経営トップと事業部門の認識のずれ

   

事業部門としては、「この案件はリスクが高く、とてもやりきれない案件だ」と感じていても、経営トップはそう考えないということもあるでしょう。

 

このような「トップと事業部門の認識の違い」は、ずっと国内案件ばかり専門にしてきた部門出身の人が経営トップになった場合には特に生じ得るように思います。

 

例えば、海外の初めての規制に基づく案件であるため、事業部門としては、その対応コストを見込み、国内案件よりも高い金額で案件を入札に応じようとする場合です。

 

海外案件のリスクを知っている事業部門の人たちにとっては当然の金額上昇分も、それまで国内案件にしか携わったことがなく、しかも、国内では成功できていた経験しかもっていないトップにとっては不思議でしょうがないと感じられるかもしれません。

どうして国内案件と同様の金額でできないのか?」と感じるのです。

 

このような場面に遭遇したならば、事業部門にとって重要となるのは、当然ですが、「しっかりと説明すること」です。

 

例えば、「国内案件と海外案件では差があって当然なのに、あえて厳しい要求をしてくるのは、トップは何が何でも受注せよという命令を暗に発しているのだ」と先読みするのではなく、「規制が異なる。その対応費用が必要である」とか、「海外案件の下請け業者が国内のそれよりも高い」、さらには、他社の類似案件の事例を用い、「本件は難しい案件なのだ」ということの根拠を具体的に説明しようとすることが必要です。

 

これを怠ると、トップは、「事業部門は怠けようとして受注を見送ろうとしているのではないか?」と感じてしまうかもしれません。

このように感じてしまうと、トップとしては、それを簡単に見逃してはならないと考えるようになるでしょう。

そこで、「怠けようとしているのではなく、根拠があるのです。今の自分達には実力不足なのです」と説明する努力が事業部門の方にも必要となります。

 

この説明する中で、ある案件において受注するか否か判断を下す者が役員クラス、その案件の説明を行うのが課長や部門長クラスである場合、その役職の差はあまりにも大きいです。

 

そのような差がある中で役員クラスに説明をするのは、かなり緊張するでしょうし、プレッシャーを感じるかもしれません。

 

その場合、担当者は、できない理由を厳しく追及されると、心が折れそうになります。

 

「わかりました。頑張ってやり切ります。」と言いたくなるかもしれません。

これはそう責められるべきものでもないでしょう。

 

そこで、このような1対1にならないように、他の部長や事業部長もその会議の場では見積もり担当者をフォローする必要があります。

「お前が見積もり担当なのだから、お前が説明しきれ」という態度でいると、見積もり担当者は孤軍奮闘の様相を呈してきて、その人からは周りがみな敵に見えてきてしまうかもしれません。

 

「自分がここでやれます」と言えば済む話だ、と感じたとき、心が折れてしまうかもしれません。

その結果、本来は無理な案件を極めて非現実的な金額で受注してしまうことになり得ます。

 

無理して受注した案件でその後コストオーバーランに陥ると、その対応にかなりの時間を割くことになります。

その場合、その案件が大きな案件であるほど工程が長いため、案件の遂行途中で、受注時の社長や役員といったトップは、退職金を得て退職してしまっている中で、実際に対応に苦労することになるのは、受注時にプレッシャーに負けてしまった担当者たちだったりするかもしれません。

 

その場はトップからのプレッシャーに負けて、とりあえず受注することになったが、結局その案件の失敗の責任を負うのは、プレッシャーをかけたトップではなく、かけられた担当者たち、ということになりえるのです。

 

会社員としては難しいところですが、組織としてその案件をやり切るには実力不足だと感じる場合には、その点を部門としてしっかりと説明しきることが重要となります。

 - コストオーバーランへの組織的な対策