英文契約における条文の基本類型を覚えよう!
2017/03/11

英文契約のドラフトの練習 第20回
今回は、英文契約の中で頻繁にでてくる条文の類型についてご説明したいと思います。
英文契約書には、色々な条文が出てきます。
それらをカテゴリー分けすることは、到底できないだろう。
私は最初、そう思っていました。
しかし、何本も英文契約書を読んでいるうちに、条文は、次のように、大きくは次の6つのパターンに分けられることに気付きました。
1. 当事者の義務
2. 当事者の権利
3. 当事者の権利・義務ではなく、契約当事者が従わなければならないルール
4. 当事者によるある事実の認識・理解
5. 当事者によるある事実の表明
6. その他
以下、上記6つのカテゴリーについてご説明します。
1と2は、契約書とは、そもそも、当事者間の権利義務を確認する文書であるので、理解できると思います。そして、義務はshallで、権利は、be entitled toまたはmayで表すので、1.「当事者の義務」は、主語+shall+動詞で、2.「当事者の権利」は、主語+be entitled to/may+動詞で表すことができます。
次に、3.「当事者の権利・義務ではなく、契約当事者が従わなければならないルール」は、例えば、定義条項とか、準拠法などの一般条項の一部です。定義条項は、当事者の義務ではなく、「この契約書で使われる文言は、こういう意味で使いますよ」というルールなのです。準拠法も、「この契約書は、どこの国の法律に従って解釈するか」を定めたルールです。よって、これらは、shallでもmayでもなく、現在形で記載されます。
そして、4.「当事者によるある事実の認識・理解」を表す条文です。これも、当事者の権利や義務を定めるものではありません。当事者が、「これこれこういう事実を認識しています!理解しています!」ということを定める条文です。これは、主語+acknowledge(s)/understand(s)+目的語という形で定められます。この場合も、shallもmayも使われません。
さらに、5.「当事者によるある事実の表明」で、当事者が、「これこれは真実です!」と相手方当事者に宣言するような条文です。これは、主語+represent(s)/warrant(s)+目的語の形で使われます。これもやはり、当事者の権利でも義務でもないので、shallもmayも使われません。
最後は、6.「その他」ですが、これは、例えば、契約書の冒頭の文章(契約の背景の記載も含む)や終わりの部分の文章です。これはもう「型」があるので、どう書くかについてさほど悩むことはないでしょう。
以上をまとめると、次のようになります。
内容 | 基本形 | |
1 | 義務 | 主語+shall+動詞 |
2 | 権利 | 主語+be entitled to/may+動詞 |
3 | ルール | 主語+動詞+目的語(助動詞なし) |
4 | 事実の認識・理解 | 主語+acknowledge(s)/understand(s)+目的語 |
5 | 事実の表明 | 主語+represent(s)/warrant(s)+目的語 |
6 | その他 | 冒頭・背景・終わりの部分 |
上記の中で、1と2、つまり、当事者の権利義務を定める条文が、契約書中の8割以上を占めていると思います。
英文契約中の条文を書く際は、上記のどの類型に当たるものを書こうとしているのかを意識すると書きやすくなると思います。