なぜ、就活の面接では、「学生時代に頑張ったこと」を詳しく聞かれるのか?
2020/01/30

すごい記憶力の先輩
入社して2年目に、法務部のある先輩が担当していたあるアジアの国の案件を一緒にすることになりました。
その案件は社内での会議が割と多く、先輩と私は一日に何度も社内の関係部署と打ち合わせに出ていました。
打ち合わせが終わると、先輩は都度、その会議で協議されたトピックやポイントとなる事項、法務部として行うべきアクション事項を確認する時間を設けてくれました。これはおそらく、私がそれまで経験したことのない案件だったこともあり、そういった「まとめ」の時間を設けないと、私がただただ会議に参加して話を聞いて終わりになってしまうだろうと思ってのことだったのではないかと思います。
その「まとめ」の時間に、私はいつもこう思っていました。
「どうしてこの先輩は、こんなに記憶力がよいのだろう?」
「まとめ」の時間に先輩と私が確認していたのは、私も参加した会議の内容がベースになっていたのです。なので、私も実際に聞いた話のおさらいであり、大体は私も記憶していたことでした。
しかし、その先輩は、私よりもはるかに詳細かつ具体的に会議の内容を覚えているように思えました。
会議の議事録を全部再現するように言われたらできてしまうのではないかと思えるほど、といったら大げさかもしれませんが、特定の事項については、まさにそれができるのではないかと思えるほどでした。
しかも、その先輩はさほどメモをとっていたわけでもなく、キーワードのようなものを時々手帳に目盛っていた程度でした。むしろ、メモしていた量は私の方がずっと多かったのです。
それでも、先輩が「あのとき、Aさんはこう言っていたよね」と言ったときに、私は「え?そんなこと言ってましたっけ・・・?」と言った返答をすることも度々ありました。
私は、自分は割と記憶力があるほうだと思っていたということもあり、どうして自分が覚えていないようなことも先輩がこうもしっかり記憶できているのかずっと不思議でした。
解けた疑問
しかし、この疑問は、ある時に解けました。
それは、私が一人である案件を担当したときです。
その案件は、当時の自分にとっては難しい案件でした。
その案件を他の先輩の下について担当していたわけではないので、自分がしっかりやらないといけない、と思い、毎日緊張もしていたように思います。
毎日なにかしらの打ち合わせが社内であり、そこで事業部門から要求された事項を契約書の中に盛り込むために条文案を検討し、契約交渉相手のところに出張して協議する・・・。
自分なりにではありますが、かなり力を入れてその案件に取り組めているな、と感じていました。
そして、あることに気が付きました。
それは、その案件の背景、会議内容、契約書に盛り込んだ条文案、そして相手方の反論の内容といった、その案件に関わる様々な事項について、かつてないほど自分が記憶できているということでした。
資料を見なくても、相手方のしてきた反論についてどう回答するのがよいのかを、会社からの帰りの電車の中で考えることもできました。
「こんなこと、先輩と一緒に仕事をしていたときはあったっけ・・・?」
その時、かつて自分が不思議に感じていた先輩の記憶力のすごさの理由が分かったような気がしました。
それまでの自分にはなかったけれど、その案件の時には自分にあったもの。
それは、「当事者意識」です。
法務部で自分だけが担当している案件、つまり、自分がしっかりやらないと進まない案件。
その場合、「先輩が一緒にいてくれるから、自分が出来なくても何とかなるや」とか、「この点はきっと先輩がなんとかしてくれるだろう」などといったように、先輩を頼りにすることはできません。とにかく、自分で対応しなければならないのです。こうなると、誰もが先輩と一緒に仕事をしている時よりも「自分がやらないと!」と強く思うようになるでしょう。あの時の私は、まさにそうだったのだろうと思います。
そして、そういう気持ちで仕事をしているときは、記憶力のみならず、理解力も上がっていたように思います。「わからないところは後で先輩に聞けばいい」、なんてことも微塵も思わなくなるので、その場で理解しようと努めるからだと思います。
自分がやらないといけない!という「当事者意識」を持つと、「本気」で取り組むようになる。
「本気」で取り組むと、記憶力や理解力がアップする。
こういうことなのではないかと思います。
陸上競技の記録
このことに気が付いた時、自分が中学生の時に、異様に記憶力を発揮した分野があったことを思い出しました。
それは、陸上競技の記録を覚えることです。
私は中学時代に陸上部に所属していました。当時は、一秒でも早く走れるようになりたい!と思って毎日練習していました。
部室には、過去10年分くらいの県内20位以内の中学生の記録が掲載されている記録集があったのですが、私はそれを見るのがかなり好きでした。誰が中学1年生の時に何の種目でどんな記録を出して、その人が2年生、3年生と上がるにつれて記録はどうなっているのか?・・・というのを調べるのが自分には面白かったのです(こうして書いてみると、ものすごくマニアックですね・・・)。その記録集を自分なりに分析して、自分は今何秒だから、来年はこのくらいで走れるようになるかもしれない、と思うと、普段の練習にも余計に身が入るような気がしていました。
