合弁契約のポイント④~株式の「引き受け」と「払い込み」その① 出資比率を決める際に考慮すべき要素~

      2019/11/06

授権株式数が決まった。設立時の発行済株式数も決まった。

では、いよいよ実際に、合弁契約の当事者が新会社に出資をすることになります。

つまり、新会社にお金を払い込んで、それと引き換えに株式を得るのです。

この時に発行される株式が「設立時発行済株式(issued shares at the time of the incorporation)」となります。

 

以下は、その例文です。

 

例文

The Parties shall subscribe for shares of the common stock of the NewCo to be issued at the time of its incorporation and pay in full in cash for such shares as follows:

 

  • A  [ ] percent  [ ] shares  [ ] United States Dollars
  • B  [ ] percent  [ ] shares  [ ] United States Dollars

 

意訳

両当事者は、以下のように、設立時に発行される新会社の株式を引き受け、かかる株式のために現金で全額払い込まなければならない。

(1)A社: [ ]%   [ ]株  [ ]米ドル

(2)B社: [ ]%   [ ]株  [ ]米ドル

 

英単語

subscribe forは、「~に申し込む」という意味。subscribe for sharesで、「株式を引き受ける」となります。わかりにくいですが、「株式を取得することを申し込む」=「株式を引き受ける(お金を払って株式を得る)」ということです。

 

in fullは「全額で」という意味。in cashは「現金で」という意味。よって、pay in full in cashで「現金で全額支払う(払い込む)」となります。

 

as followsは、「以下のように」という意味です。使えるようにしておくと便利な表現です。

 

この条文それ自体には特段難しい点はありませんが、実務上重要となるのは、「出資比率をどうするか?」です。つまり、合弁契約の当事者同士は、何%ずつ新会社に出資するのか?という問題です。

 

この点については、大きくは3つ考慮すべき事項があります。

 

  • 外資規制

 

例えば、日系企業がインドに新たに会社を設立しようとしたとします。最初、その日系企業1社だけが親会社として設立しようと考えたとします。しかし、それが許されない場合があります。それが外資規制です。

 

ある特定の事業を行う会社をインドに設立するためには、一定の比率以上をインドの企業からの出資としなければならない、という法律があるのです。

 

これはインドに限らず、どこの国にも存在し得る規制です。そこで、外国に会社を設立しようという場合には、そのような規制の有無・内容を調べる必要があります。

 

その結果、例えば、現地の企業が最低25%は出資しなければならない、ということがわかれば、そのような出資をしてくれる現地の企業を探す必要が生じます。つまり、自社の意思に関わらず、100%出資が叶わないこともありえるのです。

 

  • マジョリティ(過半数)をとるか、マイノリティ(過半数を下回る)でよいか

 

次に、規制に反しない範囲で現地企業に出資してもらうことになったとして、自社が51%以上出資するのか、そうでないのかが大きな分かれ道となります。

 

というのも、51%以上を出資する企業が、新会社の経営を実質的に支配することになるからです。

 

取締役会や株主総会で何かを決める際にも、多くの場合、多数決で決められます。このとき、51%以上出資していれば、自社の意思を経営に反映させることができます。

 

逆に、経営はもう片方の合弁契約当事者に任せ、自社は配当を得られればそれでよい、というのであれば、過半数を得る必要はない、という方向になるでしょう。

 

  • 特別決議事項に口を挟めるようにするか、それとも単に出資をして配当を期待するのみか

 

最後に、特別決議事項の扱いです。上記2で、51%出資すれば、「多くの場合」で自社の意思を新会社の経営に反映できると言いました。

 

そう、あくまで「多くの場合」なのです。

 

これは、51%出資しているだけでは、自社の思ったように新会社を運営できない場合があるということです。

 

重要な事項については、新会社の存在する国の法律で、例えば、株主の75%以上の賛成がないと決議できない、という定めがあるものもあるのです。これを特別決議事項と呼びます。それが具体的に何かは、正にその国の法律によって異なります。

 

そこで、この特別決議事項も含めて自社の意思を押し通したいと考えるか否か、が出資比率を決める上で重要な検討要素となります。

 

合弁契約のポイント⑤~株式の引き受けと払い込み その②出資比率に合意できない相手と合弁契約の交渉を進めても意味がない~

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