から引き渡された製品の欠陥が原因でその製品が爆発し、委託者である企業B社の所有する財産が毀損・滅失したというケースでは、委託者B社は被害者として、受諾者A社に対して製造物責任法に基づき、損害賠償を請求することができます。
この点、製造物責任法の立法当時には、小規模企業である製造業者(受託者)が製造した製造物の欠陥によって委託者である大企業が損害を被った場合に、小規模企業に無過失責任を負わせる結果となるのは妥当なのか?という議論もありました。
しかし、最終的には、「被害者」や「他人」という文言には、何ら限定を加えないことになりました。
これにより、自然人のような消費者のみならず、広く被害者保護を図る法律になりました。
ちなみに、民法第709条の不法行為でも、被害者を「他人」としていますが、法人も当然に被害者になると理解されていますよね?製造物責任法もそれと同じように解釈するということになります。
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 |
勘違いその④:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、製造物の欠陥からの直接の被害者に限る。
製造物の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産を侵害した場合に、製造業者が製造物責任を負いますが、ここでいう「他人」には、欠陥から直接的に被害を受けた者のみならず、間接的に被害を受けた者も含まれます。
たとえば、製造委託契約に基づいて製造業者である受託者A社が企業である委託者B社に引渡した産業用工作機械(製造物)の欠陥が原因でその工作機械が爆発し、委託者B社の従業員Cが負傷した場合を考えてみます。
このケースでは、負傷した従業員Cは委託者B社に対して、不法行為または安全配慮義務違反などを理由に損害賠償を請求することができます。
この請求に従い、委託者B社がその従業員Cに対して損害賠償をした場合には、この委託者B社は、「産業用工作機械の欠陥が原因で間接的に経済的な損害を被った」といえます。
よって、この委託者B社は、間接的な被害者として、製造業者である受託者A社に対し、製造物責任法に基づき、損害賠償を請求できます。
勘違いその⑤:製造業者は無過失責任を負うので、免責されるケースはない。
繰り返しとなりますが、製造物責任は無過失責任です。
過失がなくても責任を負う、ときくと、製造物の欠陥が原因で他人の生命、身体又は財産を侵害した場合には、製造業者が常に損害賠償責任を負うことになると感じるかもしれません。
しかし、それは誤った理解です。
以下のように、製造物責任法第4条には、製造業者が免責される2つの場合が明記されております。
製造物責任法第四条
前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。 一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。 二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。 |
以上の5つについて、動画でイラストなどを用いてyoutubeで解説していますので、よりわかりやすいかと思います。
ご興味のある方は、以下からご覧ください。
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勘違いその①:製造物責任法は、不動産にも適用される。
勘違いその②:製造物に欠陥があれば、直ちに製造物責任法が適用される。
勘違いその➂:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、自然人に限られる。
勘違いその④:製造物責任法に基づく損害賠償を請求できるのは、製造物の欠陥からの直接の被害者に限る。
勘違いその⑤:製造業者は無過失責任を負うので、免責されるケースはない。
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