中計・予算の弊害その③~そもそも、企業の目的とは何か?~

   

中計と予算についての話が続きましたが、ここで、そもそも企業の目的」とは何でしょうか?

 

社会の役に立つものを世の中に提供すること

という答えが多いかもしれません。

確かに、これも目的の1つといってよいと思います。

しかし、もしも一番重要な目的を挙げよと言われたら、私はこう答えたいと思います。

企業の存続である

 

「企業の存続なんて、地味すぎる」

「そもそも、企業の存続は目指すモノというよりも、当たり前のこと」

このように感じる人もいるかもしれません。

しかし、それは、安定した企業に勤めることができているからでしょう。企業が潰れるかも、なんて想像できないだけかもしれません。

しかし、意外と、企業は、あっさりとつぶれることがあります。

例えば、支払不可能な損害賠償責任を負うことになった場合には、潰れる可能性があります。

 

企業は、特定のプロジェクトのためだけに設立されたのでなければ(これはSpecial Purpose Company=特定目的会社と呼ばれています)、とにかくも存続し続けることを大前提としています。

存続しているからこそ、雇用を創出できます。

存続しているからこそ、新しい製品やサービスを世に送り出すことができます。

今はそれができていなくても、将来それができるようになり得るのは、存続し続けている組織だけです。

 

仮にある一時期、すさまじい業績をたたき出すことに成功したとしても、その後あっさりとつぶれたら、失業者を発生させ、さらに、その企業はその後、何も生み出すことができません。

 

このことから、次のようなことが言えます。

瞬間風速的な目先の利益を出すことよりも、長期的に存続できる道を選ぶべき」

 

中計や予算を立てる際に、常に右肩上がりの青写真を打ち出し、その達成を従業員に対して強力に義務付ける企業は、行き過ぎると、目先の目標を果たすことに終始し、長期的・永続的な企業の存続には今何が必要になるのか?という視点を失いやすくなります。つまり、ジャンプの前にしっかりとしゃがむことができなくなります。

 

「将来のことは、将来従業員として存在している者たちが考えるべきことで、今の我々は、正に今と数年後の未来のことだけ考えていればよい(というよりも、それ以上のことなんて考えられない)」

 

このような考えを持つ人が多くなると、前回述べた「企業の持続的な成長・存続」に必要となる投資を怠り、目先の成果を出すことに必死になり過ぎてしまいます。

そうなると、次のように考える人々が出現します。

「この案件を今受注しないと、予算を達成できない。中計を守れない。

だから、今、できるかどうかわからないけれども、この案件を外してはいけない。

何としてでも取りに行くぞ!」と。

 

数年後に企業が潰れてもよいという考えなら、いくら無謀に挑戦してもよいでしょう。

しかし、上にも書いたように、企業は、ある一瞬、巨大な成果を挙げられればそれでよい、というものではなく、この先もずっと存続していけることの方がよほど大事なのです。長い目で見れば、その方が世の中に貢献しているといえます。

 

組織の中にいると、巨大なプロジェクトを進めるべきか否かという会議の際、参加者は、「企業の存続」を重視できる人達と、目先の中計や予算の達成に縛られている人達のグループに大きく分かれます。

現実的に達成困難な案件に積極的に突っ込んでいこうとするのは、後者の人たちです。

彼らは、自分のいる企業が潰れるかもしれないという事態に陥るなど、夢にも思っていません。

そういう人たちと渡り合っていくには、「企業を存続させることの重要性」を十分に理解することが重要となります。

 

人生も、生き続けていればチャンスはありますが、死んでしまったら、もう何もできません。

企業もそれと同じです。

特に、「社運をかける」なんてことを言い始める人が現れたら、要注意です。

そのような人々は、本当は社運ではなく、自分や特定の部署の社内での地位向上を目指していることが多いです。

そのような人々によって組織が間違った方向に進ませられないようにしなければなりません。

「社運を賭ける」「今やらないでいつやる」などといった熱い言葉に惑わされないように、冷静に対処しましょう。

 - コストオーバーランへの組織的な対策