Delay Analysisの手法②As planned impact method~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑯~

      2020/01/21

今回は、Delay Analysisの手法の1つであるAs planned impact methodについて解説します。

 

この手法は、いくつものDelay Analysisの手法の基本となるもので、この手法とその問題点をしっかりと理解すれば、これ以外の様々なDelay Analysisの手法も理解しやすくなります。

 

この手法を行うために必要となるのは、as planned program(as planned scheduel)です。

 

As planned programとは、プラントを完成させるために必要な作業工程を盛り込んだオリジナルの工程表です。

 

これは、通常、契約締結時に契約書に添付される、または、契約締結後できるだけ速やかにコントラクターからオーナーに提出されます。

 

そして、このas planned programを目安に、コントラクターは工事を進めて行きます。

 

このas planned programには、契約当事者間で合意した納期も記載されています。

 

この納期に間に合うように、様々な作業をいつ、どのくらいの期間をかけて行わなければならないのかについて、スケジュールが組まれているのです。

 

そしてここには、critical path(クリティカル・パス)も記載されています(クリティカルパスはこちら!)。

 

つまり、どの工事に遅れが生じたら、納期に影響がでるのかを見てわかるようになっているのです。

 

このas planned programを目安にコントラクターが仕事を開始し、全てが順調にいけば、おそらく、ここに記載されているスケジュール通りに仕事が遂行され、そしてas planned programに記載されている納期に工事が完了するのでしょう。

 

しかし、実際には、途中で工事に遅れが生じることは多々あります。

 

例えば、仕事開始後1ヶ月を経過した時点で、Force Majeureが発生し、critical path上の工程の仕事2が5日間延びることになったとします。

 

このとき、コントラクターがしなければならないのが、オーナーへの納期延長のクレームです。

 

コントラクターは、as planned programに、仕事2が5日間遅れることを入れ込むのです。

 

As planned programには、様々な仕事のスケジュールが記載されていると述べましたが、その中の仕事2について、予定よりも5日間延びるというように変更を加えます。(以下の図の水色がcritical path、赤色がnon-critical pathです)

 

すると、その影響は、仕事Aの次に行う仕事にも生じます。つまり、仕事2が終わらなければできない仕事3、仕事4、・・・というように、それぞれの仕事の始期と終期に影響が出るでしょう。

 

このように、仕事2に生じた影響をas planned programに入れ込むと、どうなるでしょうか?

仕事2以降に予定されている仕事が次々と後ろにズレていき、最後は納期を後ろにずらす結果となるでしょう。なぜなら、仕事2はcritical path上にあるからです。

 

そうして、できた新しい工程表を、as planned impacted programと呼びます。つまり、遅れ分を入れた新しいプログラムです。

 

そこで、このas planned impacted programとas planned programを比較します。

 

具体的には、それぞれの工事完了時期(表中のAとB)を比べます

 

すると、as planned impacted programに記載されている工事完了時期Bの方が、後ろになっているはずです。

 

このas planned impacted programとas planned programの工事完了時期の差分が、コントラクターに与えられる納延長日数(EOT日数)となります。

 

これが、as planned impact methodと呼ばれるDelay Analysisの手法です。

 

以上をまとめると以下の図のようになります。

簡単にいえば、「オリジナルの工程表に、遅れた仕事の分を入れ込み、新しい工程表をつくって、完成予定日の差を見る」ということになります。

 

いかがでしょう?

 

「理にかなっている」と感じられましたでしょうか?

 

私も最初にこの手法をしったときは、「おお!いいじゃないか。」と思いました。

 

しかし、この手法は、実務ではわりと用いられているようですが、少なくとも、クレームの参考書や専門書では、「簡単だが、合理的とはいえない」とか、「コントラクターは、この手法で算定した納期延長日数では、その証明責任をはたしたことにはならない」といわれているのです。

 

なぜでしょうか?どこに問題があるのでしょうか?

 

それは、使うプログラムが、as planned programである、という点です。

 

どういうことか?

 

上記に示した、「仕事を開始して1カ月後にForce Majeureが生じる」という場合でもう一度考えてみましょう。

 

仕事2に生じる5日間の遅れを、契約締結時に契約書に添付されたas planned programに入れ込んだのです。

 

ここで、果たして、本当に、仕事開始後1ヶ月を経過したときの仕事の進捗は、as planned programのようになっているのでしょうか?