すると、だいたいの人の記録は、100分の1秒まで覚えることができたのです。例えば、800mなら、1分59秒97とか、1500mなら、4分13秒02など、なんの脈絡もない数字の羅列です。勉強ではこんなに覚えられないのに、陸上の記録は特に覚えようとしなくても勝手に記憶することができました。きっとあれも、好きなことだったために本気になって記録集を読み込んでいたことが原因だと思います。
就活についての疑問
就職活動のときに必ず企業が学生の方に聞く質問があります。
それは、「学生時代、一番頑張ったことはなんですか?」というものです。
私は企業がこの質問を必ずすることが不思議でした。
学生時代に何かに本気で一生懸命に頑張ったことがある人は、会社に入ってからも仕事に本気になって取り組んでくれる可能性が高い、ということがこの類の質問をする理由だということは知っていました。実際に人事部の人がそう言っていたのを聞いたこともあります。
しかし、聞かれる学生の方もそんなことは百も承知で、たとえ嘘でも、自分が何かに一生懸命に取り組んだというエピソードを作り込んでくるはずです。
そうなると、「本当にその学生が、学生時代に一生懸命に取り組んでいたのかどうかなんて判断できないじゃないか」私はそう思っていました。
でも、この謎も解けました。
というのは、「本気で学生時代に何かに取り組んだ人は、そのことについて、非常に細部についてまで記憶しているはずだ」ということが言えるはずだからです。
「就活で聞かれるから」という理由で作ったエピソードの場合、根掘り葉掘り聞かれると、準備していないことに聞かれたとたんにうまく答えられなくなりますが、その人が本気で取り組んだことであるならば、何を聞かれても、例えそれが想定外の質問だったとしても、明確に覚えていて、自分の言葉で詳細に答えることができる。そのため、本当に本気で取り組んだ学生なのか、そうではない学生なのかの区別は割と容易につけることができる、ということなのではないでしょうか。
実際、私はそれに気づいてから面接官をしたことが何度かありますが、これは正しかったように思います。聞かれたことについて常に自分事として回答している人と、そんな質問想定していなかったという表情で回答に困っている人の違いは一目瞭然です。
会議の内容をすぐ忘れる。
上司から自分が担当している案件について何か質問されたときに答えられないことが多い。
そう言った傾向がある方は、「今、自分は本気でその仕事に取り組むことができているか?」というところから問い直してみてはいかがでしょうか?本気で取り組むだけで、それらの問題は自ずと解決していくかもしれません。
記事をお読みいただき、ありがとうございました。
この本郷塾のブログの中に掲載されている記事の80%以上は、英文契約に関するものです。その中で、あえて上記の様な記事を読んでいただけたということは、おそらく、仕事の仕方・働き方について悩まれているのではないでしょうか。
私も、2006年に電機メーカーに入社したばかりのころは、本当に何もできないみじめな状態でした。プロフィールにも書いてある通り、2007年の1月には、「海外案件なんて自分にはこなせるようになるとは思えない・・・」と悩み、会社を辞めようとしたほどです。
その理由は、英語ができない、英文契約書を読みこなせない、というのもありますが、同時に、仕事の仕方がよくわからなかったのです。どう振舞えばよいのか、何が正解なのか、まるでわかっていないことも大きな原因でした。後にも先にも、あの時以上に手も足も出ないと感じたことはありません。そして、仕事がつらいと、人生全般も苦しいものになると、そのときよくわかりました。
そこで、英語の勉強、英文契約書をチェックできるようになるための努力をするのと同時に、「働き方」や「生き方」についても模索するようになりました。具体的には、歴史上の人物達が困難に遭遇したときに、どのようにそれを乗り越えたのか?彼らはどのようなことを考えて、積極的に生きようとしたのか?を学ぼうとしました。
はじめは、歴史上の人物なんて、自分とはかけ離れた英雄・偉人なのだから、自分などが彼らから学べるもの、真似をすることができるものなどないのではないか?という思いもありました。しかし、読み重ねていくうちに、こう思うようになりました。
「彼らも、結局は自分と同じ人間で、ただ、様々な条件が重なった結果、あのようなすさまじい結果を出すに至ったが、本当は、自分とそう変わりないのではないか?」
そして、「彼らの前に立ちはだかった困難な状況は、現代の社会人に当てはめるとどういう場面なのか?」と自分なりに捉え直すようにしました。すると、歴史がそれまでよりもずっと身近になりました。
もしかすると、このような考え方、つまり、歴史上の人物も普通の人たちなのだ、という考え方は、傲慢なのかもしれません。しかし、これによって誰に迷惑をかけるものでもありません。「あくまで自分の中だけで、過去の人から学び取ろうという気持ちになり、それで人生が好転するのなら、構わないのではないか?」こう思うようになりました。
初めは歴史小説を中心に読んでいたのですが、その後、「これは真実なのだろうか?」と思い、本当のところを調べるために、大学教授などの歴史専門家が書いている本を読むようになりました。
