同じ失敗を繰り返す組織の傾向

   

 

その事業から撤退するから、今後同じ問題は起きないと考え、原因の追究を怠っていないか?

ある事業で巨額のコストオーバーランに陥った企業が、今後その事業から撤退することにしたとします。

その場合、次のように考えることは正しいでしょうか?

 

「コストオーバーランを引き起こした事業からは撤退する。つまり、今後その種のコストオーバーランは2度と起きない。したがって、原因も対策も不要だ」

 

この考え方は、危険です。

なぜなら、コストオーバーランに陥った理由は、何もその事業に特有のものではないかもしれないからです。

たまたま今回はその事業で起きただけで、原因はもっと根本的なものであるかもしれないのです。

そして、それが結局は全社的な問題であるということもあり得ます。

このような姿勢でいては、そのうち、また同じ失敗を繰り返すことになるでしょう。

 

個人の責任問題になるから、という理由で過去の失敗の原因の追究を控えていないか?

 

ところで、コストオーバーランに限らず、社内で起きた失敗事例について原因を追究しようとすると、ある問題にぶち当たります。

それは、「誰かの責任問題になりえる」ということです。

意外かもしれませんが、組織においては、このような「誰かの責任問題に繋がることには、なるべく触れないようにしよう」ということが時々起こります。

責任者を処罰したくないから、うやむやにしようとするのです。

このため、組織として、原因追求を行うのを渋ることになるのです。

 

また、原因を突き止めるには、その案件に関わった当事者へのヒアリングは欠かせませんが、この場合、自分の失敗を隠すために全ての情報を正直に話さない、という事態も生じ得ます。

 

そこで、上記の様な事情を考慮した仕組みが必要となります。

具体的には、「失敗については、余程悪質なものでない限り、責任を取らせない」という制度にすることです。

 

その失敗を起こした人物は、将来組織が経験するはずだったより大きな失敗を今のうちに自分たちの前に示してくれた、そしてその失敗のお陰で、組織がより強く成長する機会を与えてくれた、と捉えるのです。

もっとも、失敗を引き起こした者に表彰するというところまで行くと抵抗がかなりあるでしょう。

少なくとも人事上責任を問わないことにすれば、従来よりも失敗の原因追求は円滑になるし、また、協力的な自己申告も増えるでしょう。

 

航空業界の失敗への対処方法とその効果

ちなみに、失敗の原因追求の世界で最も進んでいるのは航空業界です。

毎日数えきれないほどのジェット機が大量の人間を運んでいますが、ほとんど事故が起きていません。

1912年当時には、米陸軍パイロットの14人に8人が事故で死亡していました。

米陸軍航空学校でも、創立当初は死亡率が約25%でした。

しかし2013年には、事故率は約240万回フライトに1回の割合となっています。

この原因は色々考えられますが、大きなものとして、徹底した原因追求の姿勢にあります。

例えば、航空機には粉砕不可能なブラックボックスが二つ装備されており、飛行データとコックピット内での会話が録音されています。

事故にこれを回収し、その原因を追究できるようになっています。

また、監督行政機関が事故機の残骸等からくまなく調査をします。

その報告書は一般に公開され、世界中のパイロットが自由にその報告書にアクセスできるようになっています。

さらには、小さなミスに対しても、10日以内に報告すれば処罰されない決まりにもなっています。

つまり、失敗した者が自己申告しやすい体制が整えられているのです。

 

本当に原因追求になっているのか?

原因と結果にほとんど関係がないような事項が今後の対策として列挙されているような資料や、その対策は実現不可能である、という対策が列挙されている資料等を見たことがないでしょうか?

そのような資料ができあがる要因は、大きくは2つあります。

 

まず一つ目は、その種の取引・契約に疎い人たちだけで原因追求と対策が検討された場合です。

契約条件には、その業界一般の条文というものがあります。

よって、対策もその一般の条文を前提に立てる必要があります。

いくらコントラクターのリスクを低くするためとは言え、「追加費用は全額オーナーが負担するように交渉する」などというものは、実現不可能な対策であるので、無意味です。

一般的な条文に従った結果生じたコストオーバーランであれば、その損失の原因は、コントラクターが不利な契約を締結したからではありません。

そのような場合は、案件の遂行能力・遂行過程に何か問題があったとみて原因を探る必要があります。

この種の検討は、「普通の契約条件とは何か?」を知っていなければできません。

 

2つ目は、粘り強く調査できない人が担当者に選ばれた場合です。

原因調査は、簡単ではありません。

まず結果を精査し、そこから過去に徐々に遡り、どの時点の何が結果に直結したのかを見ようとしなければなりません。

色々な事実が複雑に絡み合っている場合もあります。

その絡みを丁寧に解きほぐしていく根気が必要となります。

この根気がない人が担当すると、「なんとなくそれらしい事実」や「原因っぽく見える事実」を無意識に見繕ってしまう危険もあります。

そのような内容でも、文書の形にするとそれらしく見える場合もあるので注意が必要です。

 

 - コストオーバーランへの組織的な対策