企業が「負っていいリスク」と「負ってはいけないリスク」の判断基準とは?

世の中には、「負っていいリスク」と「負ってはならないリスク」があります。
企業は、様々な新しい事業を展開しようとするものです。
新しい挑戦を促すために、経営者はよく、次のようなことを言います。
「失敗を恐れず、新しいことに挑戦しろ!」
「リスクを怖がらずに進め!」
確かに、挑戦しない限り成長できないので、この言葉は正しいでしょう。
事業を行う上でリスクは付き物で、もしもなんらリスクを負ってはならないと言われたら、何もできないことになります(もっとも、何もしようとしないこともリスクですが・・・)。
しかし、これはなにも、「無謀な挑戦をせよ!」と言っているわけではありません。
例えば、「ロシアンルーレットで、6発中1発のみが本当の鉄砲玉が入っていて、残り5発は空である。1回挑戦し、空が出たら10億円もらえる」という賭けがあった場合、挑戦するべきでしょうか?
すべきではありません。
確かに、5/6の確率で10億円が手に入ります。
しかし、外れたら死にます。
少なくとも10%以上の確率で死ぬ賭けをすべきではないでしょう。
これは、感覚的にわかると思います。
どんなに魅力的な当たりがあるとしても、外れたときには、そこですべてが終わってしまうような賭けはすべきではないのです。
賭けは、何度でも繰り返しできるものを選ぶべきです。
何度でも繰り返せるなら、いつかは成功するからです。
生命の目的
生命の目的とは何でしょうか?
それは、生存です。
どの生物も、子孫を残すことにやっきになるのは、とにもかくにも「種を残せ!」と遺伝子にインプットされているためでしょう。
私たち人類も、何億年もの間、種を保存し続けてきました。
恐竜時代も、細々とその種をつないできました。
その間、「いつかは恐竜に代わってこの地球を支配してやる!」なんて考えた種はいなかったと思いますが、とにかく生存し続けることに命を使ってきたことでしょう。
そうして生きながらえてきた結果、何かの偶然で、現在のような繁栄に至りました。
企業も同じではないでしょうか?
世のため人のためになる製品やサービスを生み出したい!
といったことを個々の人間は考えるかもしれませんが、結局は、企業の意義は、存続にあります。
存続してさえいれば、人を雇用できます。
雇用できれば、何人かの人の生活を給料という形で支えることができます。
世間から注目を浴びるような大きな業績を出していようがいまいが、それは可能です。
そして、そのことには十分な意味があります。
少なくとも、従業員の生活をさせているからです。
よって、企業は、とにかく存続すること、生き残ることを第一の目的とするべきですし、多くの企業は実際そうしています。
無謀な挑戦
しかし、時々この目的を忘れて、逸脱することがあります。
それが、社運をかけてまで危険な賭けに打って出ることです。
「これに失敗したらつぶれるかも」という事業に蛮勇をもって挑みかかることがあるのです。
これは、企業の存続を危うくする行為です。
負ってはいけないリスクをあえて負ってしまっているのです。
もちろん、成功するかもしれません。
しかし、仮にそこで成功すると、それに味を占めて、また存続を危うくするリスクをとって大きなリターンを取ろうとしてしまいます。
そんなことを続けていれば、いつかはリスクが現実化してしまいます。
その結果、滅んでしまうかもしれません。
そうではなく、常に存続を第一と考え、細々とでも続いていくように事業を展開していくべきです。
そうすれば、運が良ければ、人類がただの小動物であったのに、地球の支配者になれたのと同じように、さほどのリスクを負わなくても、「生き残り続けた結果としての繁栄」を得ることができる可能性があります。
何か新しいプロジェクトを進めることになった場合には、「負っていいリスク」なのか、「負うべきではないリスク」なのか、その見極めをしっかりとするようにしましょう。
繰り返しになりますが、
「負っていいリスク」とは、仮に失敗しても、また復活できるレベルの損失で押さえられるものです。
「負ってはいけないリスク」とは、失敗した場合に、それで倒産してしまうような損失が出るものです。
この見極めができれば、その企業は、何度でも、繰り返し、成功するまで、挑戦し続けることができるはずです。
この見極めを行うコツは、「失敗した場合にどうなるのか?」を客観的に検討することです。
「なんとしてもこの案件を進めたい!」
「この案件を進めたのは自分です!」と言いたい!
こういう気持ちがあると、目が曇ります。
つい、大きなリスクをはらんでいる危険な案件を無理やり進めてしまいます。
そうなりそうになったら、「企業の最大の目的・意義は、ただただ生き残ることにある!」という点を思い出すようにしてみましょう。