成長を阻害する原因「第一位」

「私はなにぶん、下級武士だ。普通に働いていたら、一生を平凡のうちで終えるだろう。自分の考えを藩政に活かすには、もっと重い役に付く必要がある。しかし、どうやって?まずは久光様に知られる者にならなければ・・・。そういえば、久光さまは囲碁が好きらしい。囲碁などこれまでしたことはないが・・・、まずは囲碁を習い、そこから久光様に何か繋がりを持てないか模索するか・・・。」

数ケ月後・・・。

「久光様の囲碁の相手をよくしている者の下で囲碁を習うことができることになった。彼を介して久光様に自分のことや考えを伝えてもらうことにしよう。そうすれば、久光様も徐々に自分に興味をもってくれるようになるはずだ。」

また数ケ月後・・・。

「久光様が読みたいという本、あれは城下のあいつが持っていたものだな。その本を久光様にお貸しするとともに、その本の中に今の世の中や政治についての自分の意見を書いて挟んだらどうなるだろう?久光様に自分の考えを知ってもらえるかもしれない。自分のようなお目通りできない身分の者が意見書を出すなど、無礼であろうか・・・?いや、まずは試してみよう!」

こうして、薩摩藩の下級武士だった彼は、藩主の父である島津久光に目通りがかない、その後彼は異例の抜擢を受け、幕末の薩摩藩で中心的な役割を果たすようになりました。彼は、後に「維新の三傑」といわれるようになる大久保利通、囲碁を勉強し始めた当時30歳です。

 

上記のエピソードにより私がお伝えしたいことは何でしょう?「権力者に取り入ることの重要性」?違います。私が注目したいのは、大久保の一見遠回りとも思えるその「地道さ」です。

 

大久保と同じく薩摩藩士であった有馬新七らは、尊王攘夷のために京都で決起しようとし、寺田屋に立てこもります。自分の藩士たちが過激な行為に出るのを好まなかった島津久光は、彼らを殺します。これは寺田屋事件と呼ばれます。

有馬新七らには、大久保のような悠長で迂遠で、そして地味な活動など到底理解できませんでした。おそらく彼らは、大久保が囲碁の練習をしているときも、「囲碁で勤皇がなるか!」という気持ちだったでしょう。

この他にも、脱藩したり、権力者を暗殺によって排除したり、外国の船に乗り込もうとして拒絶され、その結果獄に繋がれたり・・・というように、この時期の若者たちの過激な活動は枚挙にいとまがありません。彼らの多くは若くして非業の死を遂げます。ほとんどなにも成し遂げずに死んだ者も多いです。結果を気にせず、ただ行動に移すべきという考えだったようです。

有名なところでは、吉田松陰が「僕は忠義をするつもり。君らは功業をなすつもり」と述べて、過激な行動を起こすことを逡巡する若手たちを皮肉りました。

 

一方、大久保は、次のように述べています。

「過ぎたるは及ばざるがごとし、という諺は誤りである。正しくは、過ぎたるは、及ばないことよりもずっと悪い、だ。決して、やり過ぎてはいけない。」

つまり、明治維新という過激かつ抜本的な改革を実行した大久保は、実は徹底した「漸進主義者」だったのです。

彼が無理をしたのは、幕末のぎりぎりの段階、そう、大政奉還以後、徳川慶喜を新政府の構成メンバーから排除するために行った王政復古のクーデターから鳥羽伏見の戦いにかけた一連の武力討幕活動のときくらいです。それ以外は、自分にできることだけをひたすら積み重ね、その結果、誰も到達できないような高みに達しました。

 

若い人の中には、何か人生をかけて自分で挑むに値する大きなものを無理やり設定し、それに向かって走っていかなければ!・・・と、思い込む人がいます。

しかし、焦らないほうがよいと私は思います。焦ると、地道に力を付けなければいけないものをすっ飛ばしてしまい、基礎が身につかず、結局数年経過時には、「あれ?全然成長してないじゃない」ということになります。入社当初に優秀であるように思えた人ほど、そのようになる傾向があるように私は感じました。

「そんな地味な仕事、カッコ悪くてやっていられない」とでも思うのでしょうか。

 

世界10カ国で翻訳され、200万部以上売れた若者に向けた本である『つらいから青春だ』では、若者に焦る必要はないと伝えるために、人生時計なるものを紹介しています。

人生時計とは、人生80年を24時間に当てはめるものです。

例えば、就職する22歳は、朝の7時前となります。まだ朝起きたばかり、これから1日が始まるタイミングです。30歳は朝9時。出社して、「これから仕事だ!」という時間になります。私は就職したのが27歳の時と割と遅めだったこともありますが、30代から本格始動というのは、そう間違っていないように思います(そして60歳は午後6時になります。ちょうど自宅に帰る時間が退職の時期と重なります)。

 

実際に力をつけ、周囲から認められ始めると、逆に昔には戻れない程に仕事を任されるようになります。なので、特に20代から30代の前半はあせらずに、着実に力をつけることに気を配ってはいかがでしょう。

 

あなたの人生時計は、今、何時ですか?

 

上記は、2冊目の著書『歴史が教えてくれる働き方・生き方』の50個のエピソードの中の1つです。他にも様々な時代と人物のエピソードが掲載されております。お求めの際は、できるだけ、通販ではなく、リアルの書店でご購入下さい!(その理由は、こちらに詳しく記載いたしました。ご確認ください)

なお、金額は、税込みで1650円です。

公開日:
最終更新日:2020/01/26