 

例えば、コントラクターはそれまでの仕事を予定よりも早く進めることができているかもしれません。

 

オーナーから、「この仕事をもっとはやくして」といわれて、それに応じていたかもしれません。

 

それにより、仕事2は、仕事開始後1ヶ月経過時点では、critical path上には存在しないようになっているかもしれません。

 

すると、仕事2に5日間の遅れが生じたとしても、納期にはなんら影響がでないようになっているかもしれません。

 

つまり、as planned programは、契約締結時から数日以内はまさにそこにある工程通りに進んでいたものの、Force Majeure発生時には、既に「現実を反映したスケジュール」ではなくなっている可能性があるのです。それにも関わらず、仕事2の遅れを、そのような現実を反映していない工程表に入れ込んだところで、出てくるもの、つまりas planned impacted programも、やはり、現実を反映したものとは呼べないでしょう。以下に示すように、正しくないものにいくら正しいものを加えても、出てくる結果は正しくないものとなります。

さらに、仕事2の遅れのあとに、次々と様々な事象が生じることも稀ではありません。オーナーの契約違反、仕様変更、そして法令変更など・・・。これらを次々と仕事2の遅れを入れ込んだas planned impacted programに加えていくことになります。

 

すると、どんどん現実を反映していない工程表が塗り替えられていくのです。

 

そうして出てきた工事完了予定日とは、果たして一体何なのか?それを基準にして納期延長日数を決めてよいのか?それで正しいのか?

 

このような問題点がas planned impact methodにはあるのです。

 

簡単いえば、「現実の工事の進捗状況を無視している」ということになります。

 

そして、その影響を受けるのは、主にオーナーのほうです。

 

As planned impactを用いると、本来与えられるべき納期延長日数よりも、多めの日数をコントラクターに与える結果になる可能性が出てくるのです。つまり、不利益を被るのはオーナーの方といえます。

 

この点、納期延長日数が多少多めになることは、さほど大きな問題ではないかもしれません。たしかに、本来オーナーが得られる納期遅延LDが少なくなる、という結果に繋がりますが、それでも、オーナーから資金が出ていく、という話ではないからです。

 

しかし、多めに算定された納期延長日数に基づいて、コントラクターは追加費用を請求します。この追加費用は、納期延長日数は多ければ多いほど、金額も多くなります。これは、オーナーがコントラクターに支払うべき金額となります。

 

これはオーナーにとっては大きな不利益と感じられるでしょう。

 

さらにオーナーに不満をいだかせるの理由があります。それは、このas planned impact methodでは、コントラクターの原因で生じた遅れが、as planned impact programには挿入されない可能性もあるということです。

 

クレームをしてくるのは、コントラクターです。そのコントラクターが最初に作成したオリジナルの工程表に、オーナーが責任を負うべき遅れ(Force Majeureや仕様変更など)だけを入れ込み、あとは全て「オリジナルの工程通りに進んでいる」としてクレームをしてくることも許してしまうのがこの手法なのです。これでは、正しく分析したとはいえないでしょう。

 

上記の理由から、オーナーは、コントラクターに対して、as planned impact methodでは正しく納期延長日数を算出したことにはならない、と主張するのです。

 

では、どうすればよいのか?

 

問題点は、何か工程に遅れを生じさせる事象が生じた場合に、それまでの仕事の進捗を正しく反映した工程表が用意されていないことにあります。

 

As planned programが適切にupdateされ、コントラクターによる遅れも、いくつかの仕事が予定よりも早く終わったことも含めて、常に現実の進捗状況を反映したものになっているならば、そこにある特定の仕事の遅れ分を入れ込んで出てきた新たな工程表は、「相当確からしいもの」といえることになります。

 

これを満たすために考え出された手法があります。

 

それは、Time Impact Methodと呼ばれる手法です。

 

次回は、この手法について解説します。

【Delay Analysisの解説の目次】

DelayとDisruptionの違い 納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その③ 本社経費と逸失利益における因果関係と金額の立証方法
クリティカル・パス その① 納期延長クレームと追加費用クレームの関係
クリティカル・パス その② mitigationとacceleration

補足~constructive acceleration

フロートとは何か? Delay(遅れ)の種類(様々なDelay)
フロートは誰のものか? Delay Analysisの手法①~はじめに+Delay Analysisを行う時期~
フロートは誰のものか?契約書に記載がない場合 Delay Analysisの手法②~As planned impact method~
同時遅延の扱い その① 納期延長について Delay Analysisの手法③~Time Impact method~
同時遅延の扱い その② 追加費用について Delay Analysisの手法④~補足 工程表(プログラム)は契約書の一部なのか?~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その① Delay Analysisの手法⑤~Windows method~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その② 本社経費と逸失利益 Delay Analysisの手法⑥~as planned impact/Time Impact/Windowsの比較
21 Delay Analysisの手法⑦~EPC契約における工事の進捗状況のデータの取得・保管義務の定め~
22

必要な立証の程度~balance of probabilities~

 - Delay Analysisの基礎知識