仕事が多くて焦ってきたら

突然ですが、問題です。

あなたは、3万の兵隊の司令官だとします。今、西から2万の軍と東から2万5000の軍、そしてさらに東から5000の軍の合計5万が、あなたの軍に迫ってきています。ここであなたは、どのような指示を自軍の兵隊に行いますか?

この問いに対するナポレオンの回答は次のようなものでした。

「まず、自軍の3万を、西方から迫る2万の敵を粉砕するために差し向け、それを撃退するや取って返して全軍で東の敵2万5000を壊滅させ、最後にさらに東からやってくる5000を倒す」

これを実現したのが、ナポレオン率いるフランス軍とオーストリア軍との「ガルダ湖畔」の戦いです。この当時は、敵が戦力を分散させて攻め寄せてきた際には、こちらも同様に分散させて向かい打つのが戦術上の定石とされていました。それだけに、その定石を取らずに個別撃破を行ったこの戦術は、ナポレオンの数ある戦いの内でも高く評価されています。

 

日露戦争における日本海海戦といえば、T字戦法が有名です。この戦法の肝は、図にあるように、「戦隊の主砲・副砲の照準を、ロシア艦隊の先頭にのみ合わせ、短時間で集中的に砲弾を浴びせかけ、ロシア艦隊を先頭から順に沈没させる」というものでした。

対するロシア艦隊は、戦艦毎、そして大砲毎にバラバラに照準を合わせて打ってきました。

結果は、戦闘開始後最初の30分で日本側は旗艦を含むロシア艦隊に甚大な損害を与え、その後の戦いの主導権を握ることに成功しました。一方、日本側は水雷廷三隻が沈没しただけで2日間の戦いを終えました。

 

ナポレオンの戦術とT字戦法における共通点は何でしょうか?

それは、戦力を集中させたことです。

では、なぜ戦力を集中させたのでしょう?

それは、単純に彼我の戦力数を比較したときに、ナポレオンも日本艦隊も、敵に劣っていたためです。つまり、ガルダ湖畔の戦いは、ナポレオン3万対オーストリア5万の戦いです。日本海海戦は、戦艦数でいえばロシア8隻対日本4隻。9インチ以上の巨砲の数でも日本は劣勢でした。

しかし、戦場におけるある時点、ある場所において、こちらの数を圧倒的多数に持っていく工夫を施しました。ナポレオンはほぼ全軍を西の敵に集中させることで、あるタイミングでは3万対2万、それに次いで、3万対2万5000という戦いとしました。日本艦隊は、ロシア艦隊の先頭を常に上から抑えつけるように戦隊を運動させ、その上で砲台の照準を1点に集中することで自分が多数派になる状況を作り出しました。

こうして、一見劣っていた両者は、わずかな時間、しかも限られた領域ではありますが、一時的に多数派となり、その間に一気に敵を殲滅しました。

 

仕事において、「やらなければならないことがあり過ぎて首が回らない!」という事態に陥ることは時々あるでしょう。そんなとき、あせってしまい、やらなければならないことに同時並行的に手を付けてしまうことがないでしょうか。そうしてしまうと、どれも中途半端となります。その結果、動いているわりに、一向に仕事が減らない、という事態に陥ります。

このようなときに私がいつも意識するようにしているのは、「人は、同時に2つのことを考えることはできない」ということです。常に1度に1つしか考えられないのです。まず、優先順位をつけ、1つずつ個別に全力で対処してこなしていけば、確実に仕事は減っていきます。

また、まだ誰も出社していない、そのため電話も一切かかってこないような早朝に出社して、1人仕事をこなすのも効果的です。途中で電話が来たり、他の仕事を頼まれたりすると、気が散ります。集中力が途切れ、パフォーマンスが低下します。意識を集中させるために、そのような早朝に数日間出社してみると、嘘のようにそれまでたまっていた仕事が片付くことがあります。逆に言えば、それだけ普段の仕事は、様々なことで妨げられているのです。

何かを学ぼうとするときにも、この戦力の集中はとても有効です。一時期に色々なモノを同時並行的に勉強しようとするよりも、この期間はこれに特化する!と決めると、その分野についてマスターするのはそれだけ早くなります。

 

「一度に何かに囲まれた」と感じたら、「結局人間は、一度に一つにしか対処できない」ということ、そして上記のナポレオンと日本海海戦のT字戦法を思い出すと、突破口が見えてくるかもしれません。

ただし、戦力の大部分を一点に集中して攻めることは、確かに攻撃力は高まりますが、防御は弱まります。消耗もしやすいでしょう。

したがって、「ある時点、ある場所、ある状況」という短期決戦に有効な方法であることは心に留めておいてください。

 

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