「種」も「仕掛け」もあるのが交渉術~譲歩するのには理由がある~
「ノルマが厳しい会社では交渉力が落ちる」ということをご存知でしょうか?
「ノルマが厳しいと、たくさん売ろうと頑張って交渉力を発揮する必要があるから、交渉力は高まるのでは?」
こう感じた人もいるかもしれません。
普通、そう単純にはいかないんです。
まず、ノルマとは、ただ単に「たくさん売らなければならない」というものではありません。
「いつまでに最低これだけは売るように!」といわれるものです。
期限があるんですね。
しかも、ノルマが厳しいということは、いつもよりもたくさん売る必要があるわけです。
そうしたら、とにかく短期間に受注の数を増やす必要があります。
どうしたら早くたくさん売れますか?
普通に考えれば、「単価を安くする」ですよね。
それにより量を稼ぎ、トータルの売上を増やすと。
そして、販売するときの様々な条件はどうする必要がありますか?
早く買ってもらう必要があるわけです。じっくりと条件交渉なんてしていられません。
相手に早く合意してもらうためには・・・?
自分が譲歩するしかありません。
繰り返します。
自分が譲歩するのです。
つまり、交渉力が弱くなっているんです。
いつもよりもたくさん買ってもらうためには、安くして、損害賠償責任などもいつもよりも売る側である自社が重い責任を負うことにして・・・。
そうなんです。
厳しいノルマは交渉力を減殺させます。
単価を安くしているので、頑張った割に、意外と利益は増えないな・・・ということも起こり得ます。もしかすると、安売りの程度によっては、利益が減るかもしれません。
そうして引渡した製品に何か不具合があれば、いつもよりも多くの賠償責任を負うことになるかもしれません。譲歩した条文のせいで・・・。
これも利益にはマイナスに働くことでしょう。
これで済むなら、まだいい方かもしれません。
また、このような頑張りは、疲れそうですよね。
人手不足になりそう。
残業が増えそう。
持続可能ではないような気がします。
そして、厳しいノルマを課す会社は、やっぱり人にも厳しいわけです。
すると、ノルマを達成できないときは、かなり怒られるのでしょうね。
誰でも、怒られたくないものです。
すると・・・ノルマを達成できない人や部門は、売れていないのに売れたと、利益が出ていないのに利益が出ている、と数字をごまかし始めるかもしれません。
不正会計(粉飾決算)です。
そしてそれがいつか世間に明るみになる。
株価も下がる。
取引先も取引を控えるかもしれません。
結局、できる限り多くの利益を得ようとして課したノルマのために、逆の結果になり得るのです。
実際、不正会計で問題になった会社は、ノルマが厳しかったことがよく報道されていますよね。
・・・
交渉力というと、一般に、担当者個人の能力に大きく依存する力のように感じるかもしれません。
しかし、上で述べたように、本来の交渉力を十分に発揮できるかどうかは、組織がとる方針に大きく依存します。
通常ではとてもではないが達成できないノルマを課されたら、いくら凄腕のネゴシエーターでも、翼をもがれた鳥のように自由が利かなくなります。
そもそも、交渉する時間がないからです。
こちらが譲歩して譲歩して譲歩して、とにかく早く契約締結にもっていく!
そうしないと、こんなすごいノルマを達成できないのだから!!
下の本郷塾のオンラインセミナーの講座では、上記の他にも、日本企業が交渉力を減殺してしまいがちなケースをいくつかご紹介しています。
相手から譲歩を引き出すための交渉力を高める機械的交渉法 | 本郷塾
もちろん、組織として何を重視するのかは「決め」の問題です。
交渉力の確保を最優先としなければならないわけではありません。
ただ、組織が「良かれ」と思ってしていることが、実は本来であれば強い交渉力をみすみす減殺させているとは知らずにやってしまっているとしたら、それは「本当にそれでいいの?」となりますよね。
交渉力が減殺するのにはちゃんと理由があります。
みなさんが過去に譲歩してしまったのにも理由があり、相手がなぜか譲歩してきたのにも理由があるのです。
・・・といったような観点も交えて相手から譲歩を引き出す交渉力を構造化したのが下のセミナーで解説している「交渉の5段階」です(ちなみに、上記は第3段階の問題です)。
ばらばらのテクニック的なものを覚えるのとは違い、道具として使いやすいように解説しております。
相手から譲歩を引き出すための交渉力を高める機械的交渉法 | 本郷塾
交渉力とは、相手から譲歩を引き出す能力です。
より一般化すれば、「相手にこちらが望む行為をしてもらうように誘因するスキル」です。
身につければ、契約交渉以外でも活用できる場面はたくさんあると思います。
では、引き続き、本郷塾をよろしくお願いいたします。