契約書のチェック・検討方法その①
その取引における本来あるべき姿を理解する
「契約書を読んでみても、何が良くて、何がダメなのかが判断つかない」
「契約書を一生懸命読み切っても、「まあ、契約書って、だいたいこんな内容なのかな?」ということくらいしか思えない」
こんな風に感じている方もいるのではないでしょうか。
また、企業法務部に配属されたばかりの人だと、契約書をチェックしたのに何も修正する点がないと仕事をした気にならないから、とにかく何か修正・コメントしなきゃ!と思い、自分でもさほど修正の必要性を感じない点を修正してみる、ということもあるのではないでしょうか。
上記のようなことになってしまっている理由は、おそらく、契約チェックの方法を知らないことにあるのだと思います。
この点、おそらく、契約書をチェックする方法は、「自社にとって不利益な条文を見つけて、それを自社にとって有利な条文に直すことだ」と教わった人もいると思います。
これは、正しいと言えば正しいのですが、やや具体性に欠けますよね。
そこで、以下では、契約書をチェックする方法について具体的にお話ししたいと思います。
契約書のチェック方法
取引における本来あるべき姿
まず、契約書を読む前にしていただきたいことがあります。
それは、「その契約の取引における、本来あるべき姿は何か?」を自分の中で整理することです。
契約書が結ばれるということは、何かの取引が相手方当事者との間で行われるということです。
その相手方当事者との間の「取引についてのお互いの約束事」を書いているのが、契約書です。
よって、「その取引において、お互いに約束すべきこと」が、契約書の中に適切に定められているのか?を見ていくことが、契約書のチェックなのです。
つまり、自分の中で、「この取引においては、これこれこういうことが定められていなければならない」というものがないのに契約書を読んでも、その契約書に定められていることの何が良くて、何がおかしいのか、どう修正するべきなのか、といったことの判断はつきにくいのです。
取引においてお互いに約束するべきこと
では、「取引においてお互いに約束するべきこと」とは一体何なのか?
ここで理解していただきたいのは、「契約書とは、主に、当事者間の権利義務を定める文書である」ということです。
つまり、
自分は何をしなければならないのか?(自分の義務→相手の権利)
自分は相手に何を請求することができるのか?(自分の権利→相手の義務)
を定めるものです。
よって、「取引においてお互いに約束するべきこと」の主たるものは、
自分がその取引でしなければならないこと
自分がその取引で相手に請求するべきこと
になります。
したがって、契約書をチェックする前にまずやるべきことは、「その取引における自分がしなければならないこと」と「自分が相手に請求するべきこと」を理解することとなります。
そのためには、その取引についてよく知る必要があります。
例えば売買契約なら、
- 契約の相手方とこれまでのその相手方との関係
- その所在国
- 製品
- 納期
- 納入方法
- 契約金額
- 支払方法
といった基本的な情報に加えて、そもそも売買契約締結後に開始される「契約履行の流れ」をわかっている必要もあります。
それらの情報・理解に基づき、「自分がしなければならないこと」と「自分が相手に請求するべきこと」を整理します。
それができたら、「それらが契約書の文面に反映されているのか?」を見ていくことになります。
自分が整理した内容と、契約書の文面との間に差があれば、そこは修正するべき箇所、ということになります。
一方、自分が整理した内容と契約書の文面が合致しているところは、修正する必要がない、ということになります。
契約書はどれも似たようなもの
契約書は、同じ種類の取引について書かれたものであれば、その大部分はどれも実質的にはほとんど同じものです。
売買契約について誰が契約書をドラフトしても、定められる条文にそう大差ありません。
ライセンス契約について誰が契約書をドラフトしても、定められる条文にそう大きな違いはありません。
まったく同じ契約書ではなくても、かなり似通ったものになるのです。
なので、「売買契約は本来こういうことが定められるべき」「ライセンス契約は本来こう定められるべき」ということを一度理解すれば、契約書の検討はこれまでよりもずっと楽に、適切に、そして迅速にできるようになります。
よって、まずは、「その取引において、本来契約書に定められるべき事項は何か?」を理解するように努めるとよいと思います。
【私が勉強した参考書】