EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策① はじめに

      2017/06/03

 

このブログの目的

 

このブログを読まれた方々が、特に海外向けのEPC契約のような大規模工事・建設案件において、コストオーバーランに陥る原因と対策を知ることで、今後特に海外のEPC案件を受注する際に、その案件がコストオーバーランに陥る可能性があることを見抜き、いかにしてそのリスクを回避するべきか、さらにはそのようなリスクを抱える案件をそもそも受注するべきなのかについて検討できるようになっていただくことです。

 

 

めったに生じないコストオーバーラン

通常、コストオーバーランは滅多に生じません。

 

ほとんどの案件は、受注すればほぼ予算通りのコストで仕事を完成させることができ、予算通りの利益を上げることができていると思います。

 

そのため、普段はコストオーバーランに陥る案件の傾向・原因・対策を考える場面はほとんどないでしょう。

 

そしてEPC契約の請負人であるコントラクター企業に所属する多くの方々は、コストオーバーランに一度も関わることなく、会社人生を終えることができると思われます。

 

これが通常の場合だと思います。

 

コストオーバランのリスク

しかし、コストオーバーランは、ひとたび生じると、それによって生じる損失額が莫大な金額になる危険を孕んでおります。

 

数十億、時には数百億円にも上り得ます。

 

海外案件では数千億円を超える規模に上っているものもあります(フランスのアレバ社によるフィンランドでの原子力発電所建設案件等)。

 

その場合、経営を大きく圧迫しかねない状況にもなり得ます。

 

そして、残念なことに、コストオーバーランに陥った場合、契約上の義務の履行が開始してから途中で何か対策を施そうとしても、時すでに遅きに逸する、という場合が多々あります。

 

つまり、事後的な応急処置ではカバーしきれない状況になってしまう場合が多いのが、コストオーバーランの特徴でもあります。

 

よって、ある案件を受注する前に、その案件にはコストオーバーランに陥る潜在的なリスクが潜んでいることを認識した上で、事前に対策を施すこと、または、コストオーバーランに陥るリスクが大きいと考えて、その案件をあえて受注しないという判断をすることが、コストオーバーランへの対策の第一であるといえると思います。

 

そのためには、コストオーバーランになる案件の傾向・原因・対策を知っておく必要があると思います。

 

私の経験

ここで、多くの方々がコストオーバーラン案件に関わらないと述べさせて頂きましたが、幸か不幸か、私は入社以来法務担当として複数のコストオーバーラン案件に関わる経験をしました。

 

その中には、実際にコストオーバーラン案件に陥った後の費用を客先であるオーナーや下請けに対して求償するタイプのものもあれば、事前に法務に相談していただければなんとかなったかもしれないが、既に何ら手の施しようがない状態に至っていたもの、他には、受注していたらコストオーバーランに陥っていたのではないかと思われるような案件、といったように、幅広く経験する機会を得ました。

 

そのような案件を受注するべきかどうかを決定する社内の会議に出席したこともあります。

 

初めてコストオーバー案件を担当したのは、会社に入社して2年目の春でした。

 

その時には、「こんな案件もあるんだな。でもこれは、相当レアなケースなのだろうな。」といった程度の認識でした。

 

しかし、その後、私は複数のコストオーバーラン案件に関わりました。

 

そのうちに、コストオーバーランの恐ろしさを知ると同時に、コストオーバーランに陥る案件の傾向・原因・対策について解説された書籍は無いものか?と書店で探すようになりました。

 

しかし、なぜかそのような書籍は一冊も見つけることはできませんでした(もしかすると、海外にはあるのかもしれません)。

 

この理由は今でもよくわかりませんが、そのような書籍がないことが、国内外の超有名企業ですら、時々コストオーバーランに陥り多額の損失を生じさせ、時には経営難まで招いてしまっている理由の一つなのではないかと思いました。

 

今後の日本のインフラ輸出ビジネス

また、日本はこれから、途上国にますますインフラ整備のためにそれらの国の政府や企業との間でプラント等のインフラ施設の建設のためにEPC契約を締結する機会が増えることでしょう。

 

海外に日本の素晴らしいインフラ技術が輸出されることは、日本の国益に大きく資することだと思います。

 

しかし、そんなときに、海外でせっかく受注した案件で、頻繁にコストオーバーランを引き起こしていたら、この日本の強みを十分に発揮できなくなってしまうのではないでしょうか。

 

その結果、途上国でのインフラ整備が鈍化してしまうのではないでしょうか。

 

その意味で、コストオーバーラン対策は、ただ一社の利益に関わることではなく、日本と途上国双方にとって、とても重要なものであると思います。

 

 

自分の経験が、コストオーバーランの全てを網羅するものでないことはもちろん承知しております。

 

しかし、今回、上記の背景から、コストオーバーランについての原因・対策についてまとめたものを、このブログで解説したいと思うに至りました。

 

EPC契約やプロジェクトの遂行について多少の知見を有している方であれば、ここに記載されている事項はごく基本的なことであると感じると思います。

 

そう感じるのは正しく、実際に生じたコストオーバーラン案件の原因を探っていくと、「そんな基本的なこともできていなかったのか」と思わず驚いてしまうようなことが原因になっていることが多いです。

 

このことから、基本の重要性を再度認識していただくことにも役立つのではないかと思います。

 

このブログが、海外のEPC契約案件を含むインフラ輸出ビジネスに関わる方にとって、コストオーバーランの発生の防止に少しでも役立てていただければ、これ以上の喜びはありません。

 

 

EPC契約におけるコストオーバランの原因と対策② コストオーバランとは何か?損害賠償とは違うのか?

EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策③ 初めて受注する案件での経験不足からくる見積もり落ち

EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策④ 仕様書記載の解釈の食い違いと仕様書に記載がない事項

EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策⑤ 手続きをし損ねた場合

EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策⑥ 設計前に工事完成までの費用を見積もらなければならないこと

 

 

 - EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策について