徳川家康① 見るべきものはマイナス面かプラス面か?

      2023/07/12

 

家康の天下取りは楽だったのか?

 

「織田がつき 羽柴がこねし天下もち すわりしままに食うは徳川」

 

戦国時代末期に活躍した織田信長、豊臣秀吉、そして徳川家康による天下統一事業について、このような言葉があることをご存じでしょうか。

 

これは、信長が3人の中で最も苦労をして天下統一の直前まで戦い、その後秀吉がそれを引き継いで、関東、中国、四国、そして九州地方を制覇してようやく完成された天下統一でしたが、その後秀吉が死ぬと、あっさりとその統一された天下を家康がかっさらっていった、ということを述べている言葉です。

 

あたかも、家康は、信長と秀吉が苦労して成し遂げて出来上がった成果を、あっさりと、苦労もせずに、言ってみれば漁夫の利のような形で得たに過ぎない、という家康への皮肉が込められているように思えます。

 

私がこの言葉を初めて知ったのは小学生の時でした。

 

当時の私は、歴史のマンガ本を読み始めたときだったので、「家康ってそういう人だったんだ。信長と秀吉はかわいそうな人達だな」と思ったのを今でも覚えています。

 

しばらく家康に対して私が持っていたイメージはそんな程度のものでした。なので、家康のことはあまり好きではありませんでしたし、むしろ、単に「運の良い人」、「ずるい人」と決めつけてしまっていました。

 

そのため、家康から何かを学べるとは思っていませんでした。

 

家康の苦労

 

ところが、後になって、家康について書かれた本をいくつか読んでいくうちに、家康もかなり苦労している人だったことを知りました。

 

以下は、家康の苦労の主なものです。

 

  • 六歳のとき、織田家に人質に取られる

 

  • 父が家臣の裏切りで命を奪われる

 

  • 今川家の人質となる

 

  • 今川義元が織田信長を攻めた時、一緒に尾張に攻め入るが、今川義元が桶狭間で信長に敗れる

 

  • その後、織田信長につき、信長の天下統一事業を支援させられる

 

  • 信長の命令により、自分の妻と長男の命を奪う

 

  • 三方ヶ原で武田信玄と戦い敗れ、命からがら逃げかえる

 

  • 本能寺で信長が明智光秀の謀反にあい、命を落とす。そのとき大阪の堺にいた家康も命を狙われるが、なんとか逃げ切る

 

  • 秀吉に屈服する

 

  • 秀吉の命令で領地を駿府・遠江・三河・甲斐・信濃から関東地方に移される

 

これを見ると、家康も十分な苦労人という気がします。

 

中でも、信長の命令で妻と長男を殺さざるを得ない状況に追い込まれたことや、勝てる見込みがほとんどないと分かっていたにも関わらず、三方ヶ原で武田信玄と戦い、予想通り敗れ、命からがら自分の城に逃げ帰ったりしており、死を覚悟したこともあるようです。

 

田舎であった関東への移封

 

特に注目したいのは、秀吉に屈服した後、長年自分で治めてきた領地から関東に移されたときの家康のふるまい方です。

 

江戸時代の前のこの段階では、関東は未開の土地と考えられていました。実質的な減俸だったことでしょう。

 

家康の家臣達はこの秀吉の命令に対して相当不満が大きかったようです。こんな命令に従うべきではない、という声もあったようです。

 

しかし家康は、文句を言わずに、関東に移ります。

 

そして、当時荒れ地ばかりだった関東平野を開墾することに力を注ぎ、遂には250万石以上の領地に大変身させてしまうのです。

 

家康は、「関東は広大である。確かに今は荒れ地に過ぎないが、ここも開墾すれば荒れ地ではなくなる。もしかしたら、東海地方以上によい領地になり得る」そう思ったようです。

 

さらに、「秀吉の住む大阪からははるかに遠い関東の方が、いざ秀吉と戦わなければならないという状況に陥った時のための武力の蓄えをするのにも、ばれずにできるのでよい」とも考えたそうです。

 

プラスの面はないか?

 

ある状況に置かれた時、マイナス面を見る人と、プラス面を見る人がいます。

 

マイナス面ばかり見ようとする人は、とにかく文句ばかり言います。プラスの面があっても、それを幸せだとは思わずに、とにかくマイナス面ばかりが気になってしまいます。

 

一方、プラス面をなんとか探そうとする人は、マイナス面があっても、「そんな中にも一つでもよい点はないか」と考えます。そして、ようやく見つけたプラス面を何とかよりよいものにならないかと活かす方法を考えます。

 

家康は、まさにそのような、プラスの面を探そうとする人だったと言えるのではないでしょうか。

 

不本意な状況に追い込まれたら

 

会社では、自分がやりたくない仕事をやるように求められる、または不本意な異動を言い渡されることがいくらでもあると思います。

 

でも、そんなときこそ、「こんな状況の中にも、プラスになるものは何かないだろうか?」と考えて生きると、「思っていたほど悪くないかも」と思えるかもしれません。

 

そのような姿勢で取り組んでいると、他の誰かの目に留まり、応援してもらえることもあるかもしれません。

 

もしも、不本意な扱いを受けたら、「もうダメだ!」と思ってあきらめてしまう前に、家康の関東への領地替えからの大逆転を思い出してみてはいかがでしょうか?

 

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