英文の秘密保持契約の解説⑨~受領した秘密情報を開示してよい範囲はどこまで?(その②)~

      2020/01/28

 

前回は、下の日本語の条文の黄色部分について解説しました。

 

情報受領者は、(i本契約に定められた目的の遂行のために秘密情報を知る必要がありかつ(ii本契約に定められた秘密保持義務以上の秘密保持義務を契約書またはその他のものによって課された自社の取締役、執行役、従業員、外部の財務・法律アドバイザーに対して、秘密情報を開示することができる。

 

具体的には、下の英文のようになります。

 

The Receiving Party may disclose the Confidential Information to its directors, officers, employees, external financial or legal advisors who (i) need to know the Confidential Information in order for the Receiving Party to carry out the Purpose.

 

今回は、残りの白色部分である(ii)「本契約に定められた秘密保持義務以上の秘密保持義務を契約書またはその他によって課された(取締役等・・・)」について説明します。

 

ここの部分については、「秘密保持契約の数だけ表現の種類がある」と思えるほどたくさんありますので、結構混乱しやすい箇所ではないでしょうか。

 

そこで、今回は、その中から比較的文法的にも単語的にも易しめだと私が感じている2つの表現方法をご紹介したいと思います。

 

 

「本契約に定められた秘密保持義務」について

まず、「本契約に定められた秘密保持義務」を英語にすると、次のようになります。

 

the confidentiality obligation set forth in this Agreement

 

この他に、次のような表現もあるでしょう。

 

the confidentiality obligation under this Agreement

 

the obligation of confidentiality provided in this Agreement

 

ここで、「~に定められた」を表す英語は、上記にあるようなset forth inunderprovided inの他にも、specified instipulated in等複数ありますので、自分でドラフトする際にはどれを使うかを決めておくとよいと思います。

 

次に、「秘密保持義務」を表す表現としては、confidentiality obligationobligation of confidentialityがありますが、「of」を使わなくて済むのなら、そちらの方が読みやすいし、かつ、文字も少なくて済むので、confidentiality obligationの方が好ましいと思います。

 

 

「~以上の厳しさの秘密保持義務」について

 

続いて、「~以上の(厳しさの秘密保持義務)」を表す表現としては、以下のものが考えられます。

 

not less stringent than A

 

stringentは、「厳しい、厳重な」という意味の形容詞です。

 

よって、「Aよりも厳しさが劣らない~」=「A以上の厳しさの~」となります。

 

または、「実質的に同等の(秘密保持義務)」という意味として、以下の表現も使われています。

 

materially similar to A

 

そして、「秘密保持義務を課された」は、

 

be bound to confidentiality obligationと表すことができます(「秘密保持義務に拘束された」という意味)。

 

以上から、「本契約に定められた秘密保持義務以上の秘密保持義務を契約書またはその他のものによって課された」は、次のように書くことができます。

 

be bound to confidentiality obligation by an agreement or otherwise to the extent not less stringent than the confidentiality obligation set forth in this Agreement

 

または、同様の意味ですが、「本契約に定められた秘密保持義務と同等の秘密保持義務の条文をもつ秘密保持契約を情報受領者との間で締結した」という英文として、以下のようなものも考えられます(ややこしい日本語ですが、しっかり読めばわかるはず!)。

 

enter into a confidentiality agreement with the Receiving Party containing provision materially similar to the confidentiality obligation under this Agreement

 

 

まとめ

 

では、ここまでの英文を全てつなげてみます。これで、下の全てを英語の条文にすることができました。

 

情報受領者は、秘密情報を、(i)本契約に定められた目的の遂行のために秘密情報を知る必要があり、かつ(ii)本契約に定められた秘密保持義務以上の秘密保持義務を契約書またはその他のものによって課された、自社の取締役、執行役、従業員、外部の財務・法律アドバイザーに対して開示することができる。

 

The Receiving Party may disclose the Confidential Information to its directors, officers, employees, external financial or legal advisors who (i) need to know the Confidential Information in order for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) be bound to confidentiality obligation by an agreement or otherwise to the extent not less stringent than the confidentiality obligation set forth in this Agreement.

 

または、(ii)の部分を変えて、次のようにすることもできます。

 

The Receiving Party may disclose the Confidential Information to its directors, officers, employees, external financial or legal advisors who (i) need to know the Confidential Information in order for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) enter into a confidentiality agreement with the Receiving Party containing provision materially similar to the confidentiality obligation under this Agreement.

 

 

穴埋め式で練習

 

では、最後に、上記の2つの英文について、穴埋め形式の問題で練習してみてください。

 

ここの条文は、実際に修正したり、自分でドラフトしたりすることがよくあるものだと思いますので、よく使われる表現について自分で使いこなせるようになっておくと便利だと思います。

 

問題:

The Receiving Party [may] disclose the Confidential Information to its [directors], officers, [employees], external financial or [legal] advisors who (i) need to [know] the Confidential Information in [order] for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) be [bound] to [confidentiality] obligation by an agreement or otherwise to the extent not less [stringent] than the confidentiality obligation set forth in this Agreement.

 

訳:

情報受領者は、秘密情報を、(i)本契約に定められた目的の遂行のために秘密情報を知る必要があり、かつ(ii)本契約に定められた秘密保持義務以上の秘密保持義務を契約書またはその他のものによって課された、自社の取締役、執行役、従業員、外部の財務・法律アドバイザーに対して開示することができる。

 

回答:

The Receiving Party [may] disclose the Confidential Information to its [directors], officers, [employees], external financial or [legal] advisors who (i) need to [know] the Confidential Information in [order] for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) be [bound] to [confidentiality] obligation by an agreement or otherwise not less [stringent] than the confidentiality obligation set forth in this Agreement.

 

 

問題:

The Receiving Party [may] disclose the Confidential Information to its directors, [officers], employees, external [financial] or legal advisors who (i) [need] to know the Confidential Information in order for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) [enter] into a [confidentiality] agreement with the Receiving Party containing provision [materially] similar to the confidentiality obligation under this Agreement.

 

訳:

情報受領者は、秘密情報を、(i)本契約に定められた目的の遂行のために秘密情報を知る必要があり、かつ(ii)本契約に定められた秘密保持義務と実質的に同等の条文を含む秘密保持契約を情報受領者との間で締結した、自社の取締役、執行役、従業員、外部の財務・法律アドバイザーに対して開示することができる。

 

回答:

The Receiving Party [may] disclose the Confidential Information to its directors, [officers], employees, external [financial] or legal advisors who (i) [need] to know the Confidential Information in order for the Receiving Party to carry out the Purpose and (ii) [enter] into a [confidentiality] agreement with the Receiving Party containing provision [materially] similar to the confidentiality obligation under this Agreement.

 

 

今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

次回は、「情報受領者による秘密情報の管理の程度」についての英文を解説しますので、お楽しみに!

その理由はこちらに詳しく記載しました。

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英文の秘密保持契約の解説の目次

サクッと全体像をつかむ 秘密の保護と管理 保証・権利・返還
有効期間 「秘密の保持」 第三者への開示禁止
目的外使用の禁止 開示してよい範囲(その①) 開示してよい範囲(その②)
情報管理義務 差し止め請求 「現状渡し」と「無保証」
権利の留保 返還・破棄 定義条項

 

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