そして、いつのまにか、「仕事や生き方のヒントになるもの」を集めるようになりました。それが認められて本になったのが、今回出版した2冊目の著書『歴史が教えてくれる働き方・生き方』です。
実際、私は歴史上の人物たちの考え方や振る舞い方に励まされ、少しずつですが成長できました。そして、入社して5年目以降には、当時の社内で最大規模の発電プラント建設プロジェクトの法務部主担当になることができました。その仕事を任されなければ、おそらく、ここまで英文契約、特に海外プラント建設契約に詳しくなることはなかったはずです。当然、英文契約の参考書など、出版できなかったと思います。
会社の中での仕事では、英語ができる、または契約書を読みこなせる、といったスキルだけでは解決できない困難に出会うことがあります。そんなときに、今回の『歴史が教えてくれる働き方・生き方』がヒントになればと思います。
全部で50個のエピソードを掲載しました。社会人になると、こういう場面に遭遇することもあるのか、と思える話も入れています。1つ1つは短く、簡単に読めるものなので、書店でパラパラ試しに読んでみてください。その中に、1つでも、役立つものがあれば幸いです。
これから就職活動をする方々に参考にして欲しい記事
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資格試験に落ちたからしょうがなく民間企業の面接を受けることになり、落ち込んでいる方へ
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仕事は常に自分が主役になれるようにしたい!脇役になんてなりたくない!と考えている方へ
「自分には、きっと何の才能もないんだろうな・・・」と思っている方へ
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仕事ができるようになるために一番大切なものってなんだろう?と思っているあなたへ
「会社に入ってから、パワハラにあったらどうすればよいのだろう?」と不安なあなたへ
「就活が忙しくて授業の単位落としそう・・・!」と嘆いているあなたへ
「自分はいつも正しい。面接でもOB・OG訪問でも正しいことを堂々と語ってやる!」と意気込んでいるあなたへ
「会社に入ったら、同期とはずっと給料同じで差はつかないんでしょ?」と思っているあなたへ
「自分はなんでも完璧を目指す。完璧にできないなら、しないほうがいい!」と思い込んでいるあなたへ
「会社で評価される人ってどんな人なんだろう?」ということが気になるあなたへ
「仕事ができるサラリーマンになりたい!」と思っているあなたへ
「将来、今ある仕事の大部分は機械でできるようになるんじゃないか?そのときに備えて自分はどうすればいいんだ?」と今から不安を感じているあなたへ
「やばい!大学の授業の単位は、全部C評価ばっかりだ!」と今更焦っているあなたへ
「最近、就活のために疲れがたまってきた・・・」というあなたへ
上記の記事を読んで「もっと仕事について知りたい!」と感じた学生の方は、下の仕事についての記事もご覧ください
(※3分の1ほど上記の記事とかぶっています)。
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仕事に関する記事の目次
何かに挑戦したいと思っているのに、そのための一歩が踏み出せないでいる人へ
「会社って、そもそも誰のものだっけ?」と疑問を抱いている人へ
仕事における段取りや根回しってどんなものかよくイメージできない!という人へ
何かの資格試験に落ちて、「もう人生終わりだ!」と思っている人へ
新しいことをしようとしたら、周りから猛烈な反対を受けて、しょんぼりしている人へ
「完璧にできないくらいなら、初めからしないほうがよい」と思っている人へ
本当は主役になりたいのに、いつも主役になれないと落ち込んでいる人へ
上司に取り入っていろうとしている人を見ると、寒気がしてきてしまう人へ
いつも残業しているが、そんな現状をなんとか変えたいと本気で思っている人へ
「仕事で評価される人は自分とは何が違うんだろう?」と疑問に思っている人へ
「社会人になると、学生の時と一番何が違うんだろう?」と疑問を抱いている学生の方へ
「仕事って、どんなときに楽しさを感じられるんだろう?」と疑問を持っている人へ
「部内の飲み会なんて、どんなに遅刻してもよい、なぜなら仕事じゃないんだから」と考えている人へ
学生時代に頑張ったことが「勉強」だと、就活に不利だと思い、やりたくもないサークルに今から入ろうかな、と考えている学生の方へ
「社会人は、一体何に一番力を入れるべきなんだろう?」と悩んでいる人へ
いつも、「先輩に言われたことをしっかりやろう!」と考えている人へ
今日も自分の案があっさりと却下され、「もう提案なんかしない!」と思ってしまった人へ
正しいことを主張するときは、普段よりも力を込めて語ってしまう人へ
人間は機械にその仕事をいつか全部奪われる日が来るんじゃないか?とおびえている人へ
会社で役員に案件を説明するのが嫌で嫌でしょうがない、という人へ
靖国神社ができたのは、太平洋戦争での戦没者の慰霊のためだと思っている人へ