中計・予算の弊害その②~右肩上がりの成長を求める経営トップの出現~

   

中計や予算の弊害が最も顕著に表れるのは、経営トップが常に右肩上がりの成長を求めてくる場合です。

つまり、常に売り上げも利益も成長し続けなければならない、という考えを持つトップが出現した場合です。

 

成長を望むトップの気持ちはわかります。

成長無くして競争社会での勝利はあり得ないからです。

同じレベルに留まるためにすら、上に登っていくような努力が必要になります。

例えると、下りのエスカレーターを駆け上がるような運動が、企業でも、個人の人生でも、転げ落ちないようにするためには必要です。

歩みを止めれば、ドンドン下へ下へと押し流されていきます。

 

しかし、このことは、常に右肩上がりの実績を出さなければならないということを意味しません。

なぜなら、人も企業も、高くジャンプするためには、一旦しゃがむ必要があるからです。

しゃがむからこそ、高く飛べるだけのバネが蓄えられます。

それが、全くしゃがまずに高く飛ぶことを要求されたら、どうなるでしょうか。

普通に考えたら、飛べないはずです。

企業も、見かけ上業績が悪い時期があってもよいのです。その間に種を蒔いているのなら。

 

例えば、これまで国内案件が中心だった部門が海外のEPC案件の受注数を増やそうとした場合に必要となることの一つは、優秀なサブコン・サプライヤー(以下、「下請け業者」)の選定です。

つまり、海外で工事をしてくれる企業や海外向けの案件の部品を提供してくれる企業を探す必要があるのです。

 

もちろん国内で使用していた下請け業者をそのまま使えればそれで済むこともあるでしょうが、常にそれができるわけではありません。

その場合、その下請け業者が本当に案件を「やり切れる業者なのか」を試す必要があります。

実際に試作機を作らせて、品質面で問題がないのか、また、過去の実績がどうか等について詳細に調査します。

そうして、下請けとして使える能力を持っているのか、また、安心して仕事を任せられるかを確認します。

 

もちろん、これには費用がかかります。

自社の調達部門の人間が下請け業者へ出張する費用は当然ですが、下請け業者の候補に試作をしてもらうための費用も必要になるでしょう。

そしてこれはときに膨大なボリュームとなります。

 

つまり、将来のEPC案件に備えて、信頼できる下請け業者を開拓する必要があり、それには時間と手間と費用がかかるのです。

 

そのような地道な将来に向けた投資をしようとしている中、必達目標値として無理な中計や予算を与えられたらどうなるでしょうか?

投資は、一時的には費用となって資金が会社外に出ていくことであり、短期的には右肩上がりの結果を残すための障害となります。

そのため、将来の成果よりも目先の数字を追い求めることを余儀なくされている組織では、そもそもこういう将来の成功に向けた投資を控えるようになるのです。

 

投資を控えることは、「現状の能力のままで成長せよ」と言われているようなものです。

これは矛盾です。

そのような矛盾を課せられた組織は、高い確率で将来衰退していくことになるでしょう。

 - コストオーバーランへの組織的な対策