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本郷塾で学ぶ英文契約

Force Majeureとは何か?

2024/01/05
 

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英文契約基礎から実践講座

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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コントラクターの原因で工程が遅れ、納期に間に合わなかった。

 

この場合、納期遅延についての責任をコントラクターは負うべきでしょう。

 

では、契約当事者のせいではない出来事が原因でコントラクターによる履行が妨げられ、工程に遅れが生じた場合はどうでしょうか?

 

この場合、コントラクターが責任を取らされるのはおかしいですよね。

 

この、契約当事者のせいでもない出来事が原因で工程に遅れた場合の扱いについて、EPC契約では一般に、次のような定めがあります。

 

「その分、納期が延長される」

 

このように、契約当事者のせいではない出来事を、海外案件のEPC契約では、Forth Majeureと言います。

 

日本語では、「不可抗力」という意味です。

 

このForce Majeureの条項には、次のようなことが定められています。

 

・何がForce Majeureなのか?(定義)

・Force Majeureの効果は何か?(効果)

・Force Majeureに当たるとして、納期を延長してもらうための手続きは何か?(手続き)

・Force Majeureが長期間継続した場合の扱いは?(特殊なケース)

 

 

Force Majeureとは何か?

 

EPC契約では、Force Majeureとは何かを具体的に定義しています。

 

一言で言えば、「契約当事者間のコントロールの範囲外の出来事」ですが、より具体的に定義しています。

 

例えば、次のような感じです。

 

「Force Majeureとは、EPC契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事、および、以下を含むがこれらに限らないものである。

 

戦争、戦闘、侵略、内戦

反乱、革命、暴動、反抗、共謀、騒動、テロ

ストライキ、ロックアウト、輸入制限、伝染病

地震、地滑り、洪水、台風、サイクロン、ハリケーン、その他の自然災害」

 

このように、Force Majeureとは、「当事者の合理的なコントロールを超えた出来事」と一般的に定めると同時に、具体的な出来事を数多く列挙するという形式をとっています。

 

この理由は、単に「当事者の合理的なコントロールを超えた出来事」と定めるだけだと、実際に契約当事者のどちらかがForce Majeureに当たると考える出来事が生じたときに、もう片方の契約当事者が、「いや、それはForce Majeureじゃないだろう。それは十分、合理的なコントロールの範囲内だ」と主張し、争いになる可能性があります。

 

そこで、一般的な定めをしつつ、具体的なForce Majeure事由も定めておくことで、なるべく、そのような「何がForce Majeureに当たるのか?」という争いが生じないようにされているのです。

 

ここで、EPC契約において、より多くの義務を負っているのは、注文者であるオーナーよりも、請負人であるコントラクターです。

 

つまり、Force Majeureの影響を受けやすいのは、コントラクターの方だということになります。

 

そのため、Force Majeureに当たる出来事が多いほうが、コントラクターに有利になると一般的には言えます。

 

よって、コントラクターとしては、Force Majeureにあたる出来事は、なるべく広く解釈されるようにするほうがよいでしょう。

 

そのためには、以下の3つの方法があります。

 

・Force Majeureにあたる具体例は、できるだけ多く定める。

 

・Force Majeureにあたる具体例は、制限列挙ではなく、例示列挙の形とする。

 

・「契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事」という一般的な定めとは独立して、Force Majeureの例示列挙をする。

 

以下、個別に説明します。

 

Force Majeureにあたる具体例は、できるだけ多く定める。

 

これは、すぐに納得いただけると思います。具体例の数が多ければ多いほど、実際に何かが起きたときに、「具体例に当たる」可能性が高まるからです。

 

 

Force Majeureにあたる具体例は、制限列挙ではなく、例示列挙の形とする。

 

これは、英文契約で頻出する表現の一つである、including, but not limited to,を使うべきだということです。

 

これを使えば、この表現の後に列挙される出来事だけがForce Majeureに該当するのではなく、これ以外にも、Force Majeureになり得ることになります(例示列挙)。

 

一方、単に、includingという表現だけで具体例を列挙すると、Force Majeureに当たるのは、ここで列挙したものに限られることになります(制限列挙)。

 

そのため、ぜひ、including, but not limited to,を使うようにしてください。

 

 

・「契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事」という一般的な定めとは独立して、Force Majeureの例示列挙をする。

 

これは、以下の二つの条文を見ていただければわかると思います。

 

①    Force Majeureとは、戦争、革命、自然災害を含むがこれに限らない出来事で、かつ、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事である。

 

②    Force Majeureとは、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事、および、戦争、革命、自然災害を含むがこれに限らない出来事である。

 

上記の①と②のどちらがForce Majeureを広く定義できていると思いますか?

 

答えは、②です。

 

理由は、①の場合は、単なる戦争、革命、自然災害が起きたというだけでは、Force Majeureに当たるとは言えません。それに加えて、契約当事者の合理的なコントロールを超えていることを示さなければならなくなります。これはForce Majeureに当たると主張しようと思う契約当事者にしてみると、面倒です。

 

一方、②の場合は、戦争、革命、自然災害が起きたら、それは直ちにForce Majeureに当たることになります。そして、さらにそれらに当たらなくても、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事も、その点を示すことができれば、Force Majeureに当たることになります。

 

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EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

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