EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策④ 仕様書記載の解釈の食い違いと仕様書に記載がない事項

      2017/06/03

 

コストオーバーランの主たる原因と対策

 

客先であるオーナーから見積もりのために与えられた仕様書中の記載の解釈について、EPC契約締結後(契約金額合意後)にオーナーとコントラクター間で食い違いがあることが分かった場合

 

原因:

発注者であるオーナーは、仕様書中のある記載についてAと解釈していたのに、コントラクターはBと解釈し、コントラクターはその解釈に基づいて見積もりをして契約金額を合意しました。

 

その後、EPC契約の履行を開始してから、オーナーとコントラクター間の解釈の食い違いがあることが判明し、その後両当事者間で協議をしました。

 

しかし、オーナーは全くコントラクターの解釈が正しいと認めず、そのうちコントラクターがオーナーとの関係等を考慮してしぶしぶオーナーの解釈Aが正しいことで同意してしまいました。

 

この場合、コントラクターは解釈Aに基づいて自己の費用負担で契約を履行し直さなければならなくなります。

 

その結果、コントラクターは、EPC契約締結時に想定していた以上の費用を負担することになり、その解釈の食い違いによって生じる影響度合いによっては、コントラクターが得られるはずであると見込んでいた利益分を、解釈Aに基づいて契約を履行することによって生じる費用で全て食いつぶすことにもなりかねません。

 

対策:

①   見積もり時点でオーナーが提示した仕様書中にわずかでも不明な記載があった場合には、オーナーに必ずその記載の意味を文書で質問し、文書で回答をもらう。

→通常はこれで防ぐことができるでしょう。

 

②   ①を実施しても、やはり契約締結後に仕様書の解釈に疑義が生じた場合には、主に以下の2通りの状況になると思われる。以下、個別にそのような状況になった場合の対応策を記載する。

(i)        オーナーとの協議後、コントラクターの解釈が客観的にも誤りであったとコントラクターも認めざるを得ないような場合

→オーナーの解釈が正しいことを認めざるを得ない。この場合には、オーナーの解釈に基づいて作業をやり直すのに生じる追加費用はコントラクターが負担する。

 

(ii)       オーナーとの協議後、コントラクターの解釈が客観的にも正しいとコントラクターが信じている場合

→コントラクターの解釈が正しい点を丁寧にオーナーに説明する。それでもオーナーが納得しない場合、おそらくコントラクターは以下を懸念せざるを得なくなる。

(a)   解釈に決着がつかないがために作業を中断していることによって、納期を守れなくなること。

(b)   コントラクターの解釈に基づいて作業を進めることをオーナーが許さず、「そのままコントラクターが作業を継続すれば、最終的に製品を検収しないし、支払いもしない」とコントラクターを脅してくること。

 

ここで、本当にコントラクターの解釈が客観的に正しいと考えられる場合には、オーナーが自分の解釈に従うことを要求することは、EPC契約上は、オーナーによる「仕様変更」に該当することになるので、オーナーの解釈に従って作業をやり直すために生じる追加費用はオーナーによって全額精算されるべきであり、かつ、そのために納期は必要な分だけ延長されるべきである。

 

よって、オーナーには、「弊社は弊社の解釈が客観的に正しいと考えている。それでも御社が御社の解釈に基づいて作業をやり直すように求めるのであれば、これは契約書○条の「仕様変更(または契約変更)」に該当するので、弊社は御社に対して、そのための追加費用として○円、および納期延長として△日を要求する。」と文書で伝えるべき。

 

これに対してオーナーが「これはEPC契約上の仕様変更ではない」と主張してきた場合には、「それでは、EPC契約書○条の紛争解決条項に従い、裁判(または仲裁)で争う必要がある」と主張することができる。

 

ここで、実際に裁判や仲裁で争う場合でも、契約上、コントラクターはその作業を止めることはできないようになっていることが多い。

 

つまり、コントラクターはオーナーの要求通りに作業をやり直さなければならないが、ただ、そのために生じる追加費用および納期延長について裁判(または仲裁)で争うことになる。

 

裁判や仲裁に行かなければならないというのは気が重くなる話だが、このようにしないと、莫大な金額をコントラクターが自己負担しなければならず、かつ、納期延長もされなければ、納期遅延LDも負担させられることになりえる。

 

よって、EPC契約締結後まもなく両当事者の解釈の食い違いがわかり、かつ、オーナーの解釈に基づいて作業をやり直しても追加費用や時間がさほどかからないという場合でない限り、コントラクターは裁判または仲裁で徹底的に争うべきだと考える。

 

*ご参考~仕様書に記載のない事項について、オーナーが契約締結後に要求してきた場合~

 

コントラクターによる見積もりのために提供した仕様書に具体的な要求が記載されていない事項について、オーナーがEPC契約締結後にコントラクターに対して具体的な要求をしてきた場合(例えば、機器のスイッチはどの位置になければならない、機器のある部分の色は何色でなければならない等)には、コントラクターはいかなる対応をとるべきでしょうか。

 

このよう場合には、コントラクターは仕様書に具体的に記載されていなかった事項については、「その業界のスタンダードから外れていないもの」を備えた機器を供給すれば足ります。

 

仕様書に書いていないということは、オーナーは何等の要求もその点についてしていない、という意味です。

 

よって、オーナーには、それらがその業界のスタンダードから外れていない旨を伝えるべきです。

 

コントラクターがそのような主張をしたときに、もしもオーナーが「仕様書に書いていない事項はオーナーの指示に従うという意味だ」というようなことを言ってきた場合には、そのオーナーは何らかの悪意を持っている可能性があると考えた方がよいと思います。

 

というのも、もしも本当にオーナーがこだわりを持っているのであれば、オーナーは見積もり依頼時の仕様書にその点を盛り込むか、または契約締結前に実施される担当者レベルでの協議の際に、具体的にコントラクターに確認してくるはずです。

 

それをせずに、契約金額が合意された後になって、そのような事項について具体的な要求をしてくるということは、①コントラクターに対する何かの嫌がらせか、②そのオーナーの担当者がオーナー社内で何かをアピールしようとしている(自分はこんな点にも気を配っているのだぞ、といった感じ)か、または、③本当は仕様書に盛り込むべきだった事項をそのオーナーの担当者のミスで入れ忘れており、そのミスをなかったことにしようとしているか、のどれかであると考えた方がよいと思います。

 

そこで、上記のような主張をオーナーがしてきた場合には、「法務部門を交えた協議を実施したい」と申し出るべきです。

 

決して「確かに仕様書には書いていないが、そういう場合にはオーナーの要求を弊社が事前に確認するべきだった。それを怠った弊社に非がある。」などとは考えずに、自社の法務部門に相談するべきです。

 

 

 

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