EPC契約における不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か?

      2017/06/03

 

コントラクターの原因で工程が遅れ、納期に間に合わなかった。

 

この場合、納期遅延についての責任をコントラクターは負うべきでしょう。

 

では、契約当事者のせいではない出来事が原因でコントラクターによる履行が妨げられ、工程に遅れが生じた場合はどうでしょうか?

 

この場合、コントラクターが責任を取らされるのはおかしいですよね。

 

この、契約当事者のせいでもない出来事が原因で工程に遅れた場合の扱いについて、EPC契約では一般に、次のような定めがあります。

 

「その分、納期が延長される」

 

このように、契約当事者のせいではない出来事を、海外案件のEPC契約では、Forth Majeureと言います。

 

日本語では、「不可抗力」という意味です。

 

このForce Majeureの条項には、次のようなことが定められています。

 

・何がForce Majeureなのか?(定義)

・Force Majeureの効果は何か?(効果)

・Force Majeureに当たるとして、納期を延長してもらうための手続きは何か?(手続き)

・Force Majeureが長期間継続した場合の扱いは?(特殊なケース)

 

 

Force Majeureとは何か?

 

EPC契約では、Force Majeureとは何かを具体的に定義しています。

 

一言で言えば、「契約当事者間のコントロールの範囲外の出来事」ですが、より具体的に定義しています。

 

例えば、次のような感じです。

 

「Force Majeureとは、EPC契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事、および、以下を含むがこれらに限らないものである。

 

戦争、戦闘、侵略、内戦

反乱、革命、暴動、反抗、共謀、騒動、テロ

ストライキ、ロックアウト、輸入制限、伝染病

地震、地滑り、洪水、台風、サイクロン、ハリケーン、その他の自然災害」

 

このように、Force Majeureとは、「当事者の合理的なコントロールを超えた出来事」と一般的に定めると同時に、具体的な出来事を数多く列挙するという形式をとっています。

 

この理由は、単に「当事者の合理的なコントロールを超えた出来事」と定めるだけだと、実際に契約当事者のどちらかがForce Majeureに当たると考える出来事が生じたときに、もう片方の契約当事者が、「いや、それはForce Majeureじゃないだろう。それは十分、合理的なコントロールの範囲内だ」と主張し、争いになる可能性があります。

 

そこで、一般的な定めをしつつ、具体的なForce Majeure事由も定めておくことで、なるべく、そのような「何がForce Majeureに当たるのか?」という争いが生じないようにされているのです。

 

ここで、EPC契約において、より多くの義務を負っているのは、注文者であるオーナーよりも、請負人であるコントラクターです。

 

つまり、Force Majeureの影響を受けやすいのは、コントラクターの方だということになります。

 

そのため、Force Majeureに当たる出来事が多いほうが、コントラクターに有利になると一般的には言えます。

 

よって、コントラクターとしては、Force Majeureにあたる出来事は、なるべく広く解釈されるようにするほうがよいでしょう。

 

そのためには、以下の3つの方法があります。

 

・Force Majeureにあたる具体例は、できるだけ多く定める。

 

・Force Majeureにあたる具体例は、制限列挙ではなく、例示列挙の形とする。

 

・「契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事」という一般的な定めとは独立して、Force Majeureの例示列挙をする。

 

以下、個別に説明します。

 

Force Majeureにあたる具体例は、できるだけ多く定める。

 

これは、すぐに納得いただけると思います。具体例の数が多ければ多いほど、実際に何かが起きたときに、「具体例に当たる」可能性が高まるからです。

 

 

Force Majeureにあたる具体例は、制限列挙ではなく、例示列挙の形とする。

 

これは、英文契約で頻出する表現の一つである、including, but not limited to,を使うべきだということです。

 

これを使えば、この表現の後に列挙される出来事だけがForce Majeureに該当するのではなく、これ以外にも、Force Majeureになり得ることになります(例示列挙)。

 

一方、単に、includingという表現だけで具体例を列挙すると、Force Majeureに当たるのは、ここで列挙したものに限られることになります(制限列挙)。

 

そのため、ぜひ、including, but not limited to,を使うようにしてください。

 

 

・「契約当事者の合理的なコントロールを超える出来事」という一般的な定めとは独立して、Force Majeureの例示列挙をする。

 

これは、以下の二つの条文を見ていただければわかると思います。

 

①    Force Majeureとは、戦争、革命、自然災害を含むがこれに限らない出来事で、かつ、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事である。

 

②    Force Majeureとは、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事、および、戦争、革命、自然災害を含むがこれに限らない出来事である。

 

上記の①と②のどちらがForce Majeureを広く定義できていると思いますか?

 

答えは、②です。

 

理由は、①の場合は、単なる戦争、革命、自然災害が起きたというだけでは、Force Majeureに当たるとは言えません。それに加えて、契約当事者の合理的なコントロールを超えていることを示さなければならなくなります。これはForce Majeureに当たると主張しようと思う契約当事者にしてみると、面倒です。

 

一方、②の場合は、戦争、革命、自然災害が起きたら、それは直ちにForce Majeureに当たることになります。そして、さらにそれらに当たらなくても、契約当事者の合理的なコントロールを超えた出来事も、その点を示すことができれば、Force Majeureに当たることになります。

 

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