Delay analysisの手法⑤ Windows method~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑲~

   

前回は、Time Impact methodについて解説しました。

 

Time Impact methodを実施すれば、遅れを生じさせる事象が生じるごとにそこまでの実際の工事の進捗を反映した工程表に基づいてDelay Analysisがなされるので、正確な結果が出やすいことも理解して頂けたと思います。

 

しかし、遅れを生じさせる事象が発生する度に都度工程表を更新していくこの手法は、多くの遅れを生じさせる事象が次々と発生していくと、非常に手間がかかるという問題がありました。

 

この問題点にある程度対処していると思われるのが、Windows methodと呼ばれるものです。

 

この手法は、まず、as planned programをいくつかの期間に分けます。例えば、1ヶ月単位とか、2週間単位など。または、一定の期間毎に分けるのではなく、主要なマイルストーン毎に期間を区切ることもあります。

 

こうして、いくつかの期間に分けたそれぞれの部分をWindowと呼びます。

 

このWindow毎にDelay Analysisを実施します。

 

例えば、全工程が1年の工事を想定します。これを1ヶ月毎に区切ると、12個のWindowができます(※下の表では、マイルストーン毎に4つに区切った例を用いています)。

 

最初のDelay Analysisは、工事開始後1カ月後に行います。1ヶ月経過したら、as planned programにそこまでの工事の実際の進捗状況を反映させます。

 

すると、最初の1カ月間は実績に基づいたものその1カ月後以降はas planned program中そのままのものという大きく2つの部分からなる工程表が出来上がります。これをupdated program1とします。このとき、最初のWindow(以下、「Window1」と呼びます)中で工事に何か遅れが出ていれば、その分、updated program1中の完了予定日は、as planned programよりも後ろにズレているでしょう。これが納期の遅れです。(※下の例では、1カ月後ではなく、1つ目のマイルストーン経過までをWindow1としています)。

そして、Window1内を詳しく検討することで、この遅れがいつ、なぜ起こったのかを特定します。その結果、コントラクターのせいではなく、納期延長を与えられるべき事象によって遅れが生じていたということがわかった分だけ、コントラクターに納期延長が与えられることになります。

 

その後、また1ヶ月が経過したら、今度は工事開始から2ケ月後、つまり、Window2までの工事の進捗状況を、updated program1に入れ込み、それを超える部分は、updated program1の残りの部分をそのままとする新しい工程表を作成します。これをupdated program2とします。このupdated program2とupdated program1の完了予定日を比較すれば、Window2中で生じた遅れがわかります。

 

そして、この遅れがいつ、なぜ起こったのかを検討し、コントラクターのせいではなく、納期延長が認められる事象によって生じた日数を特定します。これがまた、コントラクターに与えられるべき納期延長分となります(※下の例では、Window2中で生じた遅れは、critical path上の仕事ではなかったため、水色バーの仕事に影響を及ぼしたものの、納期の遅れは生じさせなかったことになります。そのため、納期延長はありません)。

以後、これを完了日まで繰り返します

 

つまり、Window毎に、そのWindowが終了後に納期の遅れを特定し、その遅れがそのWindow中のどこで、なぜ起こったのかを検討して、納期延長日数を決めていく、ということです。

 

この手法であれば、工程表が更新される回数は、Windowの数と同じになります。

 

Time Impact methodは、遅れを生じさせる事象が生じるたびに工程表を更新させるものでしたが、それに比べて、Windows methodは、Windowの数だけの更新となりますので、更新回数は減る可能性があります。その分、Window methodの方が、手間がかからない、ともいえるかもしれません。

 

もっとも、これもas planed impact methodに比べれば、大分時間と労力を必要とします。

 

何より、Window毎に、実際の進捗状況に基づいて工程表を更新しなければならないので、その実際の進捗状況のデータが保存されていなければ、実施できません

 

その意味では、遅れを生じさせる事象が発生する毎に工程表を更新するTime Impactと同様に、進捗状況のデータの保管が不可欠となります。

 

また、このWindows methodは、Windowとして区切る期間が短ければ短いほど、実体に近いものとなり、逆にWindowを長くすればするほど、実体から乖離していきます。つまり、不正確な検討結果しかでないことになります。

 

そのため、Windowをどの程度に区切るか?が重要となります。

 

Delay Analysisの専門書では、冒頭で示したように、毎月程度とするのが望ましいといわれています。

 

 

これまで、Delay Analysisの手法として、①as planned impact method、②Time Impact method、そして③Windows methodを見てきました。

 

それぞれに特徴があり、長所・短所がありました。

 

次回は、この3つを比較してみたいと思います。これにより、Delay Analysisの手法とそれぞれの特徴をより理解できるようになるはずです。

 

【Delay Analysisの解説の目次】

DelayとDisruptionの違い 納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その③ 本社経費と逸失利益における因果関係と金額の立証方法
クリティカル・パス その① 納期延長クレームと追加費用クレームの関係
クリティカル・パス その② mitigationとacceleration
フロートとは何か? Delay(遅れ)の種類(様々なDelay)
フロートは誰のものか? Delay Analysisの手法①~はじめに+Delay Analysisを行う時期~
フロートは誰のものか?契約書に記載がない場合 Delay Analysisの手法②~As planned impact method~
同時遅延の扱い その① 納期延長について Delay Analysisの手法③~Time Impact method~
同時遅延の扱い その② 追加費用について Delay Analysisの手法④~補足 工程表(プログラム)は契約書の一部なのか?~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その① Delay Analysisの手法⑤~Windows method~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その② 本社経費と逸失利益

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