納期遅延LDおよび性能保証LDの支払時期に関する条文例と構造の解説

      2019/11/17

ここでは、「LDの支払時期について定める条文」を見てみます。

 

The Delay Liquidated Damages and Performance Liquidated Damages, if due, shall be due and payable by the Contractor to the Owner within thirty (30) Days following receipt of a written statement from the Owner.

 

この条文は短いので、構造図を示さなくてもよいと思いますが、しかし、厳密に理解しようとするとなかなか難しい点があります。

 

英文を読むときに心がけることは、主語と動詞を特定することです。日本語の文章を読む際にはそんなことを意識しなくても全く困りませんが、英語の場合、特に英文契約書を読む場合には、この意識はとても重要です。

 

では、まず、主語はどこでしょう?これは、The Delay Liquidated Damages and Performance Liquidated Damagesです。

 

その後にif dueという文言がありますが、これはカンマで挟まれているので、挿入句だと気が付くことが重要です。ただ、if dueが挿入句だとして、どういう意味なのでしょう?これを知るには、dueの意味がわからなくてはなりません。契約書で登場するdueは、ほぼ次の3つのどれかの意味であることが多いです。

  • 適切な
  • 支払われるべき
  • 支払期限の来た

ここでは、英文全体の意味から考えて、②であると思われます。ちなみに、このif dueは、if the Delay Liquidated Damages and Performance Liquidated Damages are dueの下線部分を省略したものです。

 

次に、動詞部分を探すと、それはshall beです。shallが助動詞なので、これはすぐに気が付きますね。

 

さて、ここでそのあとに、またdue and payableとdueが登場します。このdueもやはり、英文全体の意味から考えて、上記②の「支払われるべき」という意味であると思われます。また、payableも、同じく「支払われるべき」という意味です。この点、payableは、-ableが付いているので、「支払われ得る」といった意味のように思うかもしれませんが、ここではそう捉えてしまうと意味がよくわからなくなります。ここは、次にwithin thirty (30) Daysとあるので、「30日以内に支払われるべき」という意味となります。

 

ここで、Daysと大文字で始まっている点は、いかにも契約文書という気がします。通常ならば、within thirty daysとするところですが、Daysとしているのは、この文言が定義されている文言であることを示しています。おそらく、祝日・休日を除く営業日、という意味であることが、定義条項に定められていることでしょう。よって、ここでいうthirty Daysは、単純な30日よりも長い日となります。

 

次に、following receipt of written statement from Ownerとあります。このfollowingの品詞は何でしょうか?なんとなく、-ingとあるので、現在分詞や動名詞と捉えてしまうかもしれませんが、ここでは前置詞です。つまり、afterと置き換え可能です。

within thirty (30) Days following receipt of written statement from the Owner

within thirty (30) Days after receipt of written statement from the Owner

 

ここで、receipt=受領ですが、誰が受領するのでしょうか?具体的には、Ownerでしょうか?Contractorでしょうか?これも文の意味から考えると、Contractorでしょう。それは、written statementを誰が発行するのかを考えればわかります。ここでは、from the Ownerとあるので、「Ownerからの書面のstatementを(Contractorが)受領してから30日以内に~」となります。

 

最後に、上記のif dueはなくてもよいようにも思えますが、ここに挿入されることでどのような意味が加わるのでしょうか?

Delay Liquidated DamagesやPerformance Liquidated Damagesが「支払われるべき場合には」という意味になりますが、これは、「コントラクターが納期に遅れたり、性能試験で保証性能を出すことができなかったりすることでLiquidated DamagesをOwnerに支払わなければならなくなった場合には~」という意味になります。

このif dueがないと、Ownerが発行した書面のstatementをContractorが受領したら、Contractorはその後30日以内にとにかくLiquidated DamagesをOwnerに支払わなければいけないかのようにも読めてしまいます。

そうではなく、あくまでContractorがLiquidated Damagesを支払うのは、それらのLiquidated Damagesがdueになった場合だ(つまり、コントラクターが契約に違反して納期に遅れた場合や性能を出せなかった場合)、ということを明確にするために、if dueが挿入されているのだと思われます。

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【Delay Analysisの基礎知識】

納期に遅れた場合に納期遅延LDを課されるのを防ぐためには、納期を延長するようにオーナーに請求すること(EOTクレーム=Extension of Time claim)が必要になります。そのためには、Delay Analysis(遅れの分析)をしなければなりません。これについての基礎知識の解説が以下です。

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

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