債務不履行とは?~これから契約について学び始める人のための基礎知識①~
2020/01/28

今回から、契約書を読めるようになるために必要な法律の基礎知識について、具体的な解説をしていきたいと思います。
まずは、「債務不履行」についてです。
債務不履行とは何か?
債務とは、簡単に言うと、「他の者に対して何かをする義務」です。
例えば、みなさんが働いている会社を企業Aとし、その企業Aが扱っている製品を、他の企業Bに売る場合を例に考えてみましょう。
企業Aと企業Bとの間では、製品を売る・買うという契約、つまり売買契約を結びます。
その売買契約書には、次のようなことが書かれているとします。
「企業Aは、企業Bに対して、2017月3月31日までに製品を引き渡す。」
「企業Bは企業Aに対して、製品の引き渡しを受けた後10日以内に対価として100万円を支払う。」
この場合、「製品を3月31日までに企業Bに対して引き渡す」ということが、企業Aがこの契約で負っている義務になります。つまり、企業Aの債務です。
一方、「製品の引き渡し後10日以内に対価として100万円を企業Aに対して支払う」ということが、企業Bがこの契約で負っている義務になります。つまり、企業Bの債務です。
そして、この「債務」を果たさないことが、「債務不履行」です。
つまり、企業Aの場合には、「製品を3月31日までに企業Bに対して引き渡」さなかった場合に、債務不履行になります。
また、企業Aが契約に従って製品を企業Bにちゃんと引き渡したのに、企業Bが「企業Aに対して、製品の引き渡し後10日以内に対価として100万円を支払」わなかった場合、企業Bは債務不履行になります。
債務不履行の「不履行」とは、「履行しない」、という意味です。
ここで「履行」とは、「行う」という意味です。
つまり、「債務」=「他の人に対して負っている義務」を行わない、ということが、「債務不履行」となります。
債務不履行の種類
この「債務不履行」は、大きく分けて3つあります。
履行遅滞
一つは、「履行遅滞」と言われるものです。
履行とは、「行う」ことでした。
この「行う」ことが遅滞、つまり「遅れた」ということです。
「履行遅滞」というと、何やら難しい響きですが、簡単に言うと、「義務を果たすのが期限よりも遅れた」というものです。
メーカーに勤めている方は、「納期に遅れる」とか「納期遅延」という言葉をよく聞くかもしれません。
まさにそれが、「履行遅滞」です。
履行不能
債務不履行の2つ目は、「履行不能」です。
「履行」=「行うこと」が不可能になった。
つまり、「もう義務を果たすことができなくなってしまった場合」を指します。
具体例としては、世界に一つしかない壺を売る・買うという取引を想像してみてください。
この壺は世界に一つしかありません。
その壺を買主に引き渡す前に、売主が壊してしまったら、どうなりますでしょうか?
その壺は世界に一つしかないので、もう買主に引き渡すことはできなくなりますよね。
これが「履行不能」となる例です。
通常は、履行が遅れても(履行遅滞)、最後は履行できる場合が多いと思います。
しかし、時には、上記の壺の例のように、履行をすることができなくなること、つまり「履行不能」になることもあります。
不完全履行
債務不履行の3つ目は、「不完全履行」です。
不完全履行とは、契約で負っている期限までに一応履行をしたのですが、それが不完全な場合を指します。
具体例は次のようなものがあります。
ある製品を2017年3月31日までに引き渡さなければならない義務を企業Aが企業Bに対して負っているとします。
企業Aは実際に、2017年3月31日までに企業Bに対して製品を引き渡しました。
しかし、製品Aは契約で合意した性能を満たすものではありませんでした。つまり、完全な製品ではなかったのです。
これが、「履行は一応したが、完全ではなかった」、つまり、「不完全履行」の例です。
債務不履行のまとめ
ここまでの解説をまとまると以下のようになります。
債務不履行とは、他の者に対して負っている義務に違反した場合を指す。
その債務不履行には3つの場合がある。
それは、履行が遅れた「履行遅滞」
履行ができなくなってしまった「履行不能」
そして、一応履行はしたもののそれは完全ではなかった「不完全履行」
上記の中で、メーカーがその取引の中で実際に遭遇してしまうのは、
納期に遅れる履行遅滞
不完全な製品のまま相手に渡す不完全履行
であることが多いでしょう。
(※履行することが不可能になる履行不能はあまりないように思います)
債務不履行に陥ったらどうなる?
では、債務不履行に陥った場合、何が起きるのでしょうか?
想像してみてください。
みなさんの企業が欲しいと思った製品が、約束の期限までに売主から引き渡されなかった場合。
みなさんの企業が欲しいと思った製品が、引き渡し前に壊れてしまい、結局引き渡せなくなりました、と売主から伝えられた場合。
みなさんの企業が欲しいと思った製品が、一応引き渡されたものの、思っていたような性能を出すことができなかった場合を。
「ちゃんと義務を果たさないことによって自分たちが被った損害を賠償して欲しい!」と思うのではないでしょうか。
というわけで、実際、債務不履行に陥ると、損害賠償の責任が生じます。
その理由はこちらに詳しく記載しました。
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