Stand By LCとは?~Commercial LCやon demand bondとの違い~

      2020/01/30

ボンドと呼ばれるものには、on demand bondsurety bondがあります。

 

on demand bondは、買主(オーナー)がそのボンドをボンド発行銀行に提示して、「○円支払って」といえば、銀行はそれに応じて支払わなければならないというもの。

 

一方、surety bondは、ボンド発行者たる保証人(surety)が売主(コントラクター)の代わりに仕事を遂行することを保証するもの(suretyが第三者に仕事を遂行させることも含む)。

 

では、Stand by LCは一体なんでしょう?

 

Commercial LCとは?

そもそもLCといえば、一般には、Commercial LCを思い浮かべる人が多いかもしれません。Commercial LCとは、異なる国に存在する企業同士の売買契約の際に、買主による対価の支払い方法の1つとして用いられるものです。

 

例えば、売主が製品を買主に対して船で出荷した後で対価を得られるという契約条件だった場合、売主は、「製品を出荷したにも関わらず、対価を得られないリスク」を負うことになります。

 

ここでもしも、買主が対価を支払った後で、売主が製品を船で出荷するとしたならば、今度は、買主が、「対価を支払ったのに、製品を出荷してもらえないリスク」を負うことになります。

 

つまり、買主を立てれば売主が立たず、売主を立てれば買主が立たない、ということです。このようなことが国際間の売買契約では起こるのです。

 

このような問題を解決しようというのが、Commercial LCです。

 

これは、買主が、LCという書面を銀行から売主に対して発行させるものです。

 

売主は、そのLCと、そこに記載されている様々な書類を銀行に持っていけば、対価を銀行から支払ってもらえる仕組みになっています。

 

そして、このLCに記載されている書類の中には、売主が製品を船で出荷したことの証拠となる、製品を輸送する船会社の「確かに製品を受け取りました」という書類が含まれています。

 

つまり、売主は、実際に製品を船に乗せて出荷しない限り、LCに記載されている書類を手に入れることができないのです。

 

しかし逆にいえば、製品を出荷しさえすれば、必要な書類が手に入り、そしてそれらを銀行に持っていくことで、対価を得ることができるようになります。

 

つまり、「出荷したのに、対価を得られない」という事態が生じることを防ぐことができるのです。

 

一方、買主は、売主が製品を船に乗せて出荷しない限り、対価が売主に支払われないようになっているので、「対価を支払ったのに、製品が出荷されない」という事態が生じるのを防ぐことができます。

 

というわけで、Commercial LCを使えば、「売主も買主も、上記のような支払いと出荷に関するリスクを共に無くすことができる」ということになります。

 

Stand By LCとは?

では、同じLCという名前が付いているStand By LCとは何か?

 

Commercial LCは、買主が銀行にその発行を求め、そのLCを所持するのが売主となりますが、Stand By LCでは、売主(コントラクター)が銀行にその発行を求め、そのLCを所持するのは買主(オーナー)となります。つまり、Commercial LCとは逆です。

 

そして、売主(コントラクター)が契約に違反し、買主(オーナー)に対して損害を賠償しなければならないことになった場合には、買主(オーナー)がその「LC」と「LCに記載されている必要書類」を揃えて銀行に提示し、「●円支払って」といえば、銀行はそれに応じて買主(オーナー)に支払わなければならないことになります。

 

ここまでくると、お気づきの方もいらっしゃると思います。そうです。On demand bondと似ていますね。

 

Stand By LCも、on demand bondと同様に、実際に売主に契約違反があったのか、そして、損害額がいくらなのかを銀行は確認しません。とにかく、必要書類が揃っているかどうかにだけ関心を持ちます。揃っていれば、LCに記載されている上限金額の枠内で、買主に支払を行います。

 

Stand By LCとon demand bondの違い

なぜ、このような、on demand bondと同じようなものがStand By LCという異なる名称で存在するのかといいますと、それは、実際、両者は同じものではないからです。

 

まず、背景として、その昔、銀行は、銀行保証状(on demand bond)を発行することが禁止されていた時代があったようです。しかし、このようないわゆるボンド発行手数料で得られる利益は大きかったので、その禁止を迂回するために考案されたのが、Stand By LCだったようです。

 

その後、Stand By LCもon demand bondも、どちらも銀行が発行することができるようになったのですが、それでも、両者の間には違いがあります。

 

例えば、Stand By LCは、LC発行銀行以外の他の銀行が重ねて支払いを保証することがあります。しかし、on demand bondでは、そのようなことはありません。これにより、LC発行銀行に資力がなくなった場合でも、他の銀行が代わりに買主に支払をすることになります。とすれば、買主としてより安心なのは、Stand By LCといえるかもしれません(もちろん、どのような銀行からStand By LC/on demand bondを発行してもらうかによりますが)。

 

この他にも、Stand By LCが主に国際間取引で用いられるのに対し、on demand bondは、国際間取引のみならず、国内企業同士でも使用されるという違いや、Stand By LCはより長期間の契約に用いられ、on demand bondは比較的短期間の契約に用いられる、といった使用上の違いもあるようです。

 

Stand By LCもなぜか「ボンド」と呼ばれる

もっとも、EPC契約や建設契約で使用される場合には、もっとも重要な機能は「どちらも、買主が必要書類を揃えて銀行に持っていけば、すぐに支払いに応じてもらえる」という点が重要となり、その点においては、両者は極めて似ているといえます。そのため、EPC案件で「ボンド」という場合には、Stand By LCのことを意味していることもあるのです。on demand bondやsurety bondと異なり、名称のどこにもbondが入っていないのに、です。

 

したがって、「ボンド」を出すように客先であるオーナーから求められた場合には、それが具体的に何なのかは入札指示書を読むなり、オーナーにクラリをするなりして、間違わないようにしましょう。

 

まとめ

以下に、まとめとして、on demand bond、surety bond、そしてStand By LCの特徴をまとめました。ご参考ください。

on demand bond コントラクターの契約違反によってオーナーが被る損害について、必要書類をボンド発行銀行に対して提示すれば、実際に契約違反があったか、損害金額がいくらかを銀行は確認することなく、ボンド発行銀行がボンド記載の金額を上限としてオーナーに支払うことになるもの。
surety bond コントラクターの代わりに、ボンドに記載されている金額を上限として、surety bondを発行したsuretyと呼ばれる保証人が仕事を完成させることを保証するもの(金銭的な賠償を行うことも含む)。
Stand By LC on demand bondと同様に、LCとそこに記載されている必要書類を発行銀行に提示しすることで、コントラクターの契約違反および損害の有無を確認することなく、銀行はオーナーに要求された金額を、LCに記載されている金額を上限としてオーナーに支払うことになるもの。

名称にbondという文言はないが、これもon demand bondと同様に、「ボンド」と呼ばれることが多々ある

 

 

 

 

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