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独占禁止法(独禁法)とは?具体例を用いて簡単に独禁法の本質を解説します!

 
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独禁法は、ゼロから学び始めるのがとても難しい法律です。

たとえば、①不当な取引制限、②私的独占、➂不公正な取引方法など、漢字を見ただけでは意味も違いもよくわからない用語が出てきます。

上の①~➂は確かに重要ですが、その前にぜひ押さえておくべき事項があります。

その点について、以下で例を用いて簡単に解説します。

独禁法とは?

独占禁止法とは、競争を減殺する行為を取締る法律です。

契約書に定められるいくつかの条文の中には、独禁法の観点から注意しなければならないものがあります。

 

そもそも、「なぜ、競争を減殺する行為を取締る必要があるのか?」

前提として、企業同士が競争し合うことで、よりよい商品やサービスが安価に市場に提供されるようになり、そのことで、私たち国民がより快適で暮らしやすいものとなると考えられています。

つまり、資本主義社会では、競争が活発に行われている方が、社会がうまく発展していくと考えられています。

そのため、独禁法は、競争を減殺する行為を取締り、そのことで国民の生活を守ろうとしているのです。

 

独禁法が主に取締る行為2つ(まずはこの2つを押さえておこう!)

では、独禁法が取締りの対象としている「競争を減殺する行為」にはどのようなものがあるのでしょうか?

これには色々なものがありますが、ここでは主なものとして、次の2つを押さえておくことが重要です。

 

①競争を回避する行為

たとえば、メーカーA社、B社、C社が、それぞれ冷蔵庫を製造・販売していたとします。

そして、この3社の冷蔵庫市場におけるシェアが90%を占めていたとしましょう。

ここで、冷蔵庫はこれまで10万円程度で販売されていましたが、この3社間で、今後は20万円以上で販売することに合意したとします。

これは、この3社が「価格に関して競争しないようにしよう」と合意したことを意味します。

そしてこの結果、消費者の大部分は、冷蔵庫を20万円以上支払わないと購入できないことになります。

つまり、競争が回避された結果、需要者(消費者)が従来よりも高い金額でしか商品を得られなくなるという不利益を被る結果となるわけです。

 

②他者(主にライバル)を排除する行為

たとえば、部品メーカーA社が完成品メーカーB社、C社、そしてD社の3社に対してある部品αを供給する条件として、A社のライバル企業から部品αの競合品を購入しないこととして売買契約を締結したとします。

これにより、A社のライバル企業であるE社やF社は、部品αの競合品を販売する相手がほとんどいなくなりました。

その結果、E社やF社は、これ以上部品αの競合品を製造・販売する事業を行っても利益を得られない状況が続く可能性が高いので、この事業からの撤退を余儀なくされる可能性があります。

もしも実際に事業撤退となると、A社はB社~D社に対して、部品αの価格を従来よりも引き上げても、B社~D社は他から部品を購入することで困難となるので、やむなく高額で部品αを購入せざるを得なくなります。

その分はB社~D社が製造する完成品の価格に転嫁されます。

まとめると、A社がB~D社を通して、ライバル企業であるE社やF社を排除することで、需要者が高額でしか完成品を得られなくなるという不利益を被る結果となるわけです。

 

2つの例からわかること

上記2つの例からわかることは、「競争を回避する行為」や「他者を排除する行為」によって、最終的に消費者が従来よりも高額を支払わないと商品を購入できなくなるという不利益を被ることです。

そこで独禁法は、消費者を保護することを目指して、主にこの2つの行為を違法として取締ろうとしています。

独禁法が取締る行為には他にもありますが、この2つがメインであり、重要なものなので、まずはこの2つをしっかりと押さえましょう。

 

独禁法についてのよくある勘違い

独禁法が競争を減殺する行為を取締るのは、上で述べたとおり、最終的には消費者を保護するためです。

この点、たとえば、上の例②において、完成品メーカーB社の取引の自由が侵害されている点を見て、「B社が気の毒だから、A社がB社に他者から購入してはいけないと義務付けることは違法」と感じる人もいるかもしれません。

しかし、この理解は誤りです。独禁法は、そのような誰かの「取引の自由」が侵害されることを重視しているわけではありません

あくまで、B社がA社のライバル企業から部品を購入しないことで、それらライバル企業が市場から排除され、その結果、消費者が従来よりも高い金額で完成品を購入せざるを得ない結果に繋がることを懸念しているのです。

この点を誤解して理解すると、消費者にはほとんど影響がないので独禁法に違反するわけではないのに、ある企業の取引の自由が侵害されているという理由だけで独禁法に違反すると間違って判断することになってしまいます。

 

競争を少しでも減殺するなら、直ちに独禁法違反となるのか?

独禁法は競争を減殺する行為を取締る法律ですが、競争を回避する行為または他者を排除する行為が行われれば、直ちに独禁法に違反するわけではありません。

 

たとえば、上の例①について、冷蔵庫の価格を20万円以上とする合意をしてそれを実行したA社~C社の合計のシェアが1%に過ぎなかったとします。

この場合、消費者のほとんどは、従来通り、A社~C社以外の冷蔵庫メーカーから10万円程度で冷蔵庫を購入できます。

このようなときは、独禁法を取締る機関である公正取引委員会もこの3社の行為に対して動くことはないでしょう。

通常、例①のような行為は「価格カルテル」と呼ばれており、このような行為はその影響の程度を問わず違法だといわれることもありますが、それでも、1%のシェアしかない事例で公取委が動くことはまずないと思われます(公取委も人員に限りがあり、あらゆる違反について取締るわけではないのは、車でスピード違反をしても、全員が罰金を科されるわけではないのと同じです)。

 

また、例②において、B社、C社、D社がA社のライバルであるE社やF社から部品を購入しないとしても、B社~D社の3社のシェアがやはり1%程度であるなら、E社とF社は、他の企業に部品をたくさん販売できるので、E社とF社はこの部品事業から撤退を検討する必要はなく、また、消費者も従来通りの価格で完成品を購入できる状態が維持されるでしょう。この場合には、独禁法違反とはいえない、という結論になります。

(※ちなみに、シェアの1%にしか影響を及ぼさないような形で競争を回避したり、他者を排除したりする行為が行われることは現実にはまずありえません。そのような行為をしても、自社(例①でいえばA社~C社、例②でいえばA社)に有利な結果が生じないと初めからわかっているからです。)

 

まとめ

したがって、以下を押さえておきましょう。

・独禁法が取締る主な行為(全部ではありません)は競争を回避する行為他者を排除する行為である。

・しかし、競争を回避する行為や他者を排除する行為が行われても、その影響がある程度のレベルに達しないと、独禁法に違反しない、または、独禁法に違反するとしても、公取委が取締りに向けて動き出さない。

・よって、独禁法の観点からの検討では、行為だけでなく、その結果どのような影響が生じるのかをよく見る必要がある。

 

なお、独禁法の三大行為類型(不当な取引制限、私的独占、不公正な取引方法)の違いを理解したい人は、こちらをご覧ください。→独占禁止法とは?不当な取引制限・私的独占・不公正な取引方法を簡単に見分ける方法

三大行為類型の違いは、youtube動画でも解説しておりますので、よろしければこちらもご覧ください。